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2. 夢見る雑草
色づき
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同じ日々のはずだった。
その日は導入して間もないシステムのマニュアルを作成する為、パソコンの矢印とカーソルが交互に画面を走っていた。
突然スーツのポケットが揺れた。
シャコッ!
何かが届いた事をちゃんとわからせる機械音に一瞬喜びを感じてしまうが、また、どこで登録したのかわからないが律儀に忘れもせず毎日広告を送ってくるスーパーからのお知らせかななどと思いながら反射的にスマホを確認した。
【A】
何もなかったかのようにパソコン画面に戻った。しかし、胸のあたりがキューっと握られるような何年も感じた事がなかった感情を受け止められていなかった。
その日Aは外出勤務になっており、朝から姿が見えなかった。
さっき行ったばかりのはずなのに再びトイレに行くそぶりをアピールしつつ自席を立った中城は、オフィスの廊下にでると誰もこなそうな場所を見つけ、スマホに指をなぞらせ始めた。
【今日もし、おヒマでしたら飲みにいきませんか?】
マニュアル作成で定時を過ぎると予想していた事がチラッと頭をよぎったが、
【いいよ】
と入力し送信ボタンを押した。画面に一段メッセージが加わり機械音を聞きながら、中城は後悔していた。どこに何時待ち合わせとか仕事が終わる目処とかどんな所に行きたいとか色々聞けたはずなのに、一言だけで返すなんてなんて馬鹿だ。そもそも、そんな一言だけだったら印象悪いんじゃないかと自分を否定しながらその日を過ごしていた。
シャコッ!
LINEを返信してから約2時間後。
返ってきた!
中城は廊下の隠れ家へ向かいラインを開いた。
【私、今日研修で17時には終わります。中城さんは何時くらいに仕事終わりますか?】
今度は慎重に内容を考えて返信した。
【18時くらいには終わるよ。Aさんは何時に帰社する?食べたい物とかある?】
すぐに既読マークが付き、間もなく返事が返ってきた。
【本日は帰社しない予定です。お店は特に嫌いな物ないので、中城さんにお任せしていいですか?研修に戻らないといけないので集合場所も中城さんの都合に合わせますので決めてもらっていいですか?すいません(汗)】
中城は何度も見返しては、嬉しさと不安の入り混じった何色かわからない感情が胸に溢れていた。
「な、なんだ、この気持ちは、、、」若い頃に感じた事があったのかすら覚えていないが、自分の鼓動の速さが耳から聴こえてくる錯覚に陥るくらいドキドキしていた。すぐに返信出来なかった。
「一度落ち着こう。」
自席に戻り、キーボードを叩いては、削除キーを押し叩いては消しを繰り返していた。
考える事の多さと感情の制御に追い付かず、険しい顔つきになっており、側からみれば猛烈に仕事をしている様に見えただろう。
「何時に解散すればいいんだ?いや、まず店だ。何が好きなんだろう。和食か?いや、若い子はイタリアンか?あ、所持金あったか、カードは使えないし、ATM行かないと。集合時間は、いや、集合場所が先だ。俺が都合いい場所?何処へでも行くだろ!そうすると向こうが都合いい場所。研修はどこでやってるんだ?行動予定にも書いてない。誰かに聞くか?いやいや、ダメだろ。あ、ハミガキした方がいいか、いや、何考えてるんだ。、、、、、、」
終わらない計画立案は、あまりにも時間の流れを早くさせた。焦りは時に人間に普段以上の力を与える事を実感させる事例になるくらい中城はプランを固めた。
【19時〇〇駅の西口改札の前にいる集合で大丈夫?都合悪かったら連絡して。】
素早くラインに打ち込み送信した。
そして、不安の荒波が押し寄せてくる。
「これでいいのか?時間は早すぎるかな。いや、遅すぎるかな。〇〇駅って西口あったよな?あれ、じゃぁ俺は何時に出ればいいんだ?、、、、、」
中城は荒波を打ち消すかのように自問し続けた。
その日は導入して間もないシステムのマニュアルを作成する為、パソコンの矢印とカーソルが交互に画面を走っていた。
突然スーツのポケットが揺れた。
シャコッ!
