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2. 夢見る雑草
現実世界
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シャコッ!
「よかった、返ってきた。」
少し安心したのもつかの間、
【わかりました。よろしくお願いします。】
感情がわからない短文の返信に中城はさらに自問の沼にはまっていったのだった。
人が感じる時間とは人それぞれである。相対性理論とか難しい事ではない。例えば、大勢の人の前で話さなければならない状況を待つ時間は早く感じるものだ。つまり、その人の置かれている状況や感情で同じ時間を遅くも早くも感じることがある。その日の中城も約束の19時までの時間があっという間に過ぎていった。
同じ日々が揺れた。
19時前、会社帰りの人々が交差する中、中城は〇〇駅の待ち合わせ場所として有名な猫の銅像の前にいた。
考えていた。第一声はどう声をかければいいのか。
「お疲れ様です、お疲れ様、研修お疲れ様、おう!、やぁ、こんばんは、チェース、ハロー、、、」緊張のあまり中城は訳の分からない状態まで壊れていた。Aを見つけたら手をあげるべきか、近づいていくべきか。
中城の視線は意味もなく駅のポスターに向いていた。
その時、視界の端にAが改札を出てくる姿が映った。しかし、中城はなぜかポスターから視線を外さず直視出来なかったが、確信できるほどAの姿だ。カーと頭に血液が集まる。
「どうしよう。」
そうこうしているうちにAは視線の端から消えていた。
おそらく他の人から見ればポスターを夢中で凝視しているおじさんに見えるだろう。
ポスターが目に焼きつくほどに凝視しているが、何のポスターかすら分からないくらい意識は視線の端に集まっていた。
1分くらい経っただろうか。
耐えられないくらいAの行方が気になる。
「なんで気付かないフリをしているんだ、俺は、」
ゆっくりと駅の改札に目を向け、Aの行方を追ったが予想した進路には見えなかった。平然を装いながらも、焦りが勝ち中城の目は激しく動いていた。
ポンッ!
肩に小さな衝撃を受けた。反射的に振り向いた先には、Aが微笑みを浮かべ立っていた。
思わず笑みがこぼれる。
鼓動が走り出す。
「中城さん、お疲れ様です。」
「お、お疲れ様。」
一瞬眩しさを感じた中城は、目をパタパタさせた。
「どうかされました?」
黄色いカーディガンにタイトめの白いパンツが、駅のくすんだ基調のキャンバスに映えていた。
「いや、なんでもないよ。」
Aは、ハハハと口を押さえ笑い出した。
「何?」
少し怪訝な顔で中城が問いかける。
「いえ、中城さんこの前会社の階段で転んでたの思い出しちゃいました。」
「見てたの?」
「はい!!すごく上手に転んでましたよね。」
確かに一週間くらい前のある日、昼休み直前に書類を他の部署に渡すため、急いで階段を下り始めた矢先、スーツのポケットが階段の取っ手に引っかかり、まるでスケート選手のダブルアクセルの様に回転しながら踊り場まで転んでいた。誰にも見られてないとおもっていたのに、、、
「みてたの?」
「はい、私も階段に行ったら中城さんが回りながら落ちていくの見て笑いが抑えられなくて事務所に戻りながら爆笑してました。」
「本当?誰もいないかも思ったのに、、
ひどいな、助けてよ。」
「ごめんなさい。でも、持っている書類も一緒に回っていたから、プロペラみたいで飛びそうでしたよ。」
Aは、思い出したイメージが鮮明になったのか吹き出しながらさらに大きく笑っていた。
「見られてるなんて全然気づかなかったな~。」などと話しながら、中城は切り出すタイミングを見ていた。
「行こうか。」
「はい。」
「よかった、返ってきた。」
少し安心したのもつかの間、
【わかりました。よろしくお願いします。】
感情がわからない短文の返信に中城はさらに自問の沼にはまっていったのだった。
人が感じる時間とは人それぞれである。相対性理論とか難しい事ではない。例えば、大勢の人の前で話さなければならない状況を待つ時間は早く感じるものだ。つまり、その人の置かれている状況や感情で同じ時間を遅くも早くも感じることがある。その日の中城も約束の19時までの時間があっという間に過ぎていった。
同じ日々が揺れた。
19時前、会社帰りの人々が交差する中、中城は〇〇駅の待ち合わせ場所として有名な猫の銅像の前にいた。
考えていた。第一声はどう声をかければいいのか。
「お疲れ様です、お疲れ様、研修お疲れ様、おう!、やぁ、こんばんは、チェース、ハロー、、、」緊張のあまり中城は訳の分からない状態まで壊れていた。Aを見つけたら手をあげるべきか、近づいていくべきか。
中城の視線は意味もなく駅のポスターに向いていた。
その時、視界の端にAが改札を出てくる姿が映った。しかし、中城はなぜかポスターから視線を外さず直視出来なかったが、確信できるほどAの姿だ。カーと頭に血液が集まる。
「どうしよう。」
そうこうしているうちにAは視線の端から消えていた。
おそらく他の人から見ればポスターを夢中で凝視しているおじさんに見えるだろう。
ポスターが目に焼きつくほどに凝視しているが、何のポスターかすら分からないくらい意識は視線の端に集まっていた。
1分くらい経っただろうか。
耐えられないくらいAの行方が気になる。
「なんで気付かないフリをしているんだ、俺は、」
ゆっくりと駅の改札に目を向け、Aの行方を追ったが予想した進路には見えなかった。平然を装いながらも、焦りが勝ち中城の目は激しく動いていた。
ポンッ!
肩に小さな衝撃を受けた。反射的に振り向いた先には、Aが微笑みを浮かべ立っていた。
思わず笑みがこぼれる。
鼓動が走り出す。
「中城さん、お疲れ様です。」
「お、お疲れ様。」
一瞬眩しさを感じた中城は、目をパタパタさせた。
「どうかされました?」
黄色いカーディガンにタイトめの白いパンツが、駅のくすんだ基調のキャンバスに映えていた。
「いや、なんでもないよ。」
Aは、ハハハと口を押さえ笑い出した。
「何?」
少し怪訝な顔で中城が問いかける。
「いえ、中城さんこの前会社の階段で転んでたの思い出しちゃいました。」
「見てたの?」
「はい!!すごく上手に転んでましたよね。」
確かに一週間くらい前のある日、昼休み直前に書類を他の部署に渡すため、急いで階段を下り始めた矢先、スーツのポケットが階段の取っ手に引っかかり、まるでスケート選手のダブルアクセルの様に回転しながら踊り場まで転んでいた。誰にも見られてないとおもっていたのに、、、
「みてたの?」
「はい、私も階段に行ったら中城さんが回りながら落ちていくの見て笑いが抑えられなくて事務所に戻りながら爆笑してました。」
「本当?誰もいないかも思ったのに、、
ひどいな、助けてよ。」
「ごめんなさい。でも、持っている書類も一緒に回っていたから、プロペラみたいで飛びそうでしたよ。」
Aは、思い出したイメージが鮮明になったのか吹き出しながらさらに大きく笑っていた。
「見られてるなんて全然気づかなかったな~。」などと話しながら、中城は切り出すタイミングを見ていた。
「行こうか。」
「はい。」
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