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第五章 自分自身の未来
第22話 珈琲 café (挿絵あり)
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僕は聞いたんだ。
「指輪は……贖罪?」
運転し前を向いたままレヴィ氏は答えた。
「たぶんね」
僕にとってのそれは、きっと剣を学ぶことなんだろうけど。
夏は暑くて長くて、秋はとても短かった。すぐに寒くなって、ある週末に雪虫も出た。ソノコが「これが……あの、伝説の……!」と言いながら両手の上に乗っけた。こんなもの毎年のことで珍しくもないのに。そう言ったら「これは、わたしの故郷では北国でしか見られない希少な虫なんです!」って。そういや、南方のマディア公爵領では発生しなかったかもね。
オリヴィエ兄さんとソノコの家は、昔ながらの蒸気暖房だ。中へ入ると、もわっとして、なんとなく足下が寒い。だからアシモフはソファの上を陣取ることを覚えたみたいだ。外遊びはよろこんでも、家の中にいるときはあったかい方がいいからね。散歩をさせに来たのに、気分じゃないのか呼んでも来ない。かえって僕が、しっぽをぱたりぱたりとさせて呼ばれ、いっしょのソファに座った。カミーユがミルクを交ぜたあったかい紅茶をくれた。
「こんなに急に寒くなるんですねー。体が着いて行けないです」
「そう? 父さんたちが帰るあたりから、けっこう寒かったじゃない」
「そうなんですけど。なんか寒さの質が違うっていうか」
僕はこのルミエラよりもさらに北東のグラス侯爵領で育ったから、寒いとは思うけどこんなもんかと思ってる。ソノコは雪がめったに降らない地域で育ったんだってさ。去年の冬はそこと似たような気候のレテソルっていう街で過ごすことが多かったから、この季節の変わり目ってやつをじっくり体験したことがなかったんだろう。
僕はなんとなく「雪が積もったら、もう釣りはできないのかな」とつぶやいた。ソノコが目を真ん丸にして「釣り? テオくん、釣りをするんですか? 意外」って言った。
「レヴィ先生と。父さんたち送ったあと。行ってきた」
「えっ、そんなおもしろイベントが⁉ 行きたかったー!」
ソノコはなんでも興味があるんだよね。ときどき「この世のすべてはネタですよ、ええ」とよくわかんないこと言ってる。それとおんなじノリで「どうでしたどうでした? どんな感じでした?」と聞いてくる。
「べつに。釣りそのものは……まあ、まあって感じ」
「釣れました?」
「大っきいの釣れた。美味しかったよ」
「えっ、いいなー」
ミルク入りの紅茶は、レヴィ氏の髪色を思わせた。僕はなんとなく、ソノコは知っているのか知りたくなった。レヴィ氏の指輪のことを。だけどめったなことは言えないなって思う。でも聞きたくて、もしかしたら僕が話したがってるのを察したのかもしれないけど、ソノコが「どんな話ししたんですか、レヴィ先生と?」と聞いてきた。
「べつに。とくに何か大事な話をしたわけじゃない。釣りって話さなくたってできるし」
うらはらに僕は言った。バカじゃないか僕。ソノコは気にしてない感じで「レヴィ先生って、不思議な人ですよねー」と言った。
「なんか、話してると、どんどん言葉を引き出されて行って。自分でも整理できていなかった気持ちとか、自分で言語化できるようにしてくれる。それってすごいなって」
よくわかって、僕はうなずいた。ソノコ自身、レヴィ氏の心理相談を受けていたから、それが身に沁みてわかってるんだろう。しみじみとした声で言う。
「――で、言語化できたことって、納得できるんですよね。すごいことだなって思います」
