伯爵令嬢は身の危険を感じるので家を出ます 〜伯爵家は乗っ取られそうですが、本当に私がいなくて大丈夫ですか?〜

超高校級の小説家

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サージェント様が食事を運ばせ始めました。食事をしながら、マリーゴールド様はお母様の話をたくさん聞かせてくれました。

「カトレアはあの綺麗な顔でお淑やかな雰囲気だったから、それはもうクラスの男子にも人気だったわ。貴女もカトレアに似て本当に美人になったわね」

お母様の思い出を大切にしてくれているマリーゴールド様を私は大好きになりました。私の知らないお母様の話を聞いていると、お母様を思い出して少し涙ぐんでしまいました。そんな私を見ながらマリーゴールド様は微笑んでいます。

「フリージアはとてもいい子ね。そうだわ、ルピナスのお嫁さんにどうかしら。融通が効かないけど真っ直ぐな良い子なのよ。叔父様、あの子は特に意中の相手はいないわよね?」

「私の知る範囲ではいない。そうだな、マトリカリアの聖女を娶るのも殿下のお力になるかもしれぬな」

マリーゴールド様のリップサービスに一瞬顔が熱くなりましたが、サージェント様の言葉ですぐに冷静になりました。相手は天上人ですからあまり間に受けない方が良さそうです。ルピナス様はとても素敵な方だとは思いますけど。

横にいるライラックさんを見ると、その間も彼は黙々と食事をしています。相手の地位を考えると自分から話に混ざれるわけもないので、非常に申し訳なくなりました。

食事が終わるとサージェント様が人払いをして、これからどうするかの話になりました。

予定通り、ライラックさんが賓客としてルピナス様と謁見します。私はその間にマリーゴールド様の馬車で王宮に向かい、国王陛下の部屋でルピナス様と合流する手筈らしいです。

それからすぐに王宮に向かうことになりました。ライラックさんが注目を集めるために一足先に王宮に向かうので、私とライラックさんとは別々の馬車に乗り込みます。

「ライラックさん、気をつけてくださいね」

「それは私の台詞だ。たまに君は注意力散漫になるから、充分に気をつけなさい」

弟子になってからは、ライラックさんも私の扱いが少しぞんざいになりました。心を許してもらっているような気がするので、嫌な気持ちにはなりませんけど。
そんな私達をマリーゴールド様はじっと見ていました。

ルピナス様から私の話を聞いたマリーゴールド様は今回の計画に随分と乗り気で、馬車の中で意気込みを語ってくれました。

「私ね、カトレアを弄んだあの男だけはどうしても許せませんの。陛下やルピナス様がもし手心を加えようとしたら、私の名にかけてあの男を八つ裂きにして差し上げますわ」

あの男とは間違いなく私のお父様です。ガーベラが生まれることになった不貞行為の話をしているのだと思います。当然私も許せることではないと思っています。

「ごめんなさいね、貴女のお父様なのに酷いことを言って。でもあれだけ周囲の反対を押し切って結婚したのに、それはしてはいけないと思うの。私も知らないことだったけど、カトレアが知らなかったのが不憫すぎてならないわ」

マリーゴールド様の話だと、お父様は別の伯爵家の出身ですが、マトリカリア伯爵家の本来の婿の条件である「魔力容量の多い男性」の要件を全く満たしていなかったらしく、魔法学校にも通わなかったそうです。

衛生兵団で一緒に仕事をするようになってから知り合ったらしく、お父様はお母様に猛アタックをかけて、お母様がそれを受け入れたようです。まあその辺りの親の馴れ初めはあまり聞きたい話ではないのですけど。

私のマトリカリアのお婆様は早くに亡くなっていたのですが、お爺様がそれはそれは強く反対されたらしくて、そこを押し切ったようです。お父様の実家とも相当険悪になったらしく、私もそちらとは交流はありませんでした。そして、そのお爺様も私が小さい頃に亡くなっています。

そう聞くと、お母様も大概適当な感じがするのですが、あまり深く考えるのはやめておきましょう。

「私もあの家には愛想が尽きているので、お気になさらないでください。お母様のために気を遣っていただいてありがとうございます」

いよいよ王宮に入ると、マリーゴールド様の馬車は正門を通り過ぎて、王族の居住区がある通用口の前で停車しました。マリーゴールド様はここからよくお忍びで出かけるそうです。

「其方は王妃になって随分経つのにまだこんなことをしているのか」

サージェント様が呆れたように言うと、マリーゴールド様はてへぺろという顔をしています。

「誰にも会わないとよろしいのですけど」

マリーゴールド様は心配そうにしています。王族の居住区は当然王族以外は入れません。サージェント様でも怪しい感じですが心配して付いてきてくれたのでしょう。私もハイペリカム関係者とでも言わないと摘み出されそうです。
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