何かが届いた事をちゃんとわからせる機械音に一瞬喜びを感じてしまうが、また、どこで登録したのかわからないが律儀に忘れもせず毎日広告を送ってくるスーパーからのお知らせかななどと思いながら反射的にスマホを確認した。
【A】
何もなかったかのようにパソコン画面に戻った。しかし、胸のあたりがキューっと握られるような何年も感じた事がなかった感情を受け止められていなかった。
その日Aは外出勤務になっており、朝から姿が見えなかった。
さっき行ったばかりのはずなのに再びトイレに行くそぶりをアピールしつつ自席を立った中城は、オフィスの廊下にでると誰もこなそうな場所を見つけ、スマホに指をなぞらせ始めた。
【今日もし、おヒマでしたら飲みにいきませんか?】
マニュアル作成で定時を過ぎると予想していた事がチラッと頭をよぎったが、
【いいよ】
と入力し送信ボタンを押した。画面に一段メッセージが加わり機械音を聞きながら、中城は後悔していた。どこに何時待ち合わせとか仕事が終わる目処とかどんな所に行きたいとか色々聞けたはずなのに、一言だけで返すなんてなんて馬鹿だ。そもそも、そんな一言だけだったら印象悪いんじゃないかと自分を否定しながらその日を過ごしていた。
シャコッ!
LINEを返信してから約2時間後。
返ってきた!
中城は廊下の隠れ家へ向かいラインを開いた。
【私、今日研修で17時には終わります。中城さんは何時くらいに仕事終わりますか?】
今度は慎重に内容を考えて返信した。
【18時くらいには終わるよ。Aさんは何時に帰社する?食べたい物とかある?】
すぐに既読マークが付き、間もなく返事が返ってきた。
【本日は帰社しない予定です。お店は特に嫌いな物ないので、中城さんにお任せしていいですか?研修に戻らないといけないので集合場所も中城さんの都合に合わせますので決めてもらっていいですか?すいません(汗)】
中城は何度も見返しては、嬉しさと不安の入り混じった何色かわからない感情が胸に溢れていた。
「な、なんだ、この気持ちは、、、」若い頃に感じた事があったのかすら覚えていないが、自分の鼓動の速さが耳から聴こえてくる錯覚に陥るくらいドキドキしていた。すぐに返信出来なかった。
「一度落ち着こう。」
自席に戻り、キーボードを叩いては、削除キーを押し叩いては消しを繰り返していた。
考える事の多さと感情の制御に追い付かず、険しい顔つきになっており、側からみれば猛烈に仕事をしている様に見えただろう。
「何時に解散すればいいんだ?いや、まず店だ。何が好きなんだろう。和食か?いや、若い子はイタリアンか?あ、所持金あったか、カードは使えないし、ATM行かないと。集合時間は、いや、集合場所が先だ。俺が都合いい場所?何処へでも行くだろ!そうすると向こうが都合いい場所。研修はどこでやってるんだ?行動予定にも書いてない。誰かに聞くか?いやいや、ダメだろ。あ、ハミガキした方がいいか、いや、何考えてるんだ。、、、、、、」
終わらない計画立案は、あまりにも時間の流れを早くさせた。焦りは時に人間に普段以上の力を与える事を実感させる事例になるくらい中城はプランを固めた。
【19時〇〇駅の西口改札の前にいる集合で大丈夫?都合悪かったら連絡して。】
素早くラインに打ち込み送信した。
そして、不安の荒波が押し寄せてくる。
「これでいいのか?時間は早すぎるかな。いや、遅すぎるかな。〇〇駅って西口あったよな?あれ、じゃぁ俺は何時に出ればいいんだ?、、、、、」
中城は荒波を打ち消すかのように自問し続けた。
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