【完結】喪女は、不幸系推しの笑顔が見たい ~よって、幸せシナリオに改変します! ※ただし、所持金はゼロで身分証なしスタートとする。~

つこさん。

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王都ルミエラ編

27話 かわいい小物とかほしいよね

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 週が変わって新しい現場、コブタ通りです! この前のアルシェ通りと違って住宅街ではなく、ちょっと小洒落た下町の目抜き通りって感じです! なんか行ってみたいお店たくさん! お給料入ったらね!

 トゥーサン・セールさんが椅子とカチカチとともに待っていてくださいました。今回のカチカチは4番です。よろしくな、カチカチ4!
 そして‼ オリヴィエ様の‼ ライブポスターも‼ 持ってきてくれました‼ 全財産差し出すところでした。
 新しい現場に入るときは現場責任者から直接指示をもらうのです。とってもにっこにこで迎えてくださいました。「いやあ、この前のコメント、よかったよー」と言ってくださいました。あめちゃんは三個もくださいました。ありがとうございます。

 帰宅時に椅子を預かっていただくお店にご挨拶してから業務につきます。アクセサリーとかの販売もしている女性向け雑貨店です。ちょう気になる。帰りに拝見しよう。
 家の近くに八百屋さんがなくて、果物まだ買えていません。もしかしなくても高価なのかもしれないです。たぶんこの通りにありそうですし、今日の昼は散策に決まり! うれしいー、こちらに来て初のちゃんとした観光かも。

 わたしの体格って一瞬子どもに見えるらしくて、カチカチしているとちょっとびっくりされます。お仕事用のつば広帽子をかぶっているんですけど、それで顔とか確認されて外国人ってバレる感じですね。前のアルシェ通りと比べて人通りが倍ちょっとくらいあるので、わりと必死にカチカチしていると声はかけられませんが、好奇の視線は感じます。なにせ必死なのでかまっていられませんけど。

 午前の早い時間と、昼近くが一番忙しかったです。わたしはまだ初心者なので、ジャン=マリー・シャリエさんみたいに無になって指だけカチカチとかできません。押すときどうしても手元を見てしまって。ちょっと目が疲れました。
 シャリエさんがちょっと早めに交代で来てくださいました。カチカチのコツを伺ってみたら、「無心になること」とおっしゃいました。まだまだわたしには邪念があるようです。がんばります。

 さて! どのお店行こう! わくわく。

 お昼休みは三時間あるので、一時間くらい見て回ってもよさそうですね。あっ、公衆浴場みっけ! 助かるー。これで朝に寄って慌てて現場急行しなくてもだいじょうぶ。それどころか毎日だって入れるけども、料金はいつものところと同じなんでしょうか? 浴場組合とかあるのかな? 料金表を見たら、やっぱりちょっとだけお高かったです。やっぱり隔日かなあ、がっかり。せっかくだから入って行こう。
 なんと! タオルの貸し出しサービスがある個人経営の浴場でした! それはまあ、お高いよね。持ち込んだらお安くなったり……はしませんでした。
 あー、でもわかります。すっごく手入れが行き届いてる。それに男性と女性の入り口が別。個別シャワー室なのは変わらないですけど、今まで通っていたところは入り口がいっしょでした。男女で同じところ使うってことですね。そういうものなのかなあってあんまり気にしないようにしていたんですけど、やっぱりこの方がいいなあ。なんとなく安心感が違います。
 時間制なのはいっしょでした。だいたい二十五分。延長もできますけど、日常の汚れを落とすだけなら十分です。そろそろじっくりあかすりしたいですけど。どこかに湯船つきの制限なし浴場ないかなあ。高いだろうなあ。

 さっぱりした! 濡れタオル持ち歩かなくていいのは楽ですね。やっぱり毎日入りたい欲が。欲が出てきました。おうちに帰ったら計算しよう。
 お昼は黄色のひさしがかわいいカフェに入りました。ミニ画廊もついているみたいです。眼鏡の茶髪ツインおさげのふんわりした女性が仕切っていらっしゃいました。なんだろう、この実家のような安心感。わたしの実家はヘヴィですけど。ここをキャンプ地とすると宣言したくなる。しませんけど。
 ランチプレートをたのみました。なんと! 食後にミニケーキとドリンクまでセットで550ラリ! お得! すてき!
 お客さんはまだ他にいらっしゃらなくて、待っている間入り口のところのギャラリーを見せていただきました。小物も置いています。かっわい。子犬がお昼寝している3センチくらいのガラス細工がありました。トートバッグに入れて歩いているモアイこけしみたいに勝手に動きそうじゃないです。販売もされているとのことですが、さすがに今の経済状況では800ラリは考えちゃうなあ……。
 入り口がカランコロンと言ったのでお客さんが来たようです。と思ったらアベルでした。なんだ。わたしと同じの頼むって店員さんに言ってやってきます。せまいって。

「おまえさー、前から思ってたけど、バッグ置いたまんま席離れるのやめろ」
「いーじゃないですか。他にお客さんいないし」
「いるときもするだろ」
「アベルさんが見ててくれるでしょ」

 思ったことを言ったらアベルは黙り込みました。勝った(?)。
 いつかこの画廊にある絵のひとつでも、買えるくらいに落ち着けばいいんですけどねえ。
 オムレツとミニグラタン、それにミニ山食(頭が丸くなってる食パンです。山形食パン。お店で焼いているんだそうです!)。おなかいっぱい! 食後のコーヒーを実にゆっくりいただいていたら、なんかアベルが会計してくれました。ゴチになります! 店員さんがなんかあわあわしてました。

「でさー、その、バッグから飛び出てるの、なに」

 席に戻ってきて、アベルが問います。よくぞ聞いてくれました‼ 取り出してわたしはそのスクロールを開いて見せます。

「オリヴィエ様の‼ ポスターです‼」

 無反応でした。解せぬ。

 早く来てくださったし、わたしもちょっと早めにシャリエさんのところに戻りました。交代して席に着くと、シャリエさんが「あれ? 彼氏さんは?」と聞いてきました。

「は? 彼氏さん? 誰のですか?」
「あなたの」
「――わたしに彼氏がいるんですか⁉」

 驚愕の事実です。干物ですが。ちょう干物ですが。デートっぽいことなんか高校時代にしたっきりですが。大学は女子大だし。卒業してすぐ群馬来たし。わたしの驚愕ぶりにシャリエさんは「ええ……」とドン引きされていました。

「はい、なんでしょう」

 どこからかまた現れてすごくいい笑顔で名乗り出たのはアベルです。ないわー。でもまあシャリエさんがご用だったのはアベルみたいなのでそちらに任せます。なにせ人通りめっちゃあるんですよ。必死。

 二人はちょっとの間わたしの後ろの方でなにか話していたようです。忙しくて気にしていられませんでしたけど。
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