32 / 58
第2部 背徳のパトス
#10 杏里とナルシシズム
しおりを挟む
小田切たち三人が帰り、その後の夕食の時間が終わると、病室の中は静寂に包まれた。
下手に外に出るとまた新たな厄介事を背負い込みかねないので、杏里は部屋の中で大人しくしていることにした。
しばらくテレビを見て過ごしたが、すぐにそれにも飽きてしまった。
夜9時に看護師が最後の検温に来ると、消灯時間になった。
昼間断続的に何度も眠ったので、目が冴えて眠れなかった。
小田切たちとの会話の内容を、頭の中で反芻した。
人間の中に混じって繁殖しようとする"外来種”なる生物。
それを発見するのが、タナトスのもうひとつの役目。
しかし、小田切の説明には納得しがたい点がいくつかある。
小田切は、タナトスが外来種を発見できるのは、性行為のときに限る、といった。
確かに昨夜、杏里は実際に謎の男に襲われ、刻印を肌に刻まれた。
だが、外来種が雌だった場合はどうなるのだろう?
その際は、当然のことながらセックスは不可能である。
あるいは、挿入という行為がなくとも、それに類するものであればよいということなのだろうか?
杏里は器具で犯されたときのことを思い出した。
女同士でも、たとえばああいう形で快楽を共有し合うことができれば、刻印は刻まれるのだろうか?
気がつくと、胸を触っていた。
掌に、コリコリしたものが当たる。
そのたびに、いいようのない快感が走った。
乳首が勃起しているのだった。
乳房を強くもまれたときの感覚が蘇る。
杏里は衝動的に病衣を脱いだ。
息が荒い。
奇妙に倒錯的な気分に陥ってしまっているのがわかる。
思い切って、パンティ一枚の、裸になった。
窓に裸体を映してみる。
見慣れているはずの自分の体が、夜の闇を背景にしているせいか、別人の肉体のように、ひどく艶かしく淫靡なものに見える。
陰影が濃いので、実際以上に体のラインが強調されているのだった。
ふいに欲情がこみ上げてきて、衝動的に乳房をつかんでいた。
あふ、
うめきがもれた、
乳房をつかみながら、人差し指で乳首をなでる。
びくんと体が跳ねた。
股間がねっとりと潤い出すのがわかった。
指を口の中に入れ、舌で舐め回す。
唾液が唇の端からしたたった。
指に唾液をたっぷりつけ、両の乳首に塗りつける。
その上に掌を当て、ゆっくり乳首を転がすように動かしてみる。
気持ち、いい・・・。
理性が吹き飛んだ。
タナトスも外来種も、もうどうでもよかった。
すべてを忘れてしまいたかった。
どうすればもっと気持ちよくなれるのか。
杏里はそれだけに意識を集中していた。
手を口に運び、唾液で濡らすと、何度も体中を撫でさする。
豊かな曲線を描いた自分の肉体が、いとおしくてならなかった。
こんなにやわらかくて、こんなにすべすべしているのに、人間じゃない、だなんて・・・。
窓に顔を映す。
この顔、嫌いじゃない。
少し丸くて、少したれ目だけど、でもかわいい。
窓に映る自分の唇に、そっとキスをする。
ぞくっとするほど冷たい感触が返ってくる。
温めてあげる。
舌を出す。
鏡の自分も、同じように舌を出してきた。
舌の先同士が触れ合った。
背筋がぞくっとした。
好きだよ、杏里。
つぶやいた。
たとえ世界中が敵に回ろうとも、私だけは、あなたが好き・・・。
知らぬ間に、右手がパンティの上から性器をまさぐっていた。
布地に染みができていた。
どうしようもないほど、溢れてくるのだ。
左手で左の乳首を強くつかみ、人差し指で乳首をこねる。
右手の指が、勃起して驚くほど大きくなった真珠状の突起を、下着の上から探り当てていた。
あん。
喘いだ。
もうがまんできなかった。
パンティをずらし、”それ”をむきだしにする。
”唇”が充血して、膨らんでいる。
その間から、ねっとりとした体液が溢れ出ようとしていた。
割れ目に沿って、ゆっくりと指でさする。
気持ち、いい・・・。
たまらなくなって、人差し指を挿入した。
痛くはなかった。
それどころか、痺れるような快感があった。
あとは、夢中だった。
指の動きが速くなる。
はあ、はあ、はあ。
喘ぎ声が止まらない。
いつのまにか、下着を脱ぎ捨て、生まれたままの姿になっていた。
前からの愛撫だけでは飽き足らなかった。
杏里はベッドの上でよつんばいになった。
尻を突き出し、下から性器に指を突っ込んだ。
体液がしたたった。
一本ではもの足りない。
二本、三本と挿入する指の数を増やしていく。
狂ったように動かした。
本能的に、それに合わせて腰を振っていた。
全身、愉悦の虜と化していた。
いい、いい・・・・
”穴”の中で、襞という襞が軟体動物のように指に吸いついてくる。
右手でピストン運動しながら、左手を股間に差し入れて、むき出しのクリトリスを指で強くつまんだ。
そのとたん、後頭部で火花が飛んだ。
あ、あ、あん・・・!
