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14:春が来た
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カインは居間の窓のドアを開け、空を見上げた。朝から雲一つない快晴である。冬の寒さが薄れ、暖かい日差しが降り注いでいる。季節はすっかり春になった。
冬の間は甘えただったリーンデルトも、この頃は通常通りに戻ってきた。カインは黒いエプロンを着けると、台所へ行き、朝食を作り始めた。
今朝はパンケーキにする。リーンデルトの実家から貰った美味しいハムを焼いて、目玉焼きも作る。早くも市場で売っていた春キャベツは、ベーコンと一緒にスープにする。
メニューが決まれば、後は作るだけだ。カインは手早く料理を作り始めた。
朝食が完成する頃に、籠を片手に持ったリーンデルトが台所に顔を出した。
「おはよ。今朝は四つ」
「おはよう。珍しく少ないな」
「昨日、散々出したからな」
「あぁ……」
昨夜は何故だか大変盛り上がった。お陰で腰が痛いが、気持ちよかったし、身体の中がリーンデルトの魔力で満ちていて、いっそ走り回りたいくらい活力がある。
リーンデルトに手伝ってもらって朝食を居間のテーブルに運ぶと、早速朝食を食べ始めた。リーンデルトの母の親戚が精肉屋をしており、そこで作っているハムは非常に美味しい。贅沢に分厚めに切ったハムは、程よい塩気で、パンケーキにも半熟にした目玉焼きにも合う。向かい側でリーンデルトも美味しそうに食べている。
大量のパンケーキを食べきり、食後の珈琲を楽しんでいると、リーンデルトが頬杖をついて、話しかけてきた。
「洗濯物干したら出かけようぜ。散歩日和だろ」
「あぁ。何処へ行く?」
「森の方は?そろそろネモフィラが咲いてるだろ」
「弁当を作る」
「いいね。ハムがまだ残ってるならハムサンドがいい」
「分かった」
カインは珈琲を飲み終えると、食器をまとめてお盆にのせ、台所へと移動した。手早く皿洗いをしてから、弁当用のサンドイッチを作る。薄くスライスしたハムと柔らかい春キャベツを刻んだものを挟んだサンドイッチをいくつも作り、ついでにソーセージを焼いて、茹でて殻を剥き、潰した卵と一緒にパンに挟んで、これもサンドイッチにする。
珈琲を淹れて水筒に入れ、紙で包んだ2種類のサンドイッチと一緒に、大きめのバスケットに入れたら準備完了である。
バスケットを持って居間に行き、窓から外を覗けば、リーンデルトがちょうど洗濯物を干し終えたところだった。昨夜汚したシーツも洗ったようである。
リーンデルトが窓から顔を覗かせているカインの側に来て、ちょいちょいと指先で手招きをした。何だろうと少し身を乗り出して、リーンデルトに顔を近づけると、リーンデルトがカインの唇に触れるだけのキスをした。
「なんだ」
「気分。弁当出来たんなら出かけようぜ」
「あぁ」
カインは居間の窓を閉めて鍵をかけ、家の中の戸締まりを確認してから、外に出て、玄関のドアの鍵を閉めた。
庭からリーンデルトが歩いてきたので、並んで街の外の森を目指す。リーンデルトの家は郊外と言ってもいい程、街外れにある。街の外には森があり、森には木苺が自生していたり、ネモフィラのちょっとした花畑があったりする。
ぽかぽかとした陽気の中、2人でのんびりと歩いていると、リーンデルトがカインの手を握った。
「なんだ」
「気分」
「そうか」
リーンデルトの手を振りほどく理由もないし、リーンデルトのカインより少し低めの体温の手の感触は嫌いじゃない。
カインはなんとなくリーンデルトと手を繋いだまま、森の小道に入り、目当てのネモフィラの花畑へと歩いていった。
森の中の開けた場所に咲いているネモフィラは八分咲きといった感じだったが、十分綺麗に咲いていた。まるで森の中に青い絨毯があるようで、とても美しい光景だ。毎年、リーンデルトと一緒に見に来ているが、毎回この美しさに感嘆する。
ネモフィラが咲いている場所から少し離れた木の下に腰を下ろし、バスケットから水筒を取り出した。一緒にバスケットに入れていた木のカップも取り出して、水筒の珈琲を木のカップに注ぐ。リーンデルトに手渡してから、カインはのんびり珈琲を飲み始めた。
目の前に広がるネモフィラの花畑も、柔らかい春の日差しも、頬を撫でる暖かな風も、森の澄んだ緑の匂いがする空気も、全てが心地よく、カインの心を穏やかにしてくれる。
すぐ隣に座っているリーンデルトも、穏やかな顔で珈琲を飲みながら、ネモフィラを眺めていた。
2人は暫く無言で春の花畑の光景を楽しんだ。
昼食にサンドイッチを食べ、少しだけ2人で昼寝をした。柔らかい草の上に並んで寝転がって、暖かい日差しを浴びていると、すぐに眠気が訪れた。先に寝落ちたリーンデルトの横顔をなんとなく眺めてから、カインも静かに目を閉じた。
夕方が近くなるまで、2人で森の中の花畑を満喫してから、またなんとなく手を繋いで家へと帰った。
夕食を手早く作り、居間のテーブルに運ぶと、洗濯物を畳み終えたリーンデルトが、いそいそと椅子に座った。
今夜は魚のワイン蒸しがメインである。ワインも開けて、2人で夕食を楽しむテーブルの隅には、ガラスのコップに挿した1輪のネモフィラがあった。
冬の間は甘えただったリーンデルトも、この頃は通常通りに戻ってきた。カインは黒いエプロンを着けると、台所へ行き、朝食を作り始めた。
今朝はパンケーキにする。リーンデルトの実家から貰った美味しいハムを焼いて、目玉焼きも作る。早くも市場で売っていた春キャベツは、ベーコンと一緒にスープにする。
メニューが決まれば、後は作るだけだ。カインは手早く料理を作り始めた。
朝食が完成する頃に、籠を片手に持ったリーンデルトが台所に顔を出した。
「おはよ。今朝は四つ」
「おはよう。珍しく少ないな」
「昨日、散々出したからな」
「あぁ……」
昨夜は何故だか大変盛り上がった。お陰で腰が痛いが、気持ちよかったし、身体の中がリーンデルトの魔力で満ちていて、いっそ走り回りたいくらい活力がある。
リーンデルトに手伝ってもらって朝食を居間のテーブルに運ぶと、早速朝食を食べ始めた。リーンデルトの母の親戚が精肉屋をしており、そこで作っているハムは非常に美味しい。贅沢に分厚めに切ったハムは、程よい塩気で、パンケーキにも半熟にした目玉焼きにも合う。向かい側でリーンデルトも美味しそうに食べている。
大量のパンケーキを食べきり、食後の珈琲を楽しんでいると、リーンデルトが頬杖をついて、話しかけてきた。
「洗濯物干したら出かけようぜ。散歩日和だろ」
「あぁ。何処へ行く?」
「森の方は?そろそろネモフィラが咲いてるだろ」
「弁当を作る」
「いいね。ハムがまだ残ってるならハムサンドがいい」
「分かった」
カインは珈琲を飲み終えると、食器をまとめてお盆にのせ、台所へと移動した。手早く皿洗いをしてから、弁当用のサンドイッチを作る。薄くスライスしたハムと柔らかい春キャベツを刻んだものを挟んだサンドイッチをいくつも作り、ついでにソーセージを焼いて、茹でて殻を剥き、潰した卵と一緒にパンに挟んで、これもサンドイッチにする。
珈琲を淹れて水筒に入れ、紙で包んだ2種類のサンドイッチと一緒に、大きめのバスケットに入れたら準備完了である。
バスケットを持って居間に行き、窓から外を覗けば、リーンデルトがちょうど洗濯物を干し終えたところだった。昨夜汚したシーツも洗ったようである。
リーンデルトが窓から顔を覗かせているカインの側に来て、ちょいちょいと指先で手招きをした。何だろうと少し身を乗り出して、リーンデルトに顔を近づけると、リーンデルトがカインの唇に触れるだけのキスをした。
「なんだ」
「気分。弁当出来たんなら出かけようぜ」
「あぁ」
カインは居間の窓を閉めて鍵をかけ、家の中の戸締まりを確認してから、外に出て、玄関のドアの鍵を閉めた。
庭からリーンデルトが歩いてきたので、並んで街の外の森を目指す。リーンデルトの家は郊外と言ってもいい程、街外れにある。街の外には森があり、森には木苺が自生していたり、ネモフィラのちょっとした花畑があったりする。
ぽかぽかとした陽気の中、2人でのんびりと歩いていると、リーンデルトがカインの手を握った。
「なんだ」
「気分」
「そうか」
リーンデルトの手を振りほどく理由もないし、リーンデルトのカインより少し低めの体温の手の感触は嫌いじゃない。
カインはなんとなくリーンデルトと手を繋いだまま、森の小道に入り、目当てのネモフィラの花畑へと歩いていった。
森の中の開けた場所に咲いているネモフィラは八分咲きといった感じだったが、十分綺麗に咲いていた。まるで森の中に青い絨毯があるようで、とても美しい光景だ。毎年、リーンデルトと一緒に見に来ているが、毎回この美しさに感嘆する。
ネモフィラが咲いている場所から少し離れた木の下に腰を下ろし、バスケットから水筒を取り出した。一緒にバスケットに入れていた木のカップも取り出して、水筒の珈琲を木のカップに注ぐ。リーンデルトに手渡してから、カインはのんびり珈琲を飲み始めた。
目の前に広がるネモフィラの花畑も、柔らかい春の日差しも、頬を撫でる暖かな風も、森の澄んだ緑の匂いがする空気も、全てが心地よく、カインの心を穏やかにしてくれる。
すぐ隣に座っているリーンデルトも、穏やかな顔で珈琲を飲みながら、ネモフィラを眺めていた。
2人は暫く無言で春の花畑の光景を楽しんだ。
昼食にサンドイッチを食べ、少しだけ2人で昼寝をした。柔らかい草の上に並んで寝転がって、暖かい日差しを浴びていると、すぐに眠気が訪れた。先に寝落ちたリーンデルトの横顔をなんとなく眺めてから、カインも静かに目を閉じた。
夕方が近くなるまで、2人で森の中の花畑を満喫してから、またなんとなく手を繋いで家へと帰った。
夕食を手早く作り、居間のテーブルに運ぶと、洗濯物を畳み終えたリーンデルトが、いそいそと椅子に座った。
今夜は魚のワイン蒸しがメインである。ワインも開けて、2人で夕食を楽しむテーブルの隅には、ガラスのコップに挿した1輪のネモフィラがあった。
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