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6:リーンデルトの家族
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カインはピシッとアイロンをかけた半袖のシャツを着て、いつもより洒落っ気のあるネクタイを締めると、夏物のかっちりとした上着を羽織った。
今日はリーンデルトの実家で、リーンデルトの甥の嫁のお披露目パーティーである。
カインが鏡の前で髭の剃り残しがないかをチェックしていると、ボサボサ頭のリーンデルトがネクタイを片手にやって来た。
「頭とネクタイ頼む。ネクタイなんて姉貴の結婚式以来だぜ」
リーンデルトが面倒臭そうに溜め息を吐いた。リーンデルトはカインが選んだかっちりとした礼装を着ている。リーンデルトは少し垂れ目で、顔立ちは甘く整っている。若干下っ腹が出ているが、新しい紺色の礼装がよく似合っている。
カインは無言でリーンデルトのネクタイを締め、自分もたまにしか使わない整髪剤を使って、リーンデルトの髪の毛を整えた。リーンデルトの髭の剃り残しがないかもチェックしてから、カインは満足して頷いた。
2人で選んだ祝いの贈り物や珈琲セットを鞄に入れて、家を出る。リーンデルトが早くもネクタイを外したそうに弄るのを咎めながら、カインはリーンデルトの実家への道を歩いた。
リーンデルトの実家は、リーンデルトの家から歩いて一刻程の場所にある。街の中心部にあり、魔導具専門店をしている。表の店の横の細い脇道から奥に入ると、リーンデルトの実家がある。
リーンデルトが無造作に玄関の呼び鈴を押すと、すぐにドアが開いて、上品な雰囲気の老婆が顔を出した。リーンデルトの母モリーンである。モリーンが皺だらけの顔でくしゃっと笑った。
「おはよう。リーン。カイン。久しぶりね。たまには顔を出しなさいよ。馬鹿息子」
「おはよう。お袋。こないだはありがと。貰ったもんは全部食った」
「おはようございます。モリーンさん。先日はありがとうございました。どれも美味しかったです」
「あら。それはよかったわ。さぁ、入って。もう少ししたら、ダンとプリシアが来るから」
カインはリーンデルトと一緒に家の中に入った。リーンデルトの実家は数年前に改築しており、年老いたリーンデルトの両親が生活しやすいよう、色んなところに手すり等がつけてある。
居間にいたリーンデルトの父アルダインに挨拶すると、アルダインがニコニコと笑って、リーンデルトの頭に拳骨を落とした。
「いってぇ!」
「たまには顔を出せ。馬鹿息子。納品くらい自分で持ってこい」
「いいだろー。別に。遠いし」
「若いくせに何を言っとる。いつもカイン任せにしおってからに。いつも馬鹿息子がすまんな。カイン。今日はモリーンとマリアンナが気合を入れてご馳走を作ってるから、たらふく食べておくれ」
「ありがとうございます。楽しみです」
リーンデルトが作った魔導具は、依頼があったもの以外は、全て実家の魔導具専門店で販売している。別に家族仲が悪い訳ではないのだが、リーンデルトは実家に帰るのが面倒なようで、いつもカインが魔導具を届けている。
マリアンナとマリアンナの旦那にも挨拶をすると、モリーンが紅茶を淹れてくれた。アルダインのリーンデルトへの小言を聞き流しながら、香りのいい紅茶を楽しむ。普段は珈琲か酒しか飲まないから、久しぶりの紅茶が新鮮で美味しい。お茶請けに出してくれたモリーン手製のジャムクッキーもサクサクでバターの香りがよく、紅茶によく合う。
マリアンナは合わせて3人子供がいる。マリアンナの下の子達とも挨拶をして、皆でわいわい話していると、結婚予定の若い2人がやって来た。挨拶と自己紹介をしたら、パーティーの始まりである。
リーンデルトの一番上の甥は、現在別の魔導具も取り扱っている商家で修行中である。いづれは魔導具専門店を継ぐ予定だ。嫁となる女の子は、おっとりとした雰囲気の可愛らしい子で、初々しい2人の雰囲気がなんとも微笑ましい。
カインは、モリーンとマリアンナが作った美味しい料理をもりもり食べながら、夕方近くまでパーティーを楽しんだ。
飲み過ぎて歩けないリーンデルトをおんぶして茜色に染まる道を歩きながら、カインはご機嫌だった。
リーンデルトの実家でのパーティーは、すごく楽しかった。リーンデルトの家族は、カインのことも受け入れてくれている。皆、懐が広い人達で、とても優しい。
カインの実家も一応同じ街にあるが、リーンデルトに拾われてからは一度も帰っていない。カインの両親はとても厳しく、リーンデルトの家族のような温かさなんてない家庭だった。
