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39話 エピローグ
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ルピナス様は家族になると言ってくれたけど、私はそれでもやっぱり寂しかったんだと思います。
ライラックさんとノーラの姿を見た時、凄く心が穏やかになりました。
ルピナス様に声を掛けられたノーラが感極まったのか泣き出したとき、私も思わず貰い泣きしそうになってしまいました。
ルピナス様の言葉は私も凄く嬉しかったです。私との出会いを大切にしてくれて、改めて胸が熱くなる思いでした。私もあの日のことは鮮明に覚えているんです。あの日、ルピナス様に手を取ってもらってからいろいろありましたけど、ルピナス様と結ばれて本当に良かった。
それから舞踏会があって、私はルピナス様を始めディセントラ公爵様やサージェント様等、次々と一緒に踊らされました。ライラックさんとも踊りたかったのだけど、あまりに身分が違うからライラックさんが悪目立ちしてしまうので遠慮しました。
そのライラックさんは少し酔っているのかノーラを振り回して楽しそうに踊っていました。ノーラも凄く楽しそうで呼んでよかったと思います。
最後に皆さんに祝福をいただきながら私はルピナス様と共に会場を後にしました。その日のことも、その後の夜のことも私は一生忘れないでしょう。
そして、それから10年の月日が流れました。
私は王太子妃としての公務の傍、王宮内の工房で回復薬を作りながら、医者の真似事などもして暮らしています。
王太子妃の公務と言っても、ライラックさんに言われた通り、王族の事業として市井に王立の病院を作ることに一番力を入れて来ました。つまりやりたい放題させてもらっているということです。
王侯貴族達の依頼もたくさんあって日々充実しています。やっぱりお年寄りと話す機会が多くて、自分でもすっかり話し上手になった気がしています。
ライラックさんにはその事業を手伝うために再び王都に来てもらいました。自分が言い出したことですし、王族命令でがっつり言ってやりましたとも。
「君に権力を与えた人間に間違いだったと教えてやらないといけないのではないか」
なんて負け惜しみを言っていましたけど、とりあえず流しておきました。
ライラックさんの傍にはノーラがいます。ただ一緒にいるわけではなく、夫婦になっているのです。
これには私も最初は驚いたのですが、ノーラがずっと絵に描いていたみたいで、彼女が17の時に根負けしたマルクさんがライラックさんに頼み込んだとかなんとか。
ノーラ本人の話だと、私がいなくなってライラックさんが寂しそうに見えたから診療所を手伝い始めて、どんどん好きになってしまったらしいです。ライラックさんが寂しそうだったなんて本当かどうか分かりませんが。
それまでは村と王都を行き来していたライラックさんも、観念したのか再婚して王都に住むようになりました。ノーラぐっじょぶです。
今は王立病院の方は落ち着いていて、ライラックさんはカラードさんと組んで新薬の開発に力を入れているみたいです。ノーラの話だと打倒フリージアとか口走っているそうですよ。
ノーラも昨年お母さんになっています。ノーラに良く似た可愛い女の子で、たまに見せに来てくれるんですけど、本当に月日が流れるのは早いものです。
私の方は女の子が2人と男の子が1人の家族が増えました。
長女のスカーレットは、約束通りディセントラ公爵家から婿を貰ってマトリカリア公爵となってもらうつもりです。
周りからは見た目が私にそっくりと言われていて、聖痕も受け継いでいます。私と違って治癒魔法はちゃんと使えていて、来年からは魔法学校に通う予定になっています。たまに仕事を手伝ってもらうのですが、ルピナス様の魔力容量が膨大だったのか底無しの回復回数をこなしてくれます。
ルピナス様は最初は娘可愛さもあって、スカーレットを外に出すことに難色を示していました。自分がディセントラ公爵様に言質を取られていたんですけどね。
先方のひ孫さんとは顔合わせは済ませていて、そろそろ年頃の彼女はどう思っているのか、最近はあまり本音を打ち明けてはくれませんが、本人達も含めて話はできています。
私にとっても可愛い娘ですし、私がお母様を失っていろいろ辛い思いをしたので、その日が来るまでは一緒にいたいと思っています。
とは言っても、マトリカリアの別邸も領地の屋敷も、私が旅行気分で結構遊びに連れて行っていて、長男のクロッカスや次女のバイオレットは、スカーレットがそれらを相続することを羨ましがっていたりします。
婿となるディセントラの公子も公爵様のように腹黒い感じでは無く、見た目はラムサス様に良く似ていますが凄く良い子でした。スカーレットについてはきっと問題ないのかなと思っています。
対抗したいサージェント様が、バイオレットをハイペリカム侯爵家にと言っていますが、どうなることやら。
そんな子供達をマリーゴールド様に預けたりしながら、私は相変わらずやりたい事をさせて貰っています。今は、ライラックさんに教わった技術の再継承を課題にして動いていて、工房には何人かの弟子を取っています。
さて、話は尽きませんが、私の話はここまでにさせていただきたいと思います。
ルピナス様はずっと優しいままで、私は本当に幸せです。来年にはどちらになるかはわかりませんが、もう一人家族が増える予定です。
またいつか後日談など語らせていただくかもしれませんが、とりあえず物語に幕を引かせていただきます。
それではごきげんよう。
ライラックさんとノーラの姿を見た時、凄く心が穏やかになりました。
ルピナス様に声を掛けられたノーラが感極まったのか泣き出したとき、私も思わず貰い泣きしそうになってしまいました。
ルピナス様の言葉は私も凄く嬉しかったです。私との出会いを大切にしてくれて、改めて胸が熱くなる思いでした。私もあの日のことは鮮明に覚えているんです。あの日、ルピナス様に手を取ってもらってからいろいろありましたけど、ルピナス様と結ばれて本当に良かった。
それから舞踏会があって、私はルピナス様を始めディセントラ公爵様やサージェント様等、次々と一緒に踊らされました。ライラックさんとも踊りたかったのだけど、あまりに身分が違うからライラックさんが悪目立ちしてしまうので遠慮しました。
そのライラックさんは少し酔っているのかノーラを振り回して楽しそうに踊っていました。ノーラも凄く楽しそうで呼んでよかったと思います。
最後に皆さんに祝福をいただきながら私はルピナス様と共に会場を後にしました。その日のことも、その後の夜のことも私は一生忘れないでしょう。
そして、それから10年の月日が流れました。
私は王太子妃としての公務の傍、王宮内の工房で回復薬を作りながら、医者の真似事などもして暮らしています。
王太子妃の公務と言っても、ライラックさんに言われた通り、王族の事業として市井に王立の病院を作ることに一番力を入れて来ました。つまりやりたい放題させてもらっているということです。
王侯貴族達の依頼もたくさんあって日々充実しています。やっぱりお年寄りと話す機会が多くて、自分でもすっかり話し上手になった気がしています。
ライラックさんにはその事業を手伝うために再び王都に来てもらいました。自分が言い出したことですし、王族命令でがっつり言ってやりましたとも。
「君に権力を与えた人間に間違いだったと教えてやらないといけないのではないか」
なんて負け惜しみを言っていましたけど、とりあえず流しておきました。
ライラックさんの傍にはノーラがいます。ただ一緒にいるわけではなく、夫婦になっているのです。
これには私も最初は驚いたのですが、ノーラがずっと絵に描いていたみたいで、彼女が17の時に根負けしたマルクさんがライラックさんに頼み込んだとかなんとか。
ノーラ本人の話だと、私がいなくなってライラックさんが寂しそうに見えたから診療所を手伝い始めて、どんどん好きになってしまったらしいです。ライラックさんが寂しそうだったなんて本当かどうか分かりませんが。
それまでは村と王都を行き来していたライラックさんも、観念したのか再婚して王都に住むようになりました。ノーラぐっじょぶです。
今は王立病院の方は落ち着いていて、ライラックさんはカラードさんと組んで新薬の開発に力を入れているみたいです。ノーラの話だと打倒フリージアとか口走っているそうですよ。
ノーラも昨年お母さんになっています。ノーラに良く似た可愛い女の子で、たまに見せに来てくれるんですけど、本当に月日が流れるのは早いものです。
私の方は女の子が2人と男の子が1人の家族が増えました。
長女のスカーレットは、約束通りディセントラ公爵家から婿を貰ってマトリカリア公爵となってもらうつもりです。
周りからは見た目が私にそっくりと言われていて、聖痕も受け継いでいます。私と違って治癒魔法はちゃんと使えていて、来年からは魔法学校に通う予定になっています。たまに仕事を手伝ってもらうのですが、ルピナス様の魔力容量が膨大だったのか底無しの回復回数をこなしてくれます。
ルピナス様は最初は娘可愛さもあって、スカーレットを外に出すことに難色を示していました。自分がディセントラ公爵様に言質を取られていたんですけどね。
先方のひ孫さんとは顔合わせは済ませていて、そろそろ年頃の彼女はどう思っているのか、最近はあまり本音を打ち明けてはくれませんが、本人達も含めて話はできています。
私にとっても可愛い娘ですし、私がお母様を失っていろいろ辛い思いをしたので、その日が来るまでは一緒にいたいと思っています。
とは言っても、マトリカリアの別邸も領地の屋敷も、私が旅行気分で結構遊びに連れて行っていて、長男のクロッカスや次女のバイオレットは、スカーレットがそれらを相続することを羨ましがっていたりします。
婿となるディセントラの公子も公爵様のように腹黒い感じでは無く、見た目はラムサス様に良く似ていますが凄く良い子でした。スカーレットについてはきっと問題ないのかなと思っています。
対抗したいサージェント様が、バイオレットをハイペリカム侯爵家にと言っていますが、どうなることやら。
そんな子供達をマリーゴールド様に預けたりしながら、私は相変わらずやりたい事をさせて貰っています。今は、ライラックさんに教わった技術の再継承を課題にして動いていて、工房には何人かの弟子を取っています。
さて、話は尽きませんが、私の話はここまでにさせていただきたいと思います。
ルピナス様はずっと優しいままで、私は本当に幸せです。来年にはどちらになるかはわかりませんが、もう一人家族が増える予定です。
またいつか後日談など語らせていただくかもしれませんが、とりあえず物語に幕を引かせていただきます。
それではごきげんよう。
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