たぶん、レヴィ氏は、僕にも同じことをしてくれた。感情をオルガンで表現すること。そして次は、それに名前をつけること。それって、やっぱり彼自身が実践して来たことなのかな。そうやって平気な顔で話せるようになって、でも指輪はしたままで。
たとえば、僕がときどき、ブリアック兄さんのことを夢で見てしまうように。まるでそこにいるかのように見えてしまうように。それは、本当に心を揺さぶられることで。
レヴィ氏も、そんな体験をして来たのかな。今もかな。だから、指輪をしたままなのかな。レヴィ氏の鼻歌を思い出す。もう、僕も歌えるようになってしまった。
レヴィ氏色の紅茶の湯気は、やさしくて、だけど消えそうだった。レヴィ氏にそっくりだなって思った。
「テオくんにとっても、特別な人になったんですね、レヴィ先生」
ソノコがちょっと笑って、僕を見て言った。僕は「べつに」って言った。
アシモフが外へ行くことを拒否したから、僕はぶらぶらと、歩きながら寮へ帰ることにした。頭の中ではずっと、レヴィ氏の気持ちを考えている。彼が言語化してきた、彼自身の気持ちはどんなだったかを考えている。僕は未だ、クラヴァット・リボンを結べない。レヴィ氏はずっと、指輪をしている。僕たちはとても、傷ついている。
なんとなくだけど。通りがけにバス停があったから、やって来た蒸気バスに乗った。行き先とか決めてない。夕方までに帰ればいい。循環バスだったから、最悪そのままずっと乗っていたら元の場所へ戻るし。そう思って一人掛けの席に座って、ずっと窓の外の喧騒を見ていた。まだバスの中の蒸気ストーブは稼働していなくて、吐く息がずっと白い。
『――次は、コブタ通り前、コブタ通り前です。お降りの方は合図願います』
伝声管を使って、運転手が言った。なんか聞いたことある名前だなって思ったから、僕は壁に着いている小さい鐘を鳴らした。こんな風によく知らない場所を行ってみようなんて、これまでやったことなかった。
通りの入口には時計柱が建っていて、ああ、ここは前にレヴィ氏と来た通りだ、と気づいた。目を中へ向けると、見覚えのある街並みと、お店。迷わずに僕は茶色いひさしの古ぼけた喫茶店に入った。
「いらっしゃいませ――お一人ですか?」
蒸気暖房と、焙煎したカフェの香りがむわっと僕に襲いかかって来た。他にお客さんはいない。僕みたいな若いのが一人で来るなんてないんだろう。僕がうなずくと、奥の方を指し示されたから、なんとなく前に座った席へ座った。
「――モンブランを。それに、酸味が強いやつ」
「承知しました」
一杯ずつ落としてくれる店だから、ゆったりとした空気が流れている。なんとなく、僕はレヴィ氏がこの店を好んでいる理由が、わかる気がした。僕もまあ、嫌いじゃない。メニューとか眺めながらぼんやりしていた。こんな時間も悪くない。カフェとモンブランがそろって出てきて、僕はカップを口に運んだ。そしたら、お客さんが来た。
「……え。テオフィルくんじゃないの」
レヴィ氏が来た。完全に休日って感じの、メガネかけた姿。びっくりした声と顔で僕を見てる。なんとなく、僕は彼が来るって予感がしていたから、べつに驚かなかったけど。
「どうしたの、こんなところまで」
「なんとなく。バスに乗って、降りて。そしたらここに着きました」
「あらあ、うれしいわあ。僕の好きなお店、好きになってくれたのね?」
うれしそうにレヴィ氏は僕の隣りに座った。僕はカップを置いて、レヴィ氏を見て「ずっと、レヴィ先生のことを考えてました」と言った。レヴィ氏はちょっと止まって、それから真剣な顔で言った。
「ごめんね、テオくん。僕じつは、こんな口調だけど、恋愛対象は女性なの」
「そういう意味じゃないです」
「だと思った」
レヴィ氏は笑って、苦みの強いやつを頼んだ。
僕は、なんて話そうって考えた。
「レヴィ先生は、逃げ水って、見ますか」
カフェの香りが、僕たちを包んでいる。
「指輪は……贖罪?」
運転し前を向いたままレヴィ氏は答えた。
「たぶんね」
僕にとってのそれは、きっと剣を学ぶことなんだろうけど。
夏は暑くて長くて、秋はとても短かった。すぐに寒くなって、ある週末に雪虫も出た。ソノコが「これが……あの、伝説の……!」と言いながら両手の上に乗っけた。こんなもの毎年のことで珍しくもないのに。そう言ったら「これは、わたしの故郷では北国でしか見られない希少な虫なんです!」って。そういや、南方のマディア公爵領では発生しなかったかもね。
オリヴィエ兄さんとソノコの家は、昔ながらの蒸気暖房だ。中へ入ると、もわっとして、なんとなく足下が寒い。だからアシモフはソファの上を陣取ることを覚えたみたいだ。外遊びはよろこんでも、家の中にいるときはあったかい方がいいからね。散歩をさせに来たのに、気分じゃないのか呼んでも来ない。かえって僕が、しっぽをぱたりぱたりとさせて呼ばれ、いっしょのソファに座った。カミーユがミルクを交ぜたあったかい紅茶をくれた。
「こんなに急に寒くなるんですねー。体が着いて行けないです」
「そう? 父さんたちが帰るあたりから、けっこう寒かったじゃない」
「そうなんですけど。なんか寒さの質が違うっていうか」
僕はこのルミエラよりもさらに北東のグラス侯爵領で育ったから、寒いとは思うけどこんなもんかと思ってる。ソノコは雪がめったに降らない地域で育ったんだってさ。去年の冬はそこと似たような気候のレテソルっていう街で過ごすことが多かったから、この季節の変わり目ってやつをじっくり体験したことがなかったんだろう。
僕はなんとなく「雪が積もったら、もう釣りはできないのかな」とつぶやいた。ソノコが目を真ん丸にして「釣り? テオくん、釣りをするんですか? 意外」って言った。
「レヴィ先生と。父さんたち送ったあと。行ってきた」
「えっ、そんなおもしろイベントが⁉ 行きたかったー!」
ソノコはなんでも興味があるんだよね。ときどき「この世のすべてはネタですよ、ええ」とよくわかんないこと言ってる。それとおんなじノリで「どうでしたどうでした? どんな感じでした?」と聞いてくる。
「べつに。釣りそのものは……まあ、まあって感じ」
「釣れました?」
「大っきいの釣れた。美味しかったよ」
「えっ、いいなー」
ミルク入りの紅茶は、レヴィ氏の髪色を思わせた。僕はなんとなく、ソノコは知っているのか知りたくなった。レヴィ氏の指輪のことを。だけどめったなことは言えないなって思う。でも聞きたくて、もしかしたら僕が話したがってるのを察したのかもしれないけど、ソノコが「どんな話ししたんですか、レヴィ先生と?」と聞いてきた。
「べつに。とくに何か大事な話をしたわけじゃない。釣りって話さなくたってできるし」
うらはらに僕は言った。バカじゃないか僕。ソノコは気にしてない感じで「レヴィ先生って、不思議な人ですよねー」と言った。
「なんか、話してると、どんどん言葉を引き出されて行って。自分でも整理できていなかった気持ちとか、自分で言語化できるようにしてくれる。それってすごいなって」
よくわかって、僕はうなずいた。ソノコ自身、レヴィ氏の心理相談を受けていたから、それが身に沁みてわかってるんだろう。しみじみとした声で言う。
「――で、言語化できたことって、納得できるんですよね。すごいことだなって思います」
たぶん、レヴィ氏は、僕にも同じことをしてくれた。感情をオルガンで表現すること。そして次は、それに名前をつけること。それって、やっぱり彼自身が実践して来たことなのかな。そうやって平気な顔で話せるようになって、でも指輪はしたままで。
たとえば、僕がときどき、ブリアック兄さんのことを夢で見てしまうように。まるでそこにいるかのように見えてしまうように。それは、本当に心を揺さぶられることで。
レヴィ氏も、そんな体験をして来たのかな。今もかな。だから、指輪をしたままなのかな。レヴィ氏の鼻歌を思い出す。もう、僕も歌えるようになってしまった。
レヴィ氏色の紅茶の湯気は、やさしくて、だけど消えそうだった。レヴィ氏にそっくりだなって思った。
「テオくんにとっても、特別な人になったんですね、レヴィ先生」
ソノコがちょっと笑って、僕を見て言った。僕は「べつに」って言った。
アシモフが外へ行くことを拒否したから、僕はぶらぶらと、歩きながら寮へ帰ることにした。頭の中ではずっと、レヴィ氏の気持ちを考えている。彼が言語化してきた、彼自身の気持ちはどんなだったかを考えている。僕は未だ、クラヴァット・リボンを結べない。レヴィ氏はずっと、指輪をしている。僕たちはとても、傷ついている。
なんとなくだけど。通りがけにバス停があったから、やって来た蒸気バスに乗った。行き先とか決めてない。夕方までに帰ればいい。循環バスだったから、最悪そのままずっと乗っていたら元の場所へ戻るし。そう思って一人掛けの席に座って、ずっと窓の外の喧騒を見ていた。まだバスの中の蒸気ストーブは稼働していなくて、吐く息がずっと白い。
『――次は、コブタ通り前、コブタ通り前です。お降りの方は合図願います』
伝声管を使って、運転手が言った。なんか聞いたことある名前だなって思ったから、僕は壁に着いている小さい鐘を鳴らした。こんな風によく知らない場所を行ってみようなんて、これまでやったことなかった。
通りの入口には時計柱が建っていて、ああ、ここは前にレヴィ氏と来た通りだ、と気づいた。目を中へ向けると、見覚えのある街並みと、お店。迷わずに僕は茶色いひさしの古ぼけた喫茶店に入った。
「いらっしゃいませ――お一人ですか?」
蒸気暖房と、焙煎したカフェの香りがむわっと僕に襲いかかって来た。他にお客さんはいない。僕みたいな若いのが一人で来るなんてないんだろう。僕がうなずくと、奥の方を指し示されたから、なんとなく前に座った席へ座った。
「――モンブランを。それに、酸味が強いやつ」
「承知しました」
一杯ずつ落としてくれる店だから、ゆったりとした空気が流れている。なんとなく、僕はレヴィ氏がこの店を好んでいる理由が、わかる気がした。僕もまあ、嫌いじゃない。メニューとか眺めながらぼんやりしていた。こんな時間も悪くない。カフェとモンブランがそろって出てきて、僕はカップを口に運んだ。そしたら、お客さんが来た。
「……え。テオフィルくんじゃないの」
レヴィ氏が来た。完全に休日って感じの、メガネかけた姿。びっくりした声と顔で僕を見てる。なんとなく、僕は彼が来るって予感がしていたから、べつに驚かなかったけど。
「どうしたの、こんなところまで」
「なんとなく。バスに乗って、降りて。そしたらここに着きました」
「あらあ、うれしいわあ。僕の好きなお店、好きになってくれたのね?」
うれしそうにレヴィ氏は僕の隣りに座った。僕はカップを置いて、レヴィ氏を見て「ずっと、レヴィ先生のことを考えてました」と言った。レヴィ氏はちょっと止まって、それから真剣な顔で言った。
「ごめんね、テオくん。僕じつは、こんな口調だけど、恋愛対象は女性なの」
「そういう意味じゃないです」
「だと思った」
レヴィ氏は笑って、苦みの強いやつを頼んだ。
僕は、なんて話そうって考えた。
「レヴィ先生は、逃げ水って、見ますか」
カフェの香りが、僕たちを包んでいる。
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