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第4章 百合と外道と疾走するウロボロス
#24 杏里、憤慨する
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12月30日の合同捜査会議は、しょっぱなから難航した。
検視の結果、被害者は3人とも、大型動物に食い殺された可能性が高い、とヤチカが発表したからである。
「歯形が見つかったんです。おそらく、体長7メートルのイリエワニ級の爬虫類。無駄な聞き込みより、動物園やペットショップを洗ったほうがよさそうですね」
そこに杏里が挙手をして、例の提案をぶつけたのだった。
「その生き物は今も地下鉄のトンネル内に潜んでいるに違いありません。ですから、今すぐ地下鉄を全線運休にして、機動隊や自衛隊にトンネルの捜索をしてもらうべきだと思います。そうでもしないことには、いずれ次の被害者が出てしまいます」
「馬鹿な」
一笑に付したのは、警視総監である。
「仮に今から準備したとしても、実行は明日になるだろう。明日が何の日か、君は知ってるのか? 大晦日だぞ。大晦日と言えば、熱田神宮の初詣じゃないか。初網客用に、1年に1度、地下鉄全線が24時間稼働する大切な一日なんだ。運休なんてとんでもない。市民からの苦情で警察と交通局の電話回線がパンクしてしまう」
「まったくです。しかも、この那古野市の地下鉄網は、自慢じゃないが東京に次いで長いのです。たとえ自衛隊を投入したところで、おいそれとその生き物とやらが見つかるとは思えません」
隣の本部長が、いかにも太鼓持ち候といった調子で相槌を打つ。
「人手の多い大晦日だからこそ、危険を避けるべきなんじゃありませんか? たとえすぐに発見できなくとも、地下鉄を使えなくしてしまえば、被害者は出ないはずだと思うんですけど」
「相手が動物とわかっているのなら、すべての駅のホームに武装した警官を配備すればそれで済むんじゃないかね? なにも自衛隊の手など借りなくとも、武装警官がふたりペアでホームを警護すれば十分だと思うんだが」
「さすが警視総監。名案です。ヒグマでも、銃弾を十数発撃ち込めば倒せると新聞で読みました。ワニもおそらくそんなものでしょう」
「だろうな、よし、その手で行くか。じゃ、後の手配は、本部長から各署に指令を頼む。あ、お嬢さん、君はもう下がっていいから」
下がってって言われても…。
百近い刑事の視線の中、杏里は立ち尽くした。
山田巡査長の言う通りになってしまった。
それにしても、なんというご都合主義。
武装警官を、ペアで各駅に配置する?
たったそれだけ?
相手は、ワニなんかじゃないかもしれないのに。
いえ、はっきり、地龍だとわかってるのに!
「よくやった」
席に戻ると、韮崎が小声で言った。
「俺もおまえが正しいと思う。今のやり取り見てて、つくづくそう感じたよ」
「ニラさん」
机の上に視線を落したまま、杏里はつぶやいた。
「私、またひとつ閃いちゃいました」
「ん? 今度は何だ?」
「署に戻ったら、お話しします。それから、ひとつお願いがあります。とっても大事なお願いが」
はらわたが煮えくり返る思いだった。
組織なんて信用できない。
大きくなればなるほど、そうだ。
どうしてこんな結論になるのか。
いったいそれで誰が得をするというのか。
まったくもう。
ほんと、誰得ってやつだよね?
怒りに燃える杏里の視線の先に、笑みを浮かべて談笑する幹部連中の姿があった。
検視の結果、被害者は3人とも、大型動物に食い殺された可能性が高い、とヤチカが発表したからである。
「歯形が見つかったんです。おそらく、体長7メートルのイリエワニ級の爬虫類。無駄な聞き込みより、動物園やペットショップを洗ったほうがよさそうですね」
そこに杏里が挙手をして、例の提案をぶつけたのだった。
「その生き物は今も地下鉄のトンネル内に潜んでいるに違いありません。ですから、今すぐ地下鉄を全線運休にして、機動隊や自衛隊にトンネルの捜索をしてもらうべきだと思います。そうでもしないことには、いずれ次の被害者が出てしまいます」
「馬鹿な」
一笑に付したのは、警視総監である。
「仮に今から準備したとしても、実行は明日になるだろう。明日が何の日か、君は知ってるのか? 大晦日だぞ。大晦日と言えば、熱田神宮の初詣じゃないか。初網客用に、1年に1度、地下鉄全線が24時間稼働する大切な一日なんだ。運休なんてとんでもない。市民からの苦情で警察と交通局の電話回線がパンクしてしまう」
「まったくです。しかも、この那古野市の地下鉄網は、自慢じゃないが東京に次いで長いのです。たとえ自衛隊を投入したところで、おいそれとその生き物とやらが見つかるとは思えません」
隣の本部長が、いかにも太鼓持ち候といった調子で相槌を打つ。
「人手の多い大晦日だからこそ、危険を避けるべきなんじゃありませんか? たとえすぐに発見できなくとも、地下鉄を使えなくしてしまえば、被害者は出ないはずだと思うんですけど」
「相手が動物とわかっているのなら、すべての駅のホームに武装した警官を配備すればそれで済むんじゃないかね? なにも自衛隊の手など借りなくとも、武装警官がふたりペアでホームを警護すれば十分だと思うんだが」
「さすが警視総監。名案です。ヒグマでも、銃弾を十数発撃ち込めば倒せると新聞で読みました。ワニもおそらくそんなものでしょう」
「だろうな、よし、その手で行くか。じゃ、後の手配は、本部長から各署に指令を頼む。あ、お嬢さん、君はもう下がっていいから」
下がってって言われても…。
百近い刑事の視線の中、杏里は立ち尽くした。
山田巡査長の言う通りになってしまった。
それにしても、なんというご都合主義。
武装警官を、ペアで各駅に配置する?
たったそれだけ?
相手は、ワニなんかじゃないかもしれないのに。
いえ、はっきり、地龍だとわかってるのに!
「よくやった」
席に戻ると、韮崎が小声で言った。
「俺もおまえが正しいと思う。今のやり取り見てて、つくづくそう感じたよ」
「ニラさん」
机の上に視線を落したまま、杏里はつぶやいた。
「私、またひとつ閃いちゃいました」
「ん? 今度は何だ?」
「署に戻ったら、お話しします。それから、ひとつお願いがあります。とっても大事なお願いが」
はらわたが煮えくり返る思いだった。
組織なんて信用できない。
大きくなればなるほど、そうだ。
どうしてこんな結論になるのか。
いったいそれで誰が得をするというのか。
まったくもう。
ほんと、誰得ってやつだよね?
怒りに燃える杏里の視線の先に、笑みを浮かべて談笑する幹部連中の姿があった。
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