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第3章 百合たちの戦いは終わらない
#6 杏里、覗き魔になる
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すさまじい脱力感だった。
はだけた服を元に戻す気にもなれず、ただ杏里は足を投げ出して柱にもたれていた。
どこからか、子猫の鳴くような声が聞こえてきていた。
ベッドの向こう、702号室との境の壁からだ。
が、杏里の思考はすでに停止してしまっていた。
目の前に横たわる、粘液まみれの怪物の死骸。
そして無残にも放り出された、ふたりの女性の骨格の一部。
どうして消えないんだろう?
空っぽになった心で思う。
アニメやゲームなら、勇者に倒されたモンスターはみんな、死骸を残さず消えちゃうのに。
こんなのが残ってたら、またみんなびっくりしちゃうのに…。
「たぶん犯人は、1ヶ月前、佐藤亜由美が隣に越してきた時に、引越し祝いにかこつけてあの炬燵を亜由美に献上したんじゃないかと思う。そして炬燵が亜由美を食べ終わると、いったん自分の部屋に回収し、次の犠牲者がくるのを待った。そこにやってきたのが、足立仁美だった。同じ手順で仁美の部屋に炬燵を置かせた犯人は、仁美が食べられた後、できれば前回同様すぐに炬燵を回収したかった。ところがその前に、妹の唯が杏里を連れて乗り込んできてしまったんだ。ここで炬燵がなくなれば、当然怪しまれてしまうことだろう。そう考えた犯人は、ほとぼりが冷めるまで、しばらくこいつを放置しておくことにした。そこにのこのこ杏里がやってきたというわけさ」
隣に座って杏里の肩を抱いたまま、零が言った。
よくまあ、たった2枚の写真から、そんなことを考えつくものだ。
ひょっとして私より、零のほうが刑事に向いてるのかも…。
「さあ、事件のあらましがわかったところで、いよいよ真犯人の顔でも拝むとするか」
立ち上がりながら、零が言った。
「真犯人? 犯人って、このコタツ生物じゃないの?」
きょとんと零を見返す杏里。
「今話しただろう。当然、炬燵をここに置かせたやつが、真犯人さ」
杏里を立ち上がらせると、窓に歩みより、零がサッシ戸を開けた。
冷たい空気が流れ込み、杏里の頭から霧を吹き払った。
来い、という具合に手招きされ、零の立つベランダに出る。
甘えた子猫の鳴き声が大きくなった。
聴こえてくるのはやはり702号室のほうだ。
ベランダとベランダの間には、仕切りがある。
だが、仕切りの上部と天井との間には、50センチほど隙間があった。
「覗いてみるがいい」
零が背後から杏里の胸の下に両腕を入れ、ぐいと上に持ち上げた。
ちょ、ちょっと!
一瞬抵抗しかけた杏里だったが、好奇心には勝てなかった。
隙間からおそるおそる目を出してみる。
え?
これ、何?
見えたのは、異様な光景だった。
杏里の腋の下を、冷たい汗が伝った。
間違ってる…。
心の中で、そうつぶやいた。
間違ってるよ…。こんなの。
はだけた服を元に戻す気にもなれず、ただ杏里は足を投げ出して柱にもたれていた。
どこからか、子猫の鳴くような声が聞こえてきていた。
ベッドの向こう、702号室との境の壁からだ。
が、杏里の思考はすでに停止してしまっていた。
目の前に横たわる、粘液まみれの怪物の死骸。
そして無残にも放り出された、ふたりの女性の骨格の一部。
どうして消えないんだろう?
空っぽになった心で思う。
アニメやゲームなら、勇者に倒されたモンスターはみんな、死骸を残さず消えちゃうのに。
こんなのが残ってたら、またみんなびっくりしちゃうのに…。
「たぶん犯人は、1ヶ月前、佐藤亜由美が隣に越してきた時に、引越し祝いにかこつけてあの炬燵を亜由美に献上したんじゃないかと思う。そして炬燵が亜由美を食べ終わると、いったん自分の部屋に回収し、次の犠牲者がくるのを待った。そこにやってきたのが、足立仁美だった。同じ手順で仁美の部屋に炬燵を置かせた犯人は、仁美が食べられた後、できれば前回同様すぐに炬燵を回収したかった。ところがその前に、妹の唯が杏里を連れて乗り込んできてしまったんだ。ここで炬燵がなくなれば、当然怪しまれてしまうことだろう。そう考えた犯人は、ほとぼりが冷めるまで、しばらくこいつを放置しておくことにした。そこにのこのこ杏里がやってきたというわけさ」
隣に座って杏里の肩を抱いたまま、零が言った。
よくまあ、たった2枚の写真から、そんなことを考えつくものだ。
ひょっとして私より、零のほうが刑事に向いてるのかも…。
「さあ、事件のあらましがわかったところで、いよいよ真犯人の顔でも拝むとするか」
立ち上がりながら、零が言った。
「真犯人? 犯人って、このコタツ生物じゃないの?」
きょとんと零を見返す杏里。
「今話しただろう。当然、炬燵をここに置かせたやつが、真犯人さ」
杏里を立ち上がらせると、窓に歩みより、零がサッシ戸を開けた。
冷たい空気が流れ込み、杏里の頭から霧を吹き払った。
来い、という具合に手招きされ、零の立つベランダに出る。
甘えた子猫の鳴き声が大きくなった。
聴こえてくるのはやはり702号室のほうだ。
ベランダとベランダの間には、仕切りがある。
だが、仕切りの上部と天井との間には、50センチほど隙間があった。
「覗いてみるがいい」
零が背後から杏里の胸の下に両腕を入れ、ぐいと上に持ち上げた。
ちょ、ちょっと!
一瞬抵抗しかけた杏里だったが、好奇心には勝てなかった。
隙間からおそるおそる目を出してみる。
え?
これ、何?
見えたのは、異様な光景だった。
杏里の腋の下を、冷たい汗が伝った。
間違ってる…。
心の中で、そうつぶやいた。
間違ってるよ…。こんなの。
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