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第2章 謝肉祭

#14 宴の後

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 身を守る方法…?
 どういうことだろう?
 改めて私は周りを見回した。
 バスの床にしゃがみ込み、あるいは横になって身体をくねらせているJKたち。
 その誰もが自ら制服をはだけ、半裸になっている。
 中にはふたりでペアになって、お互いの唇を弄り合っている者もいるほどだ。
 確かに彼女らの関心は、今や杏里から完全に逸れてしまっているようだ。
 そういう意味では杏里のいう通りなのかもしれなかった。
 でも、こんな方法って…。
 耳の奥にはまだ杏里の発した艶めかしい声がこびりついていた。
 そしてあのシーン。
 つるつるした杏里の股間に開いたサーモンピンクの”口”。
 粘るような音とともに、そこにずぶずぶとめり込んでいく指。
 指が出し入れされるたびにあふれ出す、粘り気のある透明なしずく…。
 霞がかかったように、頭がぼうっとしてしまっていた。
 ブラの下で固くなった乳首が、裏地に当たって痛かった。
 太腿のつけ根がぬるぬるするのは、気のせいだろうか。
 あるいは、私も杏里の毒気に当てられてしまったというわけか…。
 車内は、うめき声と喘ぎで飽和状態だ。
 私は頭を抱えてその場にうずくまった。
 いけない、と思う。
 このままでは、こっちまでおかしくなってしまう…。
 茫然と座り込んでいると、終点のアナウンスが流れ、バスが停車した。
 のろのろと顔を上げる。
 窓から駅の高架とショッピングセンターの白い建物が見えた。
 女子高生たちは相変わらず自慰に没頭したまま、動こうとしない。
 それはほかの乗客たちも同様だった。
 みんな、座席に座ったまま、うつろな目を宙に泳がせている。
 主婦の中には自分の胸元に手を突っ込んでいる者もいる。
 70過ぎと思われる老人がズボンからペニスを引っ張り出し、しごいていた。
 すさまじい影響力だった。
 杏里の嬌声と痴態が、バスの乗客全員の理性のタガを吹き飛ばしてしまったのである。
「ご乗車ありがとうございました。終点、JR駅前です。このバスは点検のためにこの後車庫に向かいます。お早めにお降りくださるよう、お願いいたします」
 運転手が焦りのにじむ声でアナウンスを繰り返した。
 さっきは録音だったが、今度は肉声だった。
 終点に着いたのに誰も降りようとしないので、困惑し切ってているのだ。
「よどみ、降りよう」
 ぼうっとしている私の手を、杏里がつかんできた。
 手を引かれ、転がるようにしてタラップを降りた。
 新鮮な空気が肺に流れ込み、少し目が覚めた。
 杏里は後ろ手に私の手を引いたまま、ずんずん先を歩いていく。
 杏里の歩調に合わせ、純白のフレアミニがひるがえり、その下からお尻がちらちら覗く。
 ショッピングセンターが近づいてきた。
 左手に広い平面駐車場。
 その向こうが自転車置き場になっている。
 正面入り口の前で足を止めると、杏里がくるりと振り向いた。
「なんか、喉乾いちゃったね。買い物の前に、フードコートで何か飲んでいこうか」
 さっきまでとは別人みたいに、いつもの明るい口調に戻っていた。
 何も答えられないでいると、杏里は周囲を素早く見回し、人の目がこちらに向けられていないことを確かめると、腕を伸ばして私をきゅっと抱きしめた。
「びっくりしてるのはわかるけど、あんなことがあったからって、私を嫌いにならないで。あれは自分ではどうにもならないの。体質みたいなものなんだよ」
 
 
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