蝶番がはずれたかのように、腰が突然がくがく振動した。
甘い泣き声を上げて、杏里はシーツの上に横倒しになった。
むっちりした太腿を、熱い体液がしたたり落ちていく。
初めてのオナニーは、杏里に凄絶なほどの快楽をもたらしたようだった。
散々陵辱され続けてきた経験から、性的なものへの嫌悪感が芽生えてもよさそうなものだが、そうはならなかった。
むしろ、自分で自分を愛するという行為自体が、杏里の性感帯に火をつけたのだった。
が、そのけだるい満足感も、長くは続かなかった。
体の火照りが冷めていくのに比例して、心の奥の空洞が大きくなっていく。
そこだけぽっかり大きな穴が空いたように、空しくて、さびしくてならなかった。
ふと気がつくと、杏里はすすり泣いていた。
泣きながら、拳で弱々しくベッドを叩いていた。
どうして、どうして、どうして・・・。
そう、口の中で繰り返しつぶやきながら。
病室の扉がわずかに開いている。
前髪の長い、顔色の悪い少年が廊下にしゃがみこみ、中を覗いていた。
右手に小さな注射器を握っている。
「待ってろ」
小声でつぶやいた。
「すぐに殺してやるから」
下手に外に出るとまた新たな厄介事を背負い込みかねないので、杏里は部屋の中で大人しくしていることにした。
しばらくテレビを見て過ごしたが、すぐにそれにも飽きてしまった。
夜9時に看護師が最後の検温に来ると、消灯時間になった。
昼間断続的に何度も眠ったので、目が冴えて眠れなかった。
小田切たちとの会話の内容を、頭の中で反芻した。
人間の中に混じって繁殖しようとする"外来種”なる生物。
それを発見するのが、タナトスのもうひとつの役目。
しかし、小田切の説明には納得しがたい点がいくつかある。
小田切は、タナトスが外来種を発見できるのは、性行為のときに限る、といった。
確かに昨夜、杏里は実際に謎の男に襲われ、刻印を肌に刻まれた。
だが、外来種が雌だった場合はどうなるのだろう?
その際は、当然のことながらセックスは不可能である。
あるいは、挿入という行為がなくとも、それに類するものであればよいということなのだろうか?
杏里は器具で犯されたときのことを思い出した。
女同士でも、たとえばああいう形で快楽を共有し合うことができれば、刻印は刻まれるのだろうか?
気がつくと、胸を触っていた。
掌に、コリコリしたものが当たる。
そのたびに、いいようのない快感が走った。
乳首が勃起しているのだった。
乳房を強くもまれたときの感覚が蘇る。
杏里は衝動的に病衣を脱いだ。
息が荒い。
奇妙に倒錯的な気分に陥ってしまっているのがわかる。
思い切って、パンティ一枚の、裸になった。
窓に裸体を映してみる。
見慣れているはずの自分の体が、夜の闇を背景にしているせいか、別人の肉体のように、ひどく艶かしく淫靡なものに見える。
陰影が濃いので、実際以上に体のラインが強調されているのだった。
ふいに欲情がこみ上げてきて、衝動的に乳房をつかんでいた。
あふ、
うめきがもれた、
乳房をつかみながら、人差し指で乳首をなでる。
びくんと体が跳ねた。
股間がねっとりと潤い出すのがわかった。
指を口の中に入れ、舌で舐め回す。
唾液が唇の端からしたたった。
指に唾液をたっぷりつけ、両の乳首に塗りつける。
その上に掌を当て、ゆっくり乳首を転がすように動かしてみる。
気持ち、いい・・・。
理性が吹き飛んだ。
タナトスも外来種も、もうどうでもよかった。
すべてを忘れてしまいたかった。
どうすればもっと気持ちよくなれるのか。
杏里はそれだけに意識を集中していた。
手を口に運び、唾液で濡らすと、何度も体中を撫でさする。
豊かな曲線を描いた自分の肉体が、いとおしくてならなかった。
こんなにやわらかくて、こんなにすべすべしているのに、人間じゃない、だなんて・・・。
窓に顔を映す。
この顔、嫌いじゃない。
少し丸くて、少したれ目だけど、でもかわいい。
窓に映る自分の唇に、そっとキスをする。
ぞくっとするほど冷たい感触が返ってくる。
温めてあげる。
舌を出す。
鏡の自分も、同じように舌を出してきた。
舌の先同士が触れ合った。
背筋がぞくっとした。
好きだよ、杏里。
つぶやいた。
たとえ世界中が敵に回ろうとも、私だけは、あなたが好き・・・。
知らぬ間に、右手がパンティの上から性器をまさぐっていた。
布地に染みができていた。
どうしようもないほど、溢れてくるのだ。
左手で左の乳首を強くつかみ、人差し指で乳首をこねる。
右手の指が、勃起して驚くほど大きくなった真珠状の突起を、下着の上から探り当てていた。
あん。
喘いだ。
もうがまんできなかった。
パンティをずらし、”それ”をむきだしにする。
”唇”が充血して、膨らんでいる。
その間から、ねっとりとした体液が溢れ出ようとしていた。
割れ目に沿って、ゆっくりと指でさする。
気持ち、いい・・・。
たまらなくなって、人差し指を挿入した。
痛くはなかった。
それどころか、痺れるような快感があった。
あとは、夢中だった。
指の動きが速くなる。
はあ、はあ、はあ。
喘ぎ声が止まらない。
いつのまにか、下着を脱ぎ捨て、生まれたままの姿になっていた。
前からの愛撫だけでは飽き足らなかった。
杏里はベッドの上でよつんばいになった。
尻を突き出し、下から性器に指を突っ込んだ。
体液がしたたった。
一本ではもの足りない。
二本、三本と挿入する指の数を増やしていく。
狂ったように動かした。
本能的に、それに合わせて腰を振っていた。
全身、愉悦の虜と化していた。
いい、いい・・・・
”穴”の中で、襞という襞が軟体動物のように指に吸いついてくる。
右手でピストン運動しながら、左手を股間に差し入れて、むき出しのクリトリスを指で強くつまんだ。
そのとたん、後頭部で火花が飛んだ。
あ、あ、あん・・・!
蝶番がはずれたかのように、腰が突然がくがく振動した。
甘い泣き声を上げて、杏里はシーツの上に横倒しになった。
むっちりした太腿を、熱い体液がしたたり落ちていく。
初めてのオナニーは、杏里に凄絶なほどの快楽をもたらしたようだった。
散々陵辱され続けてきた経験から、性的なものへの嫌悪感が芽生えてもよさそうなものだが、そうはならなかった。
むしろ、自分で自分を愛するという行為自体が、杏里の性感帯に火をつけたのだった。
が、そのけだるい満足感も、長くは続かなかった。
体の火照りが冷めていくのに比例して、心の奥の空洞が大きくなっていく。
そこだけぽっかり大きな穴が空いたように、空しくて、さびしくてならなかった。
ふと気がつくと、杏里はすすり泣いていた。
泣きながら、拳で弱々しくベッドを叩いていた。
どうして、どうして、どうして・・・。
そう、口の中で繰り返しつぶやきながら。
病室の扉がわずかに開いている。
前髪の長い、顔色の悪い少年が廊下にしゃがみこみ、中を覗いていた。
右手に小さな注射器を握っている。
「待ってろ」
小声でつぶやいた。
「すぐに殺してやるから」
1
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる