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私達は最後の区画に繋がる隠し扉の奥に足を踏み入れました。エンカウントの魔法陣が展開して、ゴーレムの集団が現れたので、いつも通りに一掃しました。
部屋の中は広間になっていて、入り口から奥に向かって赤い絨毯が伸びています。奥は段になっており、段上には玉座らしき物が置かれていました。
ここからでは暗くてよく見えませんが、玉座には何かが鎮座しているようにも見えます。
「まるで王宮の謁見の間のようだ」
唯一、そこに入ったことのあるエルヴィン様がそう言いました。
「なら、あそこに座っているのは、さしずめこの宮殿の王様みたいなものでしょうか」
「それなりの地位にあった者なんだろうな」
玉座に近づくと、次第にその様子がよく見えてきました。そこには、豪奢な法衣を見に纏ったミイラが座っていたのです。
「古代の王の遺物か」
そう言いながらルーカス君が近づくと、ミイラの目が赤い光を発しました。
それから、ミイラの口元が動いた気がしました。
「ひいっ!あれ、動いてない?」
ルーナが驚いた声をあげました。私も思わず息をのんでしまいます。
『あれだけ警告してやったのに、今代の人類は愚かな者しかおらぬのか』
どこからともなく声がしました。禍々しい声が直接頭に響いている感じです。
「貴方が街に災いをもたらしているのか。我が母にかけた呪いを解いていただきたい」
他に誰も声を発する事ができない中、エルヴィン様がミイラにそう問いかけました。
『なんと愚かな……貴様達の間ではこの地下宮殿のことは忘れ去られているのか。私は何のために……』
ミイラの怒りと悲しみが膨れ上がったような気がしました。足元から魔法陣が発生します。
『他の者がここに到達してきそうな気配は無い。お前達は排除する。人類が二度とここに来れぬようにな』
言うや否や、ミイラは手にしている杖を振り上げました。
「待ってください!いったいどういう……」
私が質問を言いきる前に、辺りの空気が大爆発を起こして、私は意識を失いました。
†††
『他の者がここに到達してきそうな気配は無い。お前達は排除する。人類が二度とここに来れぬようにな』
そう言ってミイラが手にしている杖を振り上げた瞬間、私は叫びました。
「魔法障壁!すぐお願い!」
そう言ってから私が魔法障壁を張ると、ルーカス君とルーナもすぐに反応して魔法障壁を張ってくれました。
辺りが大爆発に包まれます。
私は障壁の外に爆風が吹き荒れる中、ミイラを鑑定しました。
【名 前】ファーガス王
【種 族】不死者
【スキル】僧侶魔法(7)、魔術師魔法(7)
強力な魔法を操る以外は特に特徴の無い、まるで人間のようなモンスターでした。
「これは魔術師魔法レベル7の『爆裂』魔法だ。でもこんな威力が出せるなんて、あのミイラのステータスは異常だよ」
エルヴィン様が踏み込む機会を伺う様子で言いました。魔法障壁が無かった先程は全員が即死したのだと思えるくらいの威力です。
ミイラは魔法障壁に気づいたのか、すかさず中和魔法を使用してきました。
そして、再び杖を振り上げます。
「させるか!」
忍び寄っていたルーカス君がミイラの首を刎ねました。魔法陣が収束していきます。
『なんと愚かな。もう私は知らぬ。お前達でなんとかするが良い』
再び頭に声が響いたあと、辺りは静寂に包まれました。
「意外と呆気なかったな。これでダンジョン踏破なのか?」
「あれだけ警告したとか言ってたからそうじゃないかな?警告って呪いのことだと思うけど」
「あれ、何か落ちてるよ?」
玉座の方でルーナが何か見つけたようです。
行ってみると玉座の上には血の色をした赤い宝石の付いたペンダントが置かれていました。
「さっきの戦闘のドロップアイテムかな?」
「そういえば宝箱が出なかったな。俺には何だかわからないから、師匠に見てもらおう」
ルーカス君は手袋を付けてそれを布に包んでから、私に差し出してきました。
私はそれを受け取ると、一度街に帰ることを提案しました。何か変化がないか見てみる必要があると思ったからです。
街に帰ると、エルヴィン様は真っ先に家に帰って行きました。お母様の事が気になるのだと思います。
残された私達は冒険者協会に向かいます。
「俺たちは身内に呪いにかかった人はいないからなあ」
「これで解決してたらいいんだけどね」
あのミイラはファーガス王でしたっけ。エルヴィン様が呪いを彼のせいにしたら、怒っていろいろと意味深なことを言っていたけど、最後は投げやりに私達でなんとかしろとか言ってたっけ。
「ねえ、クロエは事件が解決して報酬を得たら、それからどうするの?」
ルーナが後ろから聞いてきました。特に決まってないんだけど、何をしようかな。
「特に決まってないんだけど。そうだなあ。せっかくお金持ちになるなら街の外に出てみたいかな?ルーカス君が言う別のダンジョンを見にいったり?」
「お、そうなのか。なら俺も一緒に行こうかな?」
ちょっと冗談で言ってみると、それにルーカス君が乗ってきました。ルーカス君となら楽しい旅になりそうだし、本当にそうしてもいいかも。
「私も行こうかな……」
「え、ルーナ?」
ルーナまでそんな事を言い出しました。
「あの家にいても息苦しいだけだし、その、もし迷惑でなければだけど」
どうなんでしょう、グレースお姉様が大公家に輿入れした時、婿を取ってシリウスを継ぐのはルーナの役目になる気がします。お義母様が許さない気がします。
まあ、私にはもう関係ありませんけど。
「まあ、上手くいってから考えようか、あはは」
私はそう言って誤魔化しました。
