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『三田園子』という人
182話 ここに来て出生の秘密とかはやめてくださいね
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「はじめましてー! 『本物』の滝沢ですー!」
「あっ、どうも」
「あっ、ばか、おまえどさくさに紛れて!」
子犬しぐさ一希さんに引き留められてお泊りしたわけなんですが。和室に布団を敷いて寝るの、鞍手町以来で懐かしかった。朝食も勇二さんが軽めに作ってくれました。元々一希さんは長期でザンビアに出向していたので、日持ちしない食材は昨日買ってきたものだけらしくて。「卵、もっとあったらオムレツできたんだけど」と言ってくれましたが。いえいえ、わたしはフライドエッグで十分です。はい。
ツーブロックにさらさら茶髪のスーツ男性がいらっしゃいまして。玄関先で勇二さんとなにか話し合っていたんですが、ふっと気づいたら隣にいました。はい。まつげ長っ! 本物の滝沢さん。はい。はじめまして。
「やめろ、園子に近寄んな! 用事済んだら帰れ!」
「ひっどーい! 僕の名前騙っておきながらそれはないんじゃないのォ⁉」
「うるさいうるさい、出てけ、出てけ!」
「大事な妹ちゃんは親友の僕にも紹介できないっていうワケ⁉」
一希さんは朝ごはん食べない朝風呂派とのことで、入浴中です。朝からにぎやかですね。らいんこうかんしよぉおおおおおという声がドップラー効果で遠ざかって行き、玄関ドアが閉められて施錠された音が聞こえました。はい。お疲れ様でした。ところで勇二さん、わたしのこと呼び捨てしてましたね。
「親友さんなんですね」
「……高校時代に寮で同室だっただけです。腐れ縁で」
大学もいっしょだったんだそうです。勇二さんは落としたコーヒーをカップに入れて、わたしへ手渡してくれました。それで今は秘書として雇用しているとか、仲良しこよしだと思うんですけど。
午前中は解散してそれぞれの用事を済ませます。わたしはマンションへ戻って、荷解きをしながら今後のことを考えました。もう、そろそろわたしは問題としっかり向き合わなければならない。そうわかっていたから。
加西くんのことも、ちゃんと考えなければ。わたしの中に、彼に惹かれる気持ちはあるかとか。と思いましたが考える間もなくなかったです。だって、わたし、加西くんのことぜんぜん知らないもん。どうしてずっと交流がなかったわたしを、あんな風に好きだって言えるのか、わたしにはそれが不思議だった。……それは、一希さんと勇二さんにも言えることだけれど。
二人は、どうしてわたしによくしてくれるんだろう。後悔。まあ、そうなんだと思う。じゃあ今は、それも解消されただろうか。ごはん食べて、NARUTO観て、一般的に兄妹って言っても遜色ないくらいの関係になったのではないだろうか。二人の懸念事項がクリアされていればいいな、と思います。わたしはべつに彼らを憎んでいるわけではないから。
憎む? ……わたしはだれかを憎んでいるのだろうか。考えてみたけれど、そこまでの激しい感情は、わたしの中にはありませんでした。
もしそんな気持ちがあるとしたら、わたしは『王杯』に選ばれなかったんじゃないかな。ふと、そんな風に感じました。大きい気持ちは、執着でもあるから。
そこまで考えたら、ふいにオリヴィエ様の顔が思い浮かびました。そのことにわたしは驚いて、部屋の中でひとり「ぎゃああああああああああああああああああ」とじたばたしました。恐れ、多い! わたしの執着が、オリヴィエ様とか!!!!!!!!
加西くんのことで、「場を設けたから」と一希さんから連絡がありました。指定された時間は十五時でしたが、早めに出てちょっと遅めのランチを食べました。服は、あわてて掘り出したリクルートスーツです。シャツは一希さんに買ってもらったもの。日本のパンスト穿いたのひさしぶりすぎる。なんだこのベストフィット感。
まあ、どうしてそんな格好をしたかと言うと。……場所が三田の本社ビルだったからなんですけど。バッグもさすがに、昔買ったそれっぽい黒いカバンに変えました。やっぱ家に置いておくと不安なのでモアイこけしも入れ替えます。なんか動き回られそうだし。
結果。……そうしてよかったです。ビル前で「え、まじでここ……?」とビビりながら挙動不審してもちょっとは目立たなかった。ちょっとは。
ドラマとかでよく見る、社員証でピッとして入っていくビルです。すごい。ハイテク。出入り激しい。わたしは受付のお姉さんが三人並んでいるカウンターへ若干よろよろしながら近づいて、「あの、三田専務に呼ばれて来たんですけど……」と言いました。名前を聞かれたので「三田です」と答えたら、三人ともフリーズしました。
「……はいっ! 少々お待ち下さい!」
真ん中の女性が内線電話をしてくれました。他の二人は直立不動。「……三田常務がこちらにみえるそうです。少々お待ちいただけますか?」とすごくキレイな笑顔で言われます。はい。常務は勇二さんですね。普段あんな風にこき使われてますけど、偉い人なんですよ、彼は。
「――あの。……園子ちゃん?」
手持ち無沙汰していたら、おずおずと左側の受付女性から声をかけられました。わたしだけでなく他の二人の女性からも視線が集中しました。わたしは「はい、園子です」と答えました。すると女性はほっとしたような、ちょっと困ったような、絶妙な表情で「あの。おひさしぶりです。覚えてないかもしれないけれど。中村千尋です」とおっしゃいました。えっ。
「えーっ⁉ ちーちゃん⁉」
「はい、そうです」
「なっつかし! なっつかし!」
「覚えてくれていて、うれしい」
「忘れるわけないじゃん、どんだけお世話になったか!」
小学校低学年のときに、よくいっしょに遊んでいた千尋ちゃんです。うわー。うわー。すんごい美人さんになっちゃって。「いつからこの会社に?」「新卒のときから、ずっと」「元気だったー?」「もちろん!」カウンター越しでそんなやり取りをしました。わたしが実感を込めて「懐かしいねえ」と言うと、千尋ちゃんはにっこり笑って、「どうしてるかなって、ずっと思ってた。元気そうでうれしい」と言ってくれました。
「ありがとう。おばさんはどうしてる?」
「元気だよー。ちょっと関節炎がしんどいって言ってるけど」
「うわー、そうなんだ。それってなにがいいのかな。温湿布?」
「どうだろう、お薬処方されてるから、痛み止め飲んでるんじゃないかな」
そうかー、じゃあ勝手に温湿布贈ったりできないか。ちーちゃんママには大変大きなご恩があるので、わたしは「よろしく伝えてねー。園子がすごく感謝してたって伝えて」と言いました。
「感謝? うちの母さんに?」
「うん。いっつも美味しいシフォンケーキ作ってくれた。わたし、あれ大好きだった」
実感を込めて言うと、千尋ちゃんははっとしたような顔をしました。わたしにとって、小田原での少ない大切な思い出です。
そんな話をしていたら、千尋ちゃんもすっと受付嬢の顔に戻って三人で一糸乱れぬお辞儀をしました。ので、振り向いたら勇二さんがいました。こういうのってだれか他の人を迎えにやったりしないものなんでしょうか。威厳が損なわれるよ、勇二さん。
なんだか来客用のパスを発行してくださったみたいで、右側の受付さんがわたしに首さげのカードをくださいました。ありがとうございます。勇二さんに続いてピッ。かっこいい。なんかデキる人って感じ。というか、六割増しくらいで勇二さんがデキる人に見える。歩いているとみんな道を譲ってくれるだけでなくて頭を下げてくるし、勇二さんはそれを一顧だにせずサクサク進んで行くんですよね。おおお……なんか、初めてかっこいいって思ったぞ。やればデキる系男子か、そうなのか勇二さん。
連れて行かれたのは七階のなんか横文字の名前がついているお部屋でした。読めませんでした。中は就活会場、もとい圧迫面接仕様になっていました。はい。一希さんと、あと知らない男性がテーブルに並んで着いています。それと滝沢さん。は、手を振ってくれたのでおじぎをしました。一希さんのガチお仕事モード服は初めて見ました。もう大物オーラすごい。これは怖い。わたしは勇二さんに促されて、一希さんの隣に座ります。はい。対面した加西くんが、命乞いの眼差しでわたしを見ました。はい。
「んーと。加西くん、こんにちは。何時ごろこちらに着いたの?」
「昼に、東京に着いて……面接は、十四時から。……です」
「えっ⁉」
わたしは十五時と聞いたのですが。じーっと一希さんを見ると「ちょっとお話ししたかっただけだよ」とにーっこりされました。というか、手元に資料とかあってマジもんの面接っぽくなってるんですけど。ちょっとやり過ぎじゃないですかね、それ。
「なんで加西くんをいじめてるんですか」
「まさか、親交を温める方法を探っていただけだよ。お互いにね。ね?」
最後の「ね?」は圧力を持って加西くんに投げられました。加西くんは「はいっ!」と背筋を伸ばしていいお返事でした。とりあえずこの場から逃してあげたかったので、「もう、温まりましたよね? 解散ってことでいいです?」と言ってみました。
「そうだね……解散で。このあと二人はデートかい?」
「デートかどうかはわかりませんが。加西くん、どうする? ちょっと晩ごはんには早いけど。わざわざ来てくれてありがとう。今日はわたしがなんかおごるね」
「いっ、いえ!」
わたしの言葉に加西くんは声をあげて「園子さんのお時間をいただくわけには行きませんので! ホテルに直帰します!」と言いました。まじか。どんだけしぼられたの。わたしがもう一度一希さんをじーっと見ると、白々しく「そんなに怖がらせたつもりはないんだけどなあ」と言いました。
「わかった、ごめんね、なんか。あとでメッセするね」
「はい!」
退室を許可された加西くんは、風のように去って行きました。ごめん。なんかほんとごめん。わたしは一希さんと勇二さんを詰めましたが、二人とも「ちょっとお話ししただけです」「いやあ、好青年だったね!」とはぐらかすだけでした。この確信犯ズめ。
ちなみに知らない男性は、わたしの叔父さんなんだそうです。「三田篤です」と自己紹介されました。はじめまして? ああ、たしかに、勇二さんに目元が似ているかもしれない。なんで加西くんいじめに加担しているんでしょうか。
「こんなに大きくなっているなんてねえ! びっくりだよ」
ということは、小さいころに会っているんですね。ちょっとよくわかりません。わたしが戸惑っていたのがわかったのか、篤おじさんは「君はね、生まれてからしばらく、うちで預かっていたんだよ」と言われました。なにそれ知らない。衝撃の新事実。
「あっ、どうも」
「あっ、ばか、おまえどさくさに紛れて!」
子犬しぐさ一希さんに引き留められてお泊りしたわけなんですが。和室に布団を敷いて寝るの、鞍手町以来で懐かしかった。朝食も勇二さんが軽めに作ってくれました。元々一希さんは長期でザンビアに出向していたので、日持ちしない食材は昨日買ってきたものだけらしくて。「卵、もっとあったらオムレツできたんだけど」と言ってくれましたが。いえいえ、わたしはフライドエッグで十分です。はい。
ツーブロックにさらさら茶髪のスーツ男性がいらっしゃいまして。玄関先で勇二さんとなにか話し合っていたんですが、ふっと気づいたら隣にいました。はい。まつげ長っ! 本物の滝沢さん。はい。はじめまして。
「やめろ、園子に近寄んな! 用事済んだら帰れ!」
「ひっどーい! 僕の名前騙っておきながらそれはないんじゃないのォ⁉」
「うるさいうるさい、出てけ、出てけ!」
「大事な妹ちゃんは親友の僕にも紹介できないっていうワケ⁉」
一希さんは朝ごはん食べない朝風呂派とのことで、入浴中です。朝からにぎやかですね。らいんこうかんしよぉおおおおおという声がドップラー効果で遠ざかって行き、玄関ドアが閉められて施錠された音が聞こえました。はい。お疲れ様でした。ところで勇二さん、わたしのこと呼び捨てしてましたね。
「親友さんなんですね」
「……高校時代に寮で同室だっただけです。腐れ縁で」
大学もいっしょだったんだそうです。勇二さんは落としたコーヒーをカップに入れて、わたしへ手渡してくれました。それで今は秘書として雇用しているとか、仲良しこよしだと思うんですけど。
午前中は解散してそれぞれの用事を済ませます。わたしはマンションへ戻って、荷解きをしながら今後のことを考えました。もう、そろそろわたしは問題としっかり向き合わなければならない。そうわかっていたから。
加西くんのことも、ちゃんと考えなければ。わたしの中に、彼に惹かれる気持ちはあるかとか。と思いましたが考える間もなくなかったです。だって、わたし、加西くんのことぜんぜん知らないもん。どうしてずっと交流がなかったわたしを、あんな風に好きだって言えるのか、わたしにはそれが不思議だった。……それは、一希さんと勇二さんにも言えることだけれど。
二人は、どうしてわたしによくしてくれるんだろう。後悔。まあ、そうなんだと思う。じゃあ今は、それも解消されただろうか。ごはん食べて、NARUTO観て、一般的に兄妹って言っても遜色ないくらいの関係になったのではないだろうか。二人の懸念事項がクリアされていればいいな、と思います。わたしはべつに彼らを憎んでいるわけではないから。
憎む? ……わたしはだれかを憎んでいるのだろうか。考えてみたけれど、そこまでの激しい感情は、わたしの中にはありませんでした。
もしそんな気持ちがあるとしたら、わたしは『王杯』に選ばれなかったんじゃないかな。ふと、そんな風に感じました。大きい気持ちは、執着でもあるから。
そこまで考えたら、ふいにオリヴィエ様の顔が思い浮かびました。そのことにわたしは驚いて、部屋の中でひとり「ぎゃああああああああああああああああああ」とじたばたしました。恐れ、多い! わたしの執着が、オリヴィエ様とか!!!!!!!!
加西くんのことで、「場を設けたから」と一希さんから連絡がありました。指定された時間は十五時でしたが、早めに出てちょっと遅めのランチを食べました。服は、あわてて掘り出したリクルートスーツです。シャツは一希さんに買ってもらったもの。日本のパンスト穿いたのひさしぶりすぎる。なんだこのベストフィット感。
まあ、どうしてそんな格好をしたかと言うと。……場所が三田の本社ビルだったからなんですけど。バッグもさすがに、昔買ったそれっぽい黒いカバンに変えました。やっぱ家に置いておくと不安なのでモアイこけしも入れ替えます。なんか動き回られそうだし。
結果。……そうしてよかったです。ビル前で「え、まじでここ……?」とビビりながら挙動不審してもちょっとは目立たなかった。ちょっとは。
ドラマとかでよく見る、社員証でピッとして入っていくビルです。すごい。ハイテク。出入り激しい。わたしは受付のお姉さんが三人並んでいるカウンターへ若干よろよろしながら近づいて、「あの、三田専務に呼ばれて来たんですけど……」と言いました。名前を聞かれたので「三田です」と答えたら、三人ともフリーズしました。
「……はいっ! 少々お待ち下さい!」
真ん中の女性が内線電話をしてくれました。他の二人は直立不動。「……三田常務がこちらにみえるそうです。少々お待ちいただけますか?」とすごくキレイな笑顔で言われます。はい。常務は勇二さんですね。普段あんな風にこき使われてますけど、偉い人なんですよ、彼は。
「――あの。……園子ちゃん?」
手持ち無沙汰していたら、おずおずと左側の受付女性から声をかけられました。わたしだけでなく他の二人の女性からも視線が集中しました。わたしは「はい、園子です」と答えました。すると女性はほっとしたような、ちょっと困ったような、絶妙な表情で「あの。おひさしぶりです。覚えてないかもしれないけれど。中村千尋です」とおっしゃいました。えっ。
「えーっ⁉ ちーちゃん⁉」
「はい、そうです」
「なっつかし! なっつかし!」
「覚えてくれていて、うれしい」
「忘れるわけないじゃん、どんだけお世話になったか!」
小学校低学年のときに、よくいっしょに遊んでいた千尋ちゃんです。うわー。うわー。すんごい美人さんになっちゃって。「いつからこの会社に?」「新卒のときから、ずっと」「元気だったー?」「もちろん!」カウンター越しでそんなやり取りをしました。わたしが実感を込めて「懐かしいねえ」と言うと、千尋ちゃんはにっこり笑って、「どうしてるかなって、ずっと思ってた。元気そうでうれしい」と言ってくれました。
「ありがとう。おばさんはどうしてる?」
「元気だよー。ちょっと関節炎がしんどいって言ってるけど」
「うわー、そうなんだ。それってなにがいいのかな。温湿布?」
「どうだろう、お薬処方されてるから、痛み止め飲んでるんじゃないかな」
そうかー、じゃあ勝手に温湿布贈ったりできないか。ちーちゃんママには大変大きなご恩があるので、わたしは「よろしく伝えてねー。園子がすごく感謝してたって伝えて」と言いました。
「感謝? うちの母さんに?」
「うん。いっつも美味しいシフォンケーキ作ってくれた。わたし、あれ大好きだった」
実感を込めて言うと、千尋ちゃんははっとしたような顔をしました。わたしにとって、小田原での少ない大切な思い出です。
そんな話をしていたら、千尋ちゃんもすっと受付嬢の顔に戻って三人で一糸乱れぬお辞儀をしました。ので、振り向いたら勇二さんがいました。こういうのってだれか他の人を迎えにやったりしないものなんでしょうか。威厳が損なわれるよ、勇二さん。
なんだか来客用のパスを発行してくださったみたいで、右側の受付さんがわたしに首さげのカードをくださいました。ありがとうございます。勇二さんに続いてピッ。かっこいい。なんかデキる人って感じ。というか、六割増しくらいで勇二さんがデキる人に見える。歩いているとみんな道を譲ってくれるだけでなくて頭を下げてくるし、勇二さんはそれを一顧だにせずサクサク進んで行くんですよね。おおお……なんか、初めてかっこいいって思ったぞ。やればデキる系男子か、そうなのか勇二さん。
連れて行かれたのは七階のなんか横文字の名前がついているお部屋でした。読めませんでした。中は就活会場、もとい圧迫面接仕様になっていました。はい。一希さんと、あと知らない男性がテーブルに並んで着いています。それと滝沢さん。は、手を振ってくれたのでおじぎをしました。一希さんのガチお仕事モード服は初めて見ました。もう大物オーラすごい。これは怖い。わたしは勇二さんに促されて、一希さんの隣に座ります。はい。対面した加西くんが、命乞いの眼差しでわたしを見ました。はい。
「んーと。加西くん、こんにちは。何時ごろこちらに着いたの?」
「昼に、東京に着いて……面接は、十四時から。……です」
「えっ⁉」
わたしは十五時と聞いたのですが。じーっと一希さんを見ると「ちょっとお話ししたかっただけだよ」とにーっこりされました。というか、手元に資料とかあってマジもんの面接っぽくなってるんですけど。ちょっとやり過ぎじゃないですかね、それ。
「なんで加西くんをいじめてるんですか」
「まさか、親交を温める方法を探っていただけだよ。お互いにね。ね?」
最後の「ね?」は圧力を持って加西くんに投げられました。加西くんは「はいっ!」と背筋を伸ばしていいお返事でした。とりあえずこの場から逃してあげたかったので、「もう、温まりましたよね? 解散ってことでいいです?」と言ってみました。
「そうだね……解散で。このあと二人はデートかい?」
「デートかどうかはわかりませんが。加西くん、どうする? ちょっと晩ごはんには早いけど。わざわざ来てくれてありがとう。今日はわたしがなんかおごるね」
「いっ、いえ!」
わたしの言葉に加西くんは声をあげて「園子さんのお時間をいただくわけには行きませんので! ホテルに直帰します!」と言いました。まじか。どんだけしぼられたの。わたしがもう一度一希さんをじーっと見ると、白々しく「そんなに怖がらせたつもりはないんだけどなあ」と言いました。
「わかった、ごめんね、なんか。あとでメッセするね」
「はい!」
退室を許可された加西くんは、風のように去って行きました。ごめん。なんかほんとごめん。わたしは一希さんと勇二さんを詰めましたが、二人とも「ちょっとお話ししただけです」「いやあ、好青年だったね!」とはぐらかすだけでした。この確信犯ズめ。
ちなみに知らない男性は、わたしの叔父さんなんだそうです。「三田篤です」と自己紹介されました。はじめまして? ああ、たしかに、勇二さんに目元が似ているかもしれない。なんで加西くんいじめに加担しているんでしょうか。
「こんなに大きくなっているなんてねえ! びっくりだよ」
ということは、小さいころに会っているんですね。ちょっとよくわかりません。わたしが戸惑っていたのがわかったのか、篤おじさんは「君はね、生まれてからしばらく、うちで預かっていたんだよ」と言われました。なにそれ知らない。衝撃の新事実。
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