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#12 来訪者①
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「遅かったのね」
家に帰ると、ママが訊いてきた。
きょうのママは、いつもに増して綺麗だ。
きちんと化粧をして、ノースリーブの白いブラウスに、短いタイトスカートを穿いている。
「う、うん、ちょっと、友だちの家に寄ってたから」
僕はあの忌まわしい記憶をふり払うように、首を振った。
「ふうん、そうなんだ」
ランドセルを下ろし、台所のテーブルに座ると、ママが冷蔵庫からジュースを出してきてくれた。
「暑かったでしょ。これ、お飲みなさい」
「あ、ありがとう」
ペットボトルに口をつけると、安堵の思いがさざ波のように全身に広がっていくのが分かった。
やっぱり家はいい。
それに、そんなこと、あるわけがない。
期限切れで、ママが僕を放り出すなんて。
なぜって、ほら、こんなふうに僕はママに愛されてるからだ。
だから、”卒業”の日が来たって、きっとこのまま家に置いてくれるに違いない…。
対面に座るママは、いつものようにブラウスの下に下着をつけていない。
そのため、乳房の形がそっくりそのまま見えている。
その頂で、色の濃い乳輪がふたつ、まるでもう一対の眼のように、僕を見つめている。
「ねえ、ママ、どこかへおでかけするの?」
落ち着いてくると、そんな疑問が募ってきた。
確かママがパートに行くのは明日のはずだ。
でも、ママは家にいる時お化粧なんてしないから、きょうはこれから何かあるに決まっている。
もしかしたら、僕をどこかに連れて行ってくれるのだろうか。
久しぶりにママと買い物というのも悪くない。
僕は美人でスタイルのいいママと並んで歩くのが好きだった。
通りすがりの人がみんな振り向き、称賛の目でママを見るからだ。
「ううん。そうじゃないの。自治会長さんがおいでになるのよ」
柱時計にちらっと眼をやって、ママが言った。
「自治会長?」
僕はたまに見かける、頑固そうな老人の顔を思い出した。
安田とかいったっけ?
ちょっとしたことですぐ怒るから、僕たち子どもの間ではすこぶる評判が悪い。
「何しに来るの? 町内会費の取り立てか何か?」
「ちょっとね。まとまったお金が必要かなと思って」
何でもないことのように、ママが言った。
「今後のために、貯金増やしておこうと思うのよ」
「お金?」
よくわからない。
それと自治会長と、どういう関係があるのだろう?
「だから純、ちょっとお外に出ててほしいのよ」
テーブルに頬杖をついて、ママが言った。
けだるげな視線。
「外出がいやなら、押し入れの中に隠れててくれてもいいけれど」
「…どういうこと?」
「自治会長さん、きっと嫌がると思うから。ふたりだけになりたいって、いつも言ってるし」
冷たい汗が腋の下を伝った。
貧血を起こしたかのように、視界の隅が暗くなり、見える範囲がせまくなった。
「いやだなんて言わないわよね? ママだって、好きでOKしたわけじゃないんだから」
ため息とともに、ママがこめかみのおくれ毛をかき上げた。
その拍子に形のいい胸が揺れ、硬く尖った乳首がはっきりと見えた。
「自治会長さんと、な…なにするの?」
「内緒」
ママがいたずらっぽく笑った。
「知りたければ、押し入れの中に隠れてなさいよ。ただ、長くなるかもしれないから、飲み物とおやつを用意していったほうがいいかもね」
家に帰ると、ママが訊いてきた。
きょうのママは、いつもに増して綺麗だ。
きちんと化粧をして、ノースリーブの白いブラウスに、短いタイトスカートを穿いている。
「う、うん、ちょっと、友だちの家に寄ってたから」
僕はあの忌まわしい記憶をふり払うように、首を振った。
「ふうん、そうなんだ」
ランドセルを下ろし、台所のテーブルに座ると、ママが冷蔵庫からジュースを出してきてくれた。
「暑かったでしょ。これ、お飲みなさい」
「あ、ありがとう」
ペットボトルに口をつけると、安堵の思いがさざ波のように全身に広がっていくのが分かった。
やっぱり家はいい。
それに、そんなこと、あるわけがない。
期限切れで、ママが僕を放り出すなんて。
なぜって、ほら、こんなふうに僕はママに愛されてるからだ。
だから、”卒業”の日が来たって、きっとこのまま家に置いてくれるに違いない…。
対面に座るママは、いつものようにブラウスの下に下着をつけていない。
そのため、乳房の形がそっくりそのまま見えている。
その頂で、色の濃い乳輪がふたつ、まるでもう一対の眼のように、僕を見つめている。
「ねえ、ママ、どこかへおでかけするの?」
落ち着いてくると、そんな疑問が募ってきた。
確かママがパートに行くのは明日のはずだ。
でも、ママは家にいる時お化粧なんてしないから、きょうはこれから何かあるに決まっている。
もしかしたら、僕をどこかに連れて行ってくれるのだろうか。
久しぶりにママと買い物というのも悪くない。
僕は美人でスタイルのいいママと並んで歩くのが好きだった。
通りすがりの人がみんな振り向き、称賛の目でママを見るからだ。
「ううん。そうじゃないの。自治会長さんがおいでになるのよ」
柱時計にちらっと眼をやって、ママが言った。
「自治会長?」
僕はたまに見かける、頑固そうな老人の顔を思い出した。
安田とかいったっけ?
ちょっとしたことですぐ怒るから、僕たち子どもの間ではすこぶる評判が悪い。
「何しに来るの? 町内会費の取り立てか何か?」
「ちょっとね。まとまったお金が必要かなと思って」
何でもないことのように、ママが言った。
「今後のために、貯金増やしておこうと思うのよ」
「お金?」
よくわからない。
それと自治会長と、どういう関係があるのだろう?
「だから純、ちょっとお外に出ててほしいのよ」
テーブルに頬杖をついて、ママが言った。
けだるげな視線。
「外出がいやなら、押し入れの中に隠れててくれてもいいけれど」
「…どういうこと?」
「自治会長さん、きっと嫌がると思うから。ふたりだけになりたいって、いつも言ってるし」
冷たい汗が腋の下を伝った。
貧血を起こしたかのように、視界の隅が暗くなり、見える範囲がせまくなった。
「いやだなんて言わないわよね? ママだって、好きでOKしたわけじゃないんだから」
ため息とともに、ママがこめかみのおくれ毛をかき上げた。
その拍子に形のいい胸が揺れ、硬く尖った乳首がはっきりと見えた。
「自治会長さんと、な…なにするの?」
「内緒」
ママがいたずらっぽく笑った。
「知りたければ、押し入れの中に隠れてなさいよ。ただ、長くなるかもしれないから、飲み物とおやつを用意していったほうがいいかもね」
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