冒険者協会に着くと、カードをステラさんに見せて、ルーナは家に帰りました。
部屋の中は広間になっていて、入り口から奥に向かって赤い絨毯が伸びています。奥は段になっており、段上には玉座らしき物が置かれていました。
ここからでは暗くてよく見えませんが、玉座には何かが鎮座しているようにも見えます。
「まるで王宮の謁見の間のようだ」
唯一、そこに入ったことのあるエルヴィン様がそう言いました。
「なら、あそこに座っているのは、さしずめこの宮殿の王様みたいなものでしょうか」
「それなりの地位にあった者なんだろうな」
玉座に近づくと、次第にその様子がよく見えてきました。そこには、豪奢な法衣を見に纏ったミイラが座っていたのです。
「古代の王の遺物か」
そう言いながらルーカス君が近づくと、ミイラの目が赤い光を発しました。
それから、ミイラの口元が動いた気がしました。
「ひいっ!あれ、動いてない?」
ルーナが驚いた声をあげました。私も思わず息をのんでしまいます。
『あれだけ警告してやったのに、今代の人類は愚かな者しかおらぬのか』
どこからともなく声がしました。禍々しい声が直接頭に響いている感じです。
「貴方が街に災いをもたらしているのか。我が母にかけた呪いを解いていただきたい」
他に誰も声を発する事ができない中、エルヴィン様がミイラにそう問いかけました。
『なんと愚かな……貴様達の間ではこの地下宮殿のことは忘れ去られているのか。私は何のために……』
ミイラの怒りと悲しみが膨れ上がったような気がしました。足元から魔法陣が発生します。
『他の者がここに到達してきそうな気配は無い。お前達は排除する。人類が二度とここに来れぬようにな』
言うや否や、ミイラは手にしている杖を振り上げました。
「待ってください!いったいどういう……」
私が質問を言いきる前に、辺りの空気が大爆発を起こして、私は意識を失いました。
†††
『他の者がここに到達してきそうな気配は無い。お前達は排除する。人類が二度とここに来れぬようにな』
そう言ってミイラが手にしている杖を振り上げた瞬間、私は叫びました。
「魔法障壁!すぐお願い!」
そう言ってから私が魔法障壁を張ると、ルーカス君とルーナもすぐに反応して魔法障壁を張ってくれました。
辺りが大爆発に包まれます。
私は障壁の外に爆風が吹き荒れる中、ミイラを鑑定しました。
【名 前】ファーガス王
【種 族】不死者
【スキル】僧侶魔法(7)、魔術師魔法(7)
強力な魔法を操る以外は特に特徴の無い、まるで人間のようなモンスターでした。
「これは魔術師魔法レベル7の『爆裂』魔法だ。でもこんな威力が出せるなんて、あのミイラのステータスは異常だよ」
エルヴィン様が踏み込む機会を伺う様子で言いました。魔法障壁が無かった先程は全員が即死したのだと思えるくらいの威力です。
ミイラは魔法障壁に気づいたのか、すかさず中和魔法を使用してきました。
そして、再び杖を振り上げます。
「させるか!」
忍び寄っていたルーカス君がミイラの首を刎ねました。魔法陣が収束していきます。
『なんと愚かな。もう私は知らぬ。お前達でなんとかするが良い』
再び頭に声が響いたあと、辺りは静寂に包まれました。
「意外と呆気なかったな。これでダンジョン踏破なのか?」
「あれだけ警告したとか言ってたからそうじゃないかな?警告って呪いのことだと思うけど」
「あれ、何か落ちてるよ?」
玉座の方でルーナが何か見つけたようです。
行ってみると玉座の上には血の色をした赤い宝石の付いたペンダントが置かれていました。
「さっきの戦闘のドロップアイテムかな?」
「そういえば宝箱が出なかったな。俺には何だかわからないから、師匠に見てもらおう」
ルーカス君は手袋を付けてそれを布に包んでから、私に差し出してきました。
私はそれを受け取ると、一度街に帰ることを提案しました。何か変化がないか見てみる必要があると思ったからです。
街に帰ると、エルヴィン様は真っ先に家に帰って行きました。お母様の事が気になるのだと思います。
残された私達は冒険者協会に向かいます。
「俺たちは身内に呪いにかかった人はいないからなあ」
「これで解決してたらいいんだけどね」
あのミイラはファーガス王でしたっけ。エルヴィン様が呪いを彼のせいにしたら、怒っていろいろと意味深なことを言っていたけど、最後は投げやりに私達でなんとかしろとか言ってたっけ。
「ねえ、クロエは事件が解決して報酬を得たら、それからどうするの?」
ルーナが後ろから聞いてきました。特に決まってないんだけど、何をしようかな。
「特に決まってないんだけど。そうだなあ。せっかくお金持ちになるなら街の外に出てみたいかな?ルーカス君が言う別のダンジョンを見にいったり?」
「お、そうなのか。なら俺も一緒に行こうかな?」
ちょっと冗談で言ってみると、それにルーカス君が乗ってきました。ルーカス君となら楽しい旅になりそうだし、本当にそうしてもいいかも。
「私も行こうかな……」
「え、ルーナ?」
ルーナまでそんな事を言い出しました。
「あの家にいても息苦しいだけだし、その、もし迷惑でなければだけど」
どうなんでしょう、グレースお姉様が大公家に輿入れした時、婿を取ってシリウスを継ぐのはルーナの役目になる気がします。お義母様が許さない気がします。
まあ、私にはもう関係ありませんけど。
「まあ、上手くいってから考えようか、あはは」
私はそう言って誤魔化しました。
冒険者協会に着くと、カードをステラさんに見せて、ルーナは家に帰りました。
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