7 / 88
#6 不穏な会話①
しおりを挟む
「どうしちゃったんですか? 近藤さん」
カーテンの開く音に続き、会話が始まった。
無意識のうちに、僕は耳を澄ましていた。
”近藤さん”なる同室の患者が、気になってならない。
変なものを目撃したせいもある。
「ミ・ル・ク!」
一音一音区切って、叩きつけるように近藤さんが言う。
しわがれ、喉に痰の絡んだひどく聞き辛い声だ。
本人を見たわけではないが、あの声からして、近藤さんはかなりの高齢者に違いない。
「はいはい、そう思って、コンビニで牛乳買ってきましたよ。これでやっとお薬飲めるかな?」
乙都の同期という看護師は、かなり辛抱強い性格のようだ。
駄々をこねる幼児みたいな老人を、うまくあしらっている。
が、近藤さんのほうが、更に上手らしかった。
次の瞬間、割れ鐘みたいな声が病室の空気を震わせた。
「いらんっ。ちがうっ! やれっ! いつもみたいに!」
ガシャンと何かが床に落ちる音がして、看護師が小さく悲鳴を上げた。
「わがまま言わないで。いつもみたいにって、あれは…。それに、きょうは新しい患者さんも、いるし、第一、まだお昼で、明るいじゃあ、ありませんか…」
「ミ・ル・クっ! ミ・ル・クっ! ミ・ル・クっ!」
「しょうがないなあ…。まだお昼ですよ。ブラックナースの出番じゃないんですから。でもまあ、ちょっとだけなら・・・。…その代わり、朝のお薬、絶対飲んでくださいよ…」
ブラックナース?
これまた意味不明だ。
衣ずれの音が始まった。
何だろう?
他人事ながら、胸がドキドキしてきた。
心臓が、苦しくなる。
よくない傾向だ。
でも、気になる。
どういうことなんだ?
いつもみたいとか、まだ明るいとか…。
それに、あの音・・・。
看護師さん、なんか、服を脱いでるみたいなんだがー。
カーテンの開く音に続き、会話が始まった。
無意識のうちに、僕は耳を澄ましていた。
”近藤さん”なる同室の患者が、気になってならない。
変なものを目撃したせいもある。
「ミ・ル・ク!」
一音一音区切って、叩きつけるように近藤さんが言う。
しわがれ、喉に痰の絡んだひどく聞き辛い声だ。
本人を見たわけではないが、あの声からして、近藤さんはかなりの高齢者に違いない。
「はいはい、そう思って、コンビニで牛乳買ってきましたよ。これでやっとお薬飲めるかな?」
乙都の同期という看護師は、かなり辛抱強い性格のようだ。
駄々をこねる幼児みたいな老人を、うまくあしらっている。
が、近藤さんのほうが、更に上手らしかった。
次の瞬間、割れ鐘みたいな声が病室の空気を震わせた。
「いらんっ。ちがうっ! やれっ! いつもみたいに!」
ガシャンと何かが床に落ちる音がして、看護師が小さく悲鳴を上げた。
「わがまま言わないで。いつもみたいにって、あれは…。それに、きょうは新しい患者さんも、いるし、第一、まだお昼で、明るいじゃあ、ありませんか…」
「ミ・ル・クっ! ミ・ル・クっ! ミ・ル・クっ!」
「しょうがないなあ…。まだお昼ですよ。ブラックナースの出番じゃないんですから。でもまあ、ちょっとだけなら・・・。…その代わり、朝のお薬、絶対飲んでくださいよ…」
ブラックナース?
これまた意味不明だ。
衣ずれの音が始まった。
何だろう?
他人事ながら、胸がドキドキしてきた。
心臓が、苦しくなる。
よくない傾向だ。
でも、気になる。
どういうことなんだ?
いつもみたいとか、まだ明るいとか…。
それに、あの音・・・。
看護師さん、なんか、服を脱いでるみたいなんだがー。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
10
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる