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#6 ゴミ屋敷の住人②
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「まあ、色々あってね」
邦彦が少し悲しげに微笑んだ。
「どうせ、聞いたんだろ。うちの親父に」
「まあね」
私は否定しなかった。
そもそも私は演技が下手である。嘘をつくのも苦手なのだ。
「もとはと言えば、僕が悪いんだけどね。杏里ちゃんの画像なんか、スマホの壁紙にしておいたから」
「杏里ちゃんって?」
「知らないの? 今売り出し中の新人グラドル。ほら、そこにも貼ってあるでしょ」
邦彦が指し示したのは、ドアの横に貼られたビッグサイズの水着ポスターである。
これが私に似てるってアイドル?
こちらに身を乗り出し、ビキニからこぼれそうな豊満な胸を強調している少女は、なるほど、顔の輪郭とか鼻と唇の形とか髪型とか、どことなく私に似ていなくもない。
一番大きな違いは、育ちのせいで私のほうが目つきが悪いことぐらいだろう。
「ふうん、邦彦って、こういう娘が趣味なんだ。いわゆる巨乳派ってやつ?」
「おっぱいの大きさは関係ないよ。それより、この子、なんとなく美咲ちゃんに似てると思わない?」
はにかんだように、邦彦が言う。
邦彦は、私の記憶にある彼の数倍太っている。
顔も身体もぶくぶくと意味もなく巨大化した感じ、とでもいえばいいだろうか。
髪の毛も伸び放題でフケだらけ。
そんなやつに秋波を送られても、うれしくもなんともない。
「まあ、それはそれとして」
面倒くさくなって、私は強引に話題を変えた。
「もう学校もやめちゃったんだし、このへんでそろそろ部屋から出て来なよ。おじさんたち、ガチで心配してるみたいだよ」
「そうはいかない」
邦彦が私に丸い背を向けた。
まるで意固地なアルマジロにでもなったような感じだった。
「外の世界は、僕にとって全部敵なんだ。あの人たちは、社会という敵地のまっただなかに僕を放り出そうと、手ぐすね引いて待ちかまえてる。そんな罠には引っかからないよ」
「あのさ、一応あたしも外部の人なんだけど」
呆れて私は言い返した。
「もしかしたら敵かも知れないのに、なのになんであたしだけ、すんなり中に入れちゃうわけ?」
「だってそれは」
邦彦が勢い込んで何か言おうとした。
が、すぐにまた元のように丸く防御の姿勢に戻ってしまう。
「ううん、なんでもない。まあ、君がどうしてここへ来たか、だいたい想像はつくんだけどね」
邦彦が少し悲しげに微笑んだ。
「どうせ、聞いたんだろ。うちの親父に」
「まあね」
私は否定しなかった。
そもそも私は演技が下手である。嘘をつくのも苦手なのだ。
「もとはと言えば、僕が悪いんだけどね。杏里ちゃんの画像なんか、スマホの壁紙にしておいたから」
「杏里ちゃんって?」
「知らないの? 今売り出し中の新人グラドル。ほら、そこにも貼ってあるでしょ」
邦彦が指し示したのは、ドアの横に貼られたビッグサイズの水着ポスターである。
これが私に似てるってアイドル?
こちらに身を乗り出し、ビキニからこぼれそうな豊満な胸を強調している少女は、なるほど、顔の輪郭とか鼻と唇の形とか髪型とか、どことなく私に似ていなくもない。
一番大きな違いは、育ちのせいで私のほうが目つきが悪いことぐらいだろう。
「ふうん、邦彦って、こういう娘が趣味なんだ。いわゆる巨乳派ってやつ?」
「おっぱいの大きさは関係ないよ。それより、この子、なんとなく美咲ちゃんに似てると思わない?」
はにかんだように、邦彦が言う。
邦彦は、私の記憶にある彼の数倍太っている。
顔も身体もぶくぶくと意味もなく巨大化した感じ、とでもいえばいいだろうか。
髪の毛も伸び放題でフケだらけ。
そんなやつに秋波を送られても、うれしくもなんともない。
「まあ、それはそれとして」
面倒くさくなって、私は強引に話題を変えた。
「もう学校もやめちゃったんだし、このへんでそろそろ部屋から出て来なよ。おじさんたち、ガチで心配してるみたいだよ」
「そうはいかない」
邦彦が私に丸い背を向けた。
まるで意固地なアルマジロにでもなったような感じだった。
「外の世界は、僕にとって全部敵なんだ。あの人たちは、社会という敵地のまっただなかに僕を放り出そうと、手ぐすね引いて待ちかまえてる。そんな罠には引っかからないよ」
「あのさ、一応あたしも外部の人なんだけど」
呆れて私は言い返した。
「もしかしたら敵かも知れないのに、なのになんであたしだけ、すんなり中に入れちゃうわけ?」
「だってそれは」
邦彦が勢い込んで何か言おうとした。
が、すぐにまた元のように丸く防御の姿勢に戻ってしまう。
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