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第6章 ネオ・チャイナの野望

#57 少女に迫る危機⑨

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 ツイン・ルームといっても、ベッドが二つあるほかは、屋根裏部屋かと思うほどの粗末な部屋だった。

「ここひとつしか空いてないんでね」

 卑猥な笑みを下衆な顔に貼りつけながら、主人は言った。

「夜は長い。じっくり愉しみな」

 親父が去っても、アニムスは真っ赤になってうつむいたままだ。

「まあ、シャワーが浴びられるだけ、マシだと思うことにしよう。お湯で躰を洗えるなんて、出発以来だし」

 答えないアニムスを置いて、ルビイはさっさと浴室に入った。

 胴着、ショートパンツ、下着を脱いで全裸になり、思う存分シャワーを浴びた。

 お湯は熱く、安宿にしては上等だ。

 タオルを躰に巻いただけの恰好で浴室を出ると、アニムスがさっと顔を背けるのがわかった。

 またしても、頬がみるみるうちに赤くなる。

「気持ちいいよ。入ったら」

「う、うん」

 促すと、前かがみの姿勢で、小走りに浴室のカーテンの向こうに消えて行った。


 夕食は主人が部屋まで届けてくれた。

 親切心からというより、その表情からすると、歳の差カップルの様子を覗きに来たといったふうだった。

「風呂上がりかい。さすがいい女は、いい匂いがするねえ」

 そんなセクハラまがいの感想を口にして、階段を下りて行った。

 長旅の疲れもあって、アニムスとろくに言葉も交わさないまま、ルビイは寝入っていた。

 目覚めたのは深夜、妙な気配を感じたからである。

 アニムスのベッドのほうで、何か音がする。

 横目で見ると、薄闇の中に、ベッドに横たわる全裸のアニムスが見えた。

 股間からそびえ立つ黒い影に気づき、ルビイは危く声を上げそうになる。

 子どもだとばかり思ってたのに、なあに、あの、大きさは…。

 アニムスは、片手でそそり立つバナナのような体の一部を握りしめ、ゆっくりと扱いている。

 その口は半開きになり、熱い吐息が漏れている。

 サトが教えたのだ。

 直感的に、閃いた。

 アニムスはすでに、サトの手ほどきを受け、性に目覚めていたに違いない。

 息を殺して寝たふりをしていると、股間の一部を握りしめたまま、アニムスがベッドを降りるのがわかった。

 ルビイのベッドの脇に立ち、空いたほうの手で、シーツをめくる。

 ひんやりとした空気が、火照った肌を包み込んだ。

 シーツの下のルビイは、アニムス同様、全裸だったのだ。

 
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