サイコパスハンター零

戸影絵麻

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第6章 となりはだあれ?

#20 魔獣狩り⑧

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 突然の零の発言に、4人の機捜隊員たちがぎくりとしたように声のほうを見た。

 全員、驚愕に目を見開き、今初めて零がそこにいることに気づいたような顔つきをしている。

 零が気配を消していたせいだろう、と杏里は思う。

 彼女はその気になれば、空気みたいになれるのだ。

「面白いこというわね」

 少女がゆっくり目を上げた。

「あなたは誰? 民間人が、どうしてここに?」

「アドバイザーみたいなものさ。おまえみたいな化け物が事件に絡んでる時、専用のね」

 零は視線を少女からはずそうとしない。

 部屋の照明のせいで丸くなった瞳孔の中心に、赤いルビーのような点が燃えている。

「失礼な人。まるで私が犯人だとでも言いたそう」

 ぴんと張った糸のような緊張感。

 それを破って、少女が言い返す。

「他に誰がいる?」

 零の声に恫喝の響きがこもった。

「あの状況で、被害者に手を下せるのは、隣に座っていたおまえだけだろう?」

「もし仮にそうだとしても、どうやって?」

 面白そうに、少女が微笑んだ。

「なんならここで裸になってみる? 私は何の凶器も持っていない」

「笹原、頼む」

 零の言葉を受けて、韮崎が耳打ちしてきた。

「ざっとでいい。この娘の身体検査をしてくれないか」

「え? 私がですか? それも今ここで?」

「女はおまえだけだ。それに、証拠隠滅のおそれがある。今ここでするしかないだろう」

「わかりました」

 杏里はため息をついた。

 そして、周囲を見回すと、疲れた声で言った。

「男性の方は、外に出てください。今から彼女の持ち物検査をしようと思います」





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