20 / 39
20
しおりを挟む
サージェント様が食事を運ばせ始めました。食事をしながら、マリーゴールド様はお母様の話をたくさん聞かせてくれました。
「カトレアはあの綺麗な顔でお淑やかな雰囲気だったから、それはもうクラスの男子にも人気だったわ。貴女もカトレアに似て本当に美人になったわね」
お母様の思い出を大切にしてくれているマリーゴールド様を私は大好きになりました。私の知らないお母様の話を聞いていると、お母様を思い出して少し涙ぐんでしまいました。そんな私を見ながらマリーゴールド様は微笑んでいます。
「フリージアはとてもいい子ね。そうだわ、ルピナスのお嫁さんにどうかしら。融通が効かないけど真っ直ぐな良い子なのよ。叔父様、あの子は特に意中の相手はいないわよね?」
「私の知る範囲ではいない。そうだな、マトリカリアの聖女を娶るのも殿下のお力になるかもしれぬな」
マリーゴールド様のリップサービスに一瞬顔が熱くなりましたが、サージェント様の言葉ですぐに冷静になりました。相手は天上人ですからあまり間に受けない方が良さそうです。ルピナス様はとても素敵な方だとは思いますけど。
横にいるライラックさんを見ると、その間も彼は黙々と食事をしています。相手の地位を考えると自分から話に混ざれるわけもないので、非常に申し訳なくなりました。
食事が終わるとサージェント様が人払いをして、これからどうするかの話になりました。
予定通り、ライラックさんが賓客としてルピナス様と謁見します。私はその間にマリーゴールド様の馬車で王宮に向かい、国王陛下の部屋でルピナス様と合流する手筈らしいです。
それからすぐに王宮に向かうことになりました。ライラックさんが注目を集めるために一足先に王宮に向かうので、私とライラックさんとは別々の馬車に乗り込みます。
「ライラックさん、気をつけてくださいね」
「それは私の台詞だ。たまに君は注意力散漫になるから、充分に気をつけなさい」
弟子になってからは、ライラックさんも私の扱いが少しぞんざいになりました。心を許してもらっているような気がするので、嫌な気持ちにはなりませんけど。
そんな私達をマリーゴールド様はじっと見ていました。
ルピナス様から私の話を聞いたマリーゴールド様は今回の計画に随分と乗り気で、馬車の中で意気込みを語ってくれました。
「私ね、カトレアを弄んだあの男だけはどうしても許せませんの。陛下やルピナス様がもし手心を加えようとしたら、私の名にかけてあの男を八つ裂きにして差し上げますわ」
あの男とは間違いなく私のお父様です。ガーベラが生まれることになった不貞行為の話をしているのだと思います。当然私も許せることではないと思っています。
「ごめんなさいね、貴女のお父様なのに酷いことを言って。でもあれだけ周囲の反対を押し切って結婚したのに、それはしてはいけないと思うの。私も知らないことだったけど、カトレアが知らなかったのが不憫すぎてならないわ」
マリーゴールド様の話だと、お父様は別の伯爵家の出身ですが、マトリカリア伯爵家の本来の婿の条件である「魔力容量の多い男性」の要件を全く満たしていなかったらしく、魔法学校にも通わなかったそうです。
衛生兵団で一緒に仕事をするようになってから知り合ったらしく、お父様はお母様に猛アタックをかけて、お母様がそれを受け入れたようです。まあその辺りの親の馴れ初めはあまり聞きたい話ではないのですけど。
私のマトリカリアのお婆様は早くに亡くなっていたのですが、お爺様がそれはそれは強く反対されたらしくて、そこを押し切ったようです。お父様の実家とも相当険悪になったらしく、私もそちらとは交流はありませんでした。そして、そのお爺様も私が小さい頃に亡くなっています。
そう聞くと、お母様も大概適当な感じがするのですが、あまり深く考えるのはやめておきましょう。
「私もあの家には愛想が尽きているので、お気になさらないでください。お母様のために気を遣っていただいてありがとうございます」
いよいよ王宮に入ると、マリーゴールド様の馬車は正門を通り過ぎて、王族の居住区がある通用口の前で停車しました。マリーゴールド様はここからよくお忍びで出かけるそうです。
「其方は王妃になって随分経つのにまだこんなことをしているのか」
サージェント様が呆れたように言うと、マリーゴールド様はてへぺろという顔をしています。
「誰にも会わないとよろしいのですけど」
マリーゴールド様は心配そうにしています。王族の居住区は当然王族以外は入れません。サージェント様でも怪しい感じですが心配して付いてきてくれたのでしょう。私もハイペリカム関係者とでも言わないと摘み出されそうです。
「カトレアはあの綺麗な顔でお淑やかな雰囲気だったから、それはもうクラスの男子にも人気だったわ。貴女もカトレアに似て本当に美人になったわね」
お母様の思い出を大切にしてくれているマリーゴールド様を私は大好きになりました。私の知らないお母様の話を聞いていると、お母様を思い出して少し涙ぐんでしまいました。そんな私を見ながらマリーゴールド様は微笑んでいます。
「フリージアはとてもいい子ね。そうだわ、ルピナスのお嫁さんにどうかしら。融通が効かないけど真っ直ぐな良い子なのよ。叔父様、あの子は特に意中の相手はいないわよね?」
「私の知る範囲ではいない。そうだな、マトリカリアの聖女を娶るのも殿下のお力になるかもしれぬな」
マリーゴールド様のリップサービスに一瞬顔が熱くなりましたが、サージェント様の言葉ですぐに冷静になりました。相手は天上人ですからあまり間に受けない方が良さそうです。ルピナス様はとても素敵な方だとは思いますけど。
横にいるライラックさんを見ると、その間も彼は黙々と食事をしています。相手の地位を考えると自分から話に混ざれるわけもないので、非常に申し訳なくなりました。
食事が終わるとサージェント様が人払いをして、これからどうするかの話になりました。
予定通り、ライラックさんが賓客としてルピナス様と謁見します。私はその間にマリーゴールド様の馬車で王宮に向かい、国王陛下の部屋でルピナス様と合流する手筈らしいです。
それからすぐに王宮に向かうことになりました。ライラックさんが注目を集めるために一足先に王宮に向かうので、私とライラックさんとは別々の馬車に乗り込みます。
「ライラックさん、気をつけてくださいね」
「それは私の台詞だ。たまに君は注意力散漫になるから、充分に気をつけなさい」
弟子になってからは、ライラックさんも私の扱いが少しぞんざいになりました。心を許してもらっているような気がするので、嫌な気持ちにはなりませんけど。
そんな私達をマリーゴールド様はじっと見ていました。
ルピナス様から私の話を聞いたマリーゴールド様は今回の計画に随分と乗り気で、馬車の中で意気込みを語ってくれました。
「私ね、カトレアを弄んだあの男だけはどうしても許せませんの。陛下やルピナス様がもし手心を加えようとしたら、私の名にかけてあの男を八つ裂きにして差し上げますわ」
あの男とは間違いなく私のお父様です。ガーベラが生まれることになった不貞行為の話をしているのだと思います。当然私も許せることではないと思っています。
「ごめんなさいね、貴女のお父様なのに酷いことを言って。でもあれだけ周囲の反対を押し切って結婚したのに、それはしてはいけないと思うの。私も知らないことだったけど、カトレアが知らなかったのが不憫すぎてならないわ」
マリーゴールド様の話だと、お父様は別の伯爵家の出身ですが、マトリカリア伯爵家の本来の婿の条件である「魔力容量の多い男性」の要件を全く満たしていなかったらしく、魔法学校にも通わなかったそうです。
衛生兵団で一緒に仕事をするようになってから知り合ったらしく、お父様はお母様に猛アタックをかけて、お母様がそれを受け入れたようです。まあその辺りの親の馴れ初めはあまり聞きたい話ではないのですけど。
私のマトリカリアのお婆様は早くに亡くなっていたのですが、お爺様がそれはそれは強く反対されたらしくて、そこを押し切ったようです。お父様の実家とも相当険悪になったらしく、私もそちらとは交流はありませんでした。そして、そのお爺様も私が小さい頃に亡くなっています。
そう聞くと、お母様も大概適当な感じがするのですが、あまり深く考えるのはやめておきましょう。
「私もあの家には愛想が尽きているので、お気になさらないでください。お母様のために気を遣っていただいてありがとうございます」
いよいよ王宮に入ると、マリーゴールド様の馬車は正門を通り過ぎて、王族の居住区がある通用口の前で停車しました。マリーゴールド様はここからよくお忍びで出かけるそうです。
「其方は王妃になって随分経つのにまだこんなことをしているのか」
サージェント様が呆れたように言うと、マリーゴールド様はてへぺろという顔をしています。
「誰にも会わないとよろしいのですけど」
