異世界病棟

戸影絵麻

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#24 そして、夜が来る③

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 今度の蓮月の登場は早かった。
「はいはいはいっ」
 バタバタと廊下を走る足音がしたかと思うと、カーテンの向こうを大きな影が立った。
「さあ、コンドウサン、お夕食にミルクとヤクルト持ってきたからねー」
 向かいのカーテンの開く音がして影が消えると、コンドウサンの喚き声が聞こえなくなった。
「ミルクがほしかったら、まずご飯を食べましょ。はあい、お口開けて。あ~ん」
「レンゲちゃんも大変」
 乙都が小声でつぶやくと、軽く肩をすくめてみせた。
 そりゃ、そうだろう。
 レンゲに比べれば、彼女はまだ恵まれているほうだ。
 なんてたって、あの一回の粗相を除けば、僕は模範囚みたいなものだからである。

 薬は乙都が一錠ずつ飲ませてくれた。
 全部で5つもあって、市販の薬に比べると、サイズも形もバラバラである。
「これがコレステロールを下げる薬、これが血圧を下げる薬、これが便通をよくする薬、これが血管を・・・」
 コップに汲んできた水で一粒飲ませてくれるごとに説明してくれたけど、すぐにどれが何かわからなくなった。
「で、このピンクのが、睡眠薬です」
 最後の一錠を、指でつまんで僕の舌の上に乗せる。
「効いてくるまでに少し時間がかかりますから、テレビでもつけますか? これでテレビも冷蔵庫も使えます」
 一枚のカードをテレビ台のスリットに差して、乙都が言う。
「ありがとう」
 何とはなしに画面に目をやると、ちょうど夜のニュース番組が始まるところだった。
 何度か見たことのある、ローカル局のアナウンサーが映っている。
 流れ出したテロップを目に止めるなり、なぜか、背筋がゾクッとした。
 喉から心臓が飛び出しそうなほど、動悸が激しくなった。
 ま、まずい・・・。
「やめた」
 顔を背け、僕はそそくさとリモコンのスイッチをオフにした。
「今はテレビの気分じゃない」 
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