異世界病棟

戸影絵麻

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#4 コンドーさん

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 それはしわがれた老人の声だった。
 まるで地の底から響いてくるように、気持ち悪かった。
 声と同時に、ナースコールが鳴り始めた。
 どうしたんだろう?
 緊張で胸がどきどきする。
 何か発作でも起きたのだろうか。
「あれは?」
 僕は、血圧計を僕の左手首に巻きつけようとしている乙都にたずねた。
「ああ、コンドーさんですね」
 なんでもないといったふうに、乙都が答えた。
「いつものことです。近藤さん、お食事食べなくて、ミルクしか飲まないので」
「放っておいていいの?」
「もうすぐ蓮月ちゃんが来ます。私の同期の福士蓮月ちゃんが近藤さんの担当ですから」
「そうなんだ」
 少しほっとした。
「どっちにしても、昼間は何もできないんですよ」
 口の中で小声でそうつけ加える研修生。
 昼間は?
 どういうことだろう?
 ミ・ル・ク。
 ミ・ル・ク。
 気味悪い老人の連呼はいっこうにやみそうもない。
 そうならそうと、その蓮月ちゃんに早く来てほしいものだ。
 乙都は僕の手首に血圧計を取り付け、スイッチを入れた。
 ウイーンという機械音とともに、じわじわとバンドが手首を締めつけてくる。
 そうしておいて、乙都は親指で僕の脈拍を測り出した。
「あの、ひとつお願いがあるんですけど」
 脈を測りながら、乙都が言った。
「午後からお身体を拭かせていただくんですけど、その時その同期もご一緒させていただいてよろしいですか? 介護時は研修生ふたり体制と決まってるものですから」

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