リーンデルトもリーンデルトの家族も温かい。
小さく鼾をかき始めたリーンデルトの温もりに小さく口角を上げ、カインは2人の家へと帰った。
今日はリーンデルトの実家で、リーンデルトの甥の嫁のお披露目パーティーである。
カインが鏡の前で髭の剃り残しがないかをチェックしていると、ボサボサ頭のリーンデルトがネクタイを片手にやって来た。
「頭とネクタイ頼む。ネクタイなんて姉貴の結婚式以来だぜ」
リーンデルトが面倒臭そうに溜め息を吐いた。リーンデルトはカインが選んだかっちりとした礼装を着ている。リーンデルトは少し垂れ目で、顔立ちは甘く整っている。若干下っ腹が出ているが、新しい紺色の礼装がよく似合っている。
カインは無言でリーンデルトのネクタイを締め、自分もたまにしか使わない整髪剤を使って、リーンデルトの髪の毛を整えた。リーンデルトの髭の剃り残しがないかもチェックしてから、カインは満足して頷いた。
2人で選んだ祝いの贈り物や珈琲セットを鞄に入れて、家を出る。リーンデルトが早くもネクタイを外したそうに弄るのを咎めながら、カインはリーンデルトの実家への道を歩いた。
リーンデルトの実家は、リーンデルトの家から歩いて一刻程の場所にある。街の中心部にあり、魔導具専門店をしている。表の店の横の細い脇道から奥に入ると、リーンデルトの実家がある。
リーンデルトが無造作に玄関の呼び鈴を押すと、すぐにドアが開いて、上品な雰囲気の老婆が顔を出した。リーンデルトの母モリーンである。モリーンが皺だらけの顔でくしゃっと笑った。
「おはよう。リーン。カイン。久しぶりね。たまには顔を出しなさいよ。馬鹿息子」
「おはよう。お袋。こないだはありがと。貰ったもんは全部食った」
「おはようございます。モリーンさん。先日はありがとうございました。どれも美味しかったです」
「あら。それはよかったわ。さぁ、入って。もう少ししたら、ダンとプリシアが来るから」
カインはリーンデルトと一緒に家の中に入った。リーンデルトの実家は数年前に改築しており、年老いたリーンデルトの両親が生活しやすいよう、色んなところに手すり等がつけてある。
居間にいたリーンデルトの父アルダインに挨拶すると、アルダインがニコニコと笑って、リーンデルトの頭に拳骨を落とした。
「いってぇ!」
「たまには顔を出せ。馬鹿息子。納品くらい自分で持ってこい」
「いいだろー。別に。遠いし」
「若いくせに何を言っとる。いつもカイン任せにしおってからに。いつも馬鹿息子がすまんな。カイン。今日はモリーンとマリアンナが気合を入れてご馳走を作ってるから、たらふく食べておくれ」
「ありがとうございます。楽しみです」
リーンデルトが作った魔導具は、依頼があったもの以外は、全て実家の魔導具専門店で販売している。別に家族仲が悪い訳ではないのだが、リーンデルトは実家に帰るのが面倒なようで、いつもカインが魔導具を届けている。
マリアンナとマリアンナの旦那にも挨拶をすると、モリーンが紅茶を淹れてくれた。アルダインのリーンデルトへの小言を聞き流しながら、香りのいい紅茶を楽しむ。普段は珈琲か酒しか飲まないから、久しぶりの紅茶が新鮮で美味しい。お茶請けに出してくれたモリーン手製のジャムクッキーもサクサクでバターの香りがよく、紅茶によく合う。
マリアンナは合わせて3人子供がいる。マリアンナの下の子達とも挨拶をして、皆でわいわい話していると、結婚予定の若い2人がやって来た。挨拶と自己紹介をしたら、パーティーの始まりである。
リーンデルトの一番上の甥は、現在別の魔導具も取り扱っている商家で修行中である。いづれは魔導具専門店を継ぐ予定だ。嫁となる女の子は、おっとりとした雰囲気の可愛らしい子で、初々しい2人の雰囲気がなんとも微笑ましい。
カインは、モリーンとマリアンナが作った美味しい料理をもりもり食べながら、夕方近くまでパーティーを楽しんだ。
飲み過ぎて歩けないリーンデルトをおんぶして茜色に染まる道を歩きながら、カインはご機嫌だった。
リーンデルトの実家でのパーティーは、すごく楽しかった。リーンデルトの家族は、カインのことも受け入れてくれている。皆、懐が広い人達で、とても優しい。
カインの実家も一応同じ街にあるが、リーンデルトに拾われてからは一度も帰っていない。カインの両親はとても厳しく、リーンデルトの家族のような温かさなんてない家庭だった。
リーンデルトもリーンデルトの家族も温かい。
小さく鼾をかき始めたリーンデルトの温もりに小さく口角を上げ、カインは2人の家へと帰った。
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