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第8部 妄執のハーデス

#25 吸精鬼

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 ふたりの女の膣深くに潜り込んだ触手。

 その先端から、生暖かい液が杏里の中に流れ込んできた。

 生命のエキスに違いなかった。

 美里はこれを生徒たちから定期的に吸い取っていたのだ。

 精力剤でも飲んだかのように、全身がぽかぽかと温かくなってきた。

 暖房が入っているわけでもないのに、暑くてたまらない。

 それを存分に吸収すると、杏里は攻撃に転じた。

 触手の先端から、今度は媚薬入りの己のエキスを放出したのだ。

 獣のような声を上げて、ふたりの女が服を脱ぎ出した。

 触手を収納して、杏里はその隙に席を立った。

 着衣の乱れを直し、十分に離れたところからふたりの様子を見守ることにした。

 半裸になり、狂ったように抱き合い、お互いの身体を貪り合う二匹の雌。

 その嬌声に誘われ、他の乗客たちがふたりの周りに集まっていく。

 男たちは皆ズボンのファスナーを下ろし、勃起した陰茎を手で握りしめているようだ。

 狂ったふたりの女が、近づいてきたサラリーマンを引きずり込んだ。

 そこへ別の若者が現れ、下半身裸のまま、もつれあった肉体の中にダイブしていった。

 後は、ドミノ倒しを見るようなものだった。

 たちまちのうちに、阿鼻叫喚の渦が沸き起こり、杏里以外のすべての乗客たちが雪崩を打って倒れ込んでいく。
 
 裸の尻が蠢き、喘ぎとともに強い栗の花の匂いが弾けた。

 録音のアナウンスが流れ、バスが止まった。

 ドアが開いたが、誰も降りようとしないし、第一いっこうに閉まる気配がない。

 それもそのはずだった。

 運転席を離れた運転手が、折り重なる乗客たちに近づいていく。

 注意しにいくわけでないらしいことは、そのうつろな表情からも明らかだった。

 運転手も、股間を盛り上がらせ、右手で固く握りしめているのだ。

 当然、バスが動き出すこともない。

 結果に満足して、杏里はひとり、バスを降りた。

 学校まではまだ数駅ある。

 が、遅刻を覚悟で歩くつもりだった。

 次は、教室で試してみよう。

 そう思った。

 うまくいけば、意外に早くクラスの浄化が済むかもしれない。

 そうなれば、”脱出ゲーム”を開催する必要もなくなるわけだ。

 もっと、強くならなきゃ。

 杏里は足を速めた。

 短すぎるスカートの裾から頻繁に下着がのぞくのも、もう気にならなかった。

 女たちのエキスを吸収したせいか、体内にアドレナリンがふつふつと湧き出ていた。

 そうして、この調子で、委員会の研修とやらも、見事切り抜けてやるのだ。






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