マリーゴールド様は心配そうにしています。王族の居住区は当然王族以外は入れません。サージェント様でも怪しい感じですが心配して付いてきてくれたのでしょう。私もハイペリカム関係者とでも言わないと摘み出されそうです。
14
あなたにおすすめの小説
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
辺境に追放されたガリガリ令嬢ですが、助けた男が第三王子だったので人生逆転しました。~実家は危機ですが、助ける義理もありません~
香木陽灯
恋愛
「そんなに気に食わないなら、お前がこの家を出ていけ!」
実の父と妹に虐げられ、着の身着のままで辺境のボロ家に追放された伯爵令嬢カタリーナ。食べるものもなく、泥水のようなスープですすり、ガリガリに痩せ細った彼女が庭で拾ったのは、金色の瞳を持つ美しい男・ギルだった。
「……見知らぬ人間を招き入れるなんて、馬鹿なのか?」
「一人で食べるのは味気ないわ。手当てのお礼に一緒に食べてくれると嬉しいんだけど」
二人の奇妙な共同生活が始まる。ギルが獲ってくる肉を食べ、共に笑い、カタリーナは本来の瑞々しい美しさを取り戻していく。しかしカタリーナは知らなかった。彼が王位継承争いから身を隠していた最強の第三王子であることを――。
※ふんわり設定です。
※他サイトにも掲載中です。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~
白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。
王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。
彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。
#表紙絵は、もふ様に描いていただきました。
#エブリスタにて連載しました。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
「婚約破棄された聖女ですが、実は最強の『呪い解き』能力者でした〜追放された先で王太子が土下座してきました〜
鷹 綾
恋愛
公爵令嬢アリシア・ルナミアは、幼い頃から「癒しの聖女」として育てられ、オルティア王国の王太子ヴァレンティンの婚約者でした。
しかし、王太子は平民出身の才女フィオナを「真の聖女」と勘違いし、アリシアを「偽りの聖女」「無能」と罵倒して公衆の面前で婚約破棄。
王命により、彼女は辺境の荒廃したルミナス領へ追放されてしまいます。
絶望の淵で、アリシアは静かに真実を思い出す。
彼女の本当の能力は「呪い解き」——呪いを吸い取り、無効化する最強の力だったのです。
誰も信じてくれなかったその力を、追放された土地で発揮し始めます。
荒廃した領地を次々と浄化し、領民から「本物の聖女」として慕われるようになるアリシア。
一方、王都ではフィオナの「癒し」が効かず、魔物被害が急増。
王太子ヴァレンティンは、ついに自分の誤りを悟り、土下座して助けを求めにやってきます。
しかし、アリシアは冷たく拒否。
「私はもう、あなたの聖女ではありません」
そんな中、隣国レイヴン帝国の冷徹皇太子シルヴァン・レイヴンが現れ、幼馴染としてアリシアを激しく溺愛。
「俺がお前を守る。永遠に離さない」
勘違い王子の土下座、偽聖女の末路、国民の暴動……
追放された聖女が逆転し、究極の溺愛を得る、痛快スカッと恋愛ファンタジー!
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
地味で無能な聖女だと婚約破棄されました。でも本当は【超過浄化】スキル持ちだったので、辺境で騎士団長様と幸せになります。ざまぁはこれからです。
黒崎隼人
ファンタジー
聖女なのに力が弱い「偽物」と蔑まれ、婚約者の王子と妹に裏切られ、死の土地である「瘴気の辺境」へ追放されたリナ。しかし、そこで彼女の【浄化】スキルが、あらゆる穢れを消し去る伝説級の【超過浄化】だったことが判明する! その奇跡を隣国の最強騎士団長カイルに見出されたリナは、彼の溺愛に戸惑いながらも、荒れ地を楽園へと変えていく。一方、リナを捨てた王国は瘴気に沈み崩壊寸前。今さら元婚約者が土下座しに来ても、もう遅い! 不遇だった少女が本当の愛と居場所を見つける、爽快な逆転ラブファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる