18 / 58
#17 監禁
しおりを挟む
凍りつくような寒さで目が覚めた。
身じろぎしようとして、芙由子は事態の異常さに気づき、蒼白になった。
衣服をはぎとられ、両手首と両足首を細いロープで縛られたまま、床に転がされているのだ。
身に着けているのは、ブラジャーとショーツだけである。
むき出しの肌には鳥肌が立ち、膀胱が猛烈な尿意を訴えている。
捕まったのだ、あの男に。
恐怖で総毛立つ思いだった。
まさか、ここまでやるなんて。
狂ってる。
自分の娘だけでなく、赤の他人の私にまで危害を加えるなんて、いったいどういうつもりだろう?
明り取りの窓がひとつだけある、殺風景な狭い部屋だった。
足の短い折り畳み式のテーブルがひとつあるだけで、家具の類は何もない。
ヒナのいた、あのごみ屋敷みたいな部屋とは真逆である。
これじゃまるで、座敷牢だ。
尿器をこらえながら、芙由子は思った。
もしかして、比奈はいつもはここに閉じ込められているのかもしれない。
さっきは食べ物を捜して、別の部屋の中にいたのではないか。
でも、それなら今はどこにいるのだろう?
まさか、あのごみ部屋で、父親から折檻されているとか…。
窓からのぞく空はもう暗かった。
なのに部屋の中の様子が見えるのは、明り取りの窓の外に街灯が立っているからだ。
どうしよう?
今頃職場では、休憩に出たまま帰って来ない芙由子に対して、みんな怒り狂っていることだろう。
芙由子はただでさえ、普段から周囲の受けがよくないのだ。
このままでは、下手をすると、首にされてしまう。
ふすまの向こうで話し声が聞こえた気がして、芙由子は芋虫のように畳の上を這った。
苦労して戸口まで這い進むと、柱に背中をもたせかけて、深いため息をつく。
ふすまに耳をつけると、テレビの音声に混じって、ぼそぼそとした話し声が聞こえてきた。
言い争うような男と女の声だった。
「どうすんのよ? あんな荷物、抱え込んじゃって」
女の声が、不満をぶちまけている。
「いくらヒナを、見られたからって、ちょっとやりすぎじない?」
「警察に通報されてもいいってのか」
不機嫌そうな声で、男が言う。
「また毎日のように児相の連中が押しかけてくるかもしれないんだぞ」
「だからって、どうするのよ? 解放したら、真っ先に警察に駆け込むよ?」
「解放なんてしないさ」
男の言葉に、芙由子はぎくりとした。
何を言い出すのだ? この男。
「まさか、殺す気じゃ」
女の声が怯えたように1オクターブ高くなる。
「飼うんだよ」
なんでもないことのように、男が言った。
「ペットにして、こっちの言いなりになるよう、しつけるんだ」
身じろぎしようとして、芙由子は事態の異常さに気づき、蒼白になった。
衣服をはぎとられ、両手首と両足首を細いロープで縛られたまま、床に転がされているのだ。
身に着けているのは、ブラジャーとショーツだけである。
むき出しの肌には鳥肌が立ち、膀胱が猛烈な尿意を訴えている。
捕まったのだ、あの男に。
恐怖で総毛立つ思いだった。
まさか、ここまでやるなんて。
狂ってる。
自分の娘だけでなく、赤の他人の私にまで危害を加えるなんて、いったいどういうつもりだろう?
明り取りの窓がひとつだけある、殺風景な狭い部屋だった。
足の短い折り畳み式のテーブルがひとつあるだけで、家具の類は何もない。
ヒナのいた、あのごみ屋敷みたいな部屋とは真逆である。
これじゃまるで、座敷牢だ。
尿器をこらえながら、芙由子は思った。
もしかして、比奈はいつもはここに閉じ込められているのかもしれない。
さっきは食べ物を捜して、別の部屋の中にいたのではないか。
でも、それなら今はどこにいるのだろう?
まさか、あのごみ部屋で、父親から折檻されているとか…。
窓からのぞく空はもう暗かった。
なのに部屋の中の様子が見えるのは、明り取りの窓の外に街灯が立っているからだ。
どうしよう?
今頃職場では、休憩に出たまま帰って来ない芙由子に対して、みんな怒り狂っていることだろう。
芙由子はただでさえ、普段から周囲の受けがよくないのだ。
このままでは、下手をすると、首にされてしまう。
ふすまの向こうで話し声が聞こえた気がして、芙由子は芋虫のように畳の上を這った。
苦労して戸口まで這い進むと、柱に背中をもたせかけて、深いため息をつく。
ふすまに耳をつけると、テレビの音声に混じって、ぼそぼそとした話し声が聞こえてきた。
言い争うような男と女の声だった。
「どうすんのよ? あんな荷物、抱え込んじゃって」
女の声が、不満をぶちまけている。
「いくらヒナを、見られたからって、ちょっとやりすぎじない?」
「警察に通報されてもいいってのか」
不機嫌そうな声で、男が言う。
「また毎日のように児相の連中が押しかけてくるかもしれないんだぞ」
「だからって、どうするのよ? 解放したら、真っ先に警察に駆け込むよ?」
「解放なんてしないさ」
男の言葉に、芙由子はぎくりとした。
何を言い出すのだ? この男。
「まさか、殺す気じゃ」
女の声が怯えたように1オクターブ高くなる。
「飼うんだよ」
なんでもないことのように、男が言った。
「ペットにして、こっちの言いなりになるよう、しつけるんだ」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
女子切腹同好会
しんいち
ホラー
どこにでもいるような平凡な女の子である新瀬有香は、学校説明会で出会った超絶美人生徒会長に憧れて私立の女子高に入学した。そこで彼女を待っていたのは、オゾマシイ運命。彼女も決して正常とは言えない思考に染まってゆき、流されていってしまう…。
はたして、彼女の行き着く先は・・・。
この話は、切腹場面等、流血を含む残酷シーンがあります。御注意ください。
また・・・。登場人物は、だれもかれも皆、イカレテいます。イカレタ者どものイカレタ話です。決して、マネしてはいけません。
マネしてはいけないのですが……。案外、あなたの近くにも、似たような話があるのかも。
世の中には、知らなくて良いコト…知ってはいけないコト…が、存在するのですよ。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる