サイコパスハンター零

戸影絵麻

文字の大きさ
136 / 157
第6章 となりはだあれ?

#6 都市伝説⑤

しおりを挟む
「世の中には、いろんなパンツがあるもんだね」
 それが、七尾ヤチカの放った第一声だった。
 ここは科捜研の1階。
 休憩所を兼ねたラウンジである。
 千種署から尾上悠馬のスマホを借り出すと、杏里は地下鉄で県警本部に隣接する科捜研に直行した。
 スマホをいじってみてわかったのだが、ロックがかかっていて、中を見ることができなかったからである。
 科捜研になら、ITに強い部門もあるだろうと思い、ちょうど居合わせたヤチカに頼んでみたのだ。
「パンツ、ですか?」
「そう、パンツ。しかしねえ、こんな超ミニ穿いてるのにさ、みんなけっこう生パンで勝負してるんだねえ。これじゃ、盗撮魔が減らないはずだって、係のおっちゃんも驚いてたよ」
 ヤチカに手渡されたスマホの画面には、階段を上る女性のスカートの中が映っている。
 スクロールしていくと、同じような画像が何十枚と出てきた。
 なるほど、ほとんどのものが、生下着を接写されている。
 スカートの下にアンダースコートを穿いている者もいるが、それはごく少数だ。
「こんなにたくさん…趣味悪いなあ」
 ため息をつきながら、杏里は画像に目を落とした。
 盗撮は、れっきとした犯罪だ。
 高校生だからといって、これは許せない。
「ったくねえ、女のパンツなんか見て、何が面白いんだろうねえ。そんなに欲しけりゃ、自分で買って穿けばいいんだよ」
 美人だが、いつも白衣で化粧っ気のないヤチカは、この手の下着には縁がないようだ。
 それは杏里も似たようなもので、囮捜査でセクシー衣装を身に着ける時以外は、たいてい、おへそまで隠れる木綿のデカパンを愛用している。
 そのほうが、聞き込みや張り込みで長時間外にいる時、腹が冷えなくても済むからだ。
「でも、その盗撮魔のスマホと今朝の惨殺事件と、どういう関係があるっての? まあ、場所は確かに近いけど」
「わかりません。ただ、ちょっと気になって…。だって、なんとなく似てやしませんか? 満員電車の中で突然下半身を食いちぎられたサラリーマン…。エスカレーターを上る途中で、スマホと血痕だけ残して消えてしまった男子高校生…」
「確かに、今朝発見されたガイシャの傷口は、刃物によるものではなく、何かワニみたいな肉食獣に噛みちぎられたみたいな、そんな感じだった。まさか、その男子高校生も、同じ何かに食べられたっていいたいわけ?」
「可能性は、あるかな、と」
 ヤチカも杏里同様、ここ1年でさまざまな怪異に遭遇している。
 だから、人間を喰らう”何か”の存在を、頭から否定する気はないようだ。
「まあねえ、世の中、見た目通りじゃないからねえ」
 杏里同様、ため息をつくと、細身のメンソールを口にくわえ、火をつけた。
 何度も画像を行ったり来たりさせ、あることに気づいて、杏里はヤチカのほうにスマホを差し出した。
「あの、これ、同じ女の子じゃありませんか? 最後の3枚、同じ日付で、同じ足が映ってます」
「同じ足? どうしてわかるの?」
 灰皿で煙草をもみ消して、身を乗り出してくるヤチカ。
「膝の裏側に、ほら、痣が。同じ位置で、同じ三日月形、してますよね?」
 映っているのは、制服のスカートを穿いた少女の下半身である。
 スカートはかなり短く、今にも下着が見えそうだ。
 だが、決定的瞬間を写す前に、少年の身に何かが起こったのだろう。
 その先が映っていなかった。
 画像からわかるのは、被写体の少女が、太くもなく細くもない綺麗な脚の持ち主で、高校生にしては少し背が高めだということ。
 この重心の高さは、ある意味、日本人離れしたモデル体型といっていい。
「この制服は、どこの高校かな。地下鉄を使うからには、中学生じゃなくて、高校生だよね。後は紺のハイソックスと、どこにでもあるような白のスニーカーか。顔が映ってないから、被写体の特定は難しそうだね」
「野崎君に訊けば、高校名はすぐわかると思います」
「野崎って、あんたんとこの、あの研修生?」
「ええ。彼、こういうの、詳しいので」
「危ないやつだね。刑事の癖に」
 ヤチカが不快そうに顔をしかめた。
 杏里としては、あはははと、あいまいに笑ってみせるしかない。
「ええ、まあ…。とにかく、この女の子が、盗撮の最後の被害者だってことは、間違いありません。ひょっとしたら、何か見てるかもしれないですよね。それに、私、気になるんです。こんなにつきまとわれてるのに、どうしてこの子だけ、肝心の下着が映っていないのか…」
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

処理中です...