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躾のお時間です。
ここはとある大人の玩具専門店。
ジョージは浣腸セットと数本のバイブとディルド、ローションの大きなボトルを両手に抱えたまま固まった。目の前には同じ様に固まっている男がいる。職場のいけすかない同僚であるダーナーだ。ダーナーの手にはギャグボールが握られている。
ジョージとダーナーは同時に口を開いた。
「「変態」」
何とも言えない空気が2人の間を流れる。ジョージもダーナーも王宮に勤める文官である。2人は同期で共に28歳。出自も同じくらいの規模の財力や領地を持つ伯爵家で、お互い跡取りとは無縁の三男坊である。顔立ちは若干方向性が違うが、2人とも男前で、女にモテる。何かと比較されやすいジョージとダーナーは普通に仲が悪かった。
ダーナーがいつものように眼鏡をくいっと上げた。
「そんなものを恋人に使う気か変態」
ジョージは鼻でふんっと笑った。
「使うわけないだろうが。そっちこそ、そんなもん女に使うなんざ最低だな変態」
「「誰が変態だ!これは自分用だっ!」」
ハモった。また何とも言えない空気が流れた。
ジョージは女とセックスをするのも好きだが、それ以上にアナニーをするのが大好きである。エロいことに興味津々だった10代の頃に前立腺の噂を聞き、物は試しとやってみて、見事にどハマりした。アナニー歴10年の、もはやアナニーのプロである。ちなみに処女だ。アナニーは大好きだが、男に抱かれる気なんて更々ない。
「やっぱり変態じゃないか。ジョージ」
「いや、お前程じゃねぇよ。被虐趣味のド変態野郎」
「違うっ!誰が被虐趣味のド変態野郎だっ!!」
「お前」
「これはっ……噛みつく癖があるから、ヤりたいならつけろと言われて……」
「え?何?毎回女噛んでんの?うわ、サイテー」
「う、うるさいっ!仕方がないだろう!興奮するとついやってしまうのだからっ!」
「さーいてーい」
「……そういうお前だって、男を咥え込むのが好きとは思わなかったな。女を食い捨てするような最低男が、まさかの男好きとは」
「違うわっ!アナニーが趣味なだけだっ!男なんぞ気持ち悪いっ!」
「どっちにしろ変態」
「世の中のアナニー好きに謝れ」
「誰が謝るか変態」
「そんなもん使ってまでセックスするお前の方が変態」
「俺だって、こんなもん使いたくないわっ!」
「はーん?どうだか?」
「くっそ……最悪だ。こんな変態に見られるなんて……」
「誰が変態だ。善良なアナニー好きに対して、あまりにも酷い言い草。慰謝料として、お前がこいつらの代金払えよ」
「ふざけんな」
2人は互いにメンチを切りながら、じわじわと近寄りあった。
「ジョージ。お前のことは前々から気にくわなかった」
「奇遇だなぁ。ダーナー。俺もだ」
「「ぶっ飛ばす」」
ジョージとダーナーは、筋肉ムキムキな店員から力ずくで止められるまで、狭い大人の玩具専門店の店内で殴りあった。
***
「で?」
「何が」
「どうすんだよ」
「……どうしようもない」
2人は大人の玩具専門店の地下室に閉じ込められていた。『仲直りするまで出さないわよぉ』と、ジョージと仲がいい店長であるムキムキマッチョなオカマに2人まとめて閉じ込められた。買う予定だったものと、オマケだと言ってデカいローションのボトルも地下室に一緒に放り込まれた。ヤれってか。ヤれっていうのか。
冷静になると、完全に馬鹿なことをしてしまった気がする。ジョージがアナニー好きなことを知っているのは、この馴染みの店のオカマ店長だけだ。流石に恥ずかしくて、誰にも知られたくなかった。ジョージの秘密がよりにもよって嫌いなダーナーに知られてしまったと、思わず動揺してしまったのが悪かった。ジョージは人を殴ったことなどないので、ダーナーを殴った拳や手首が地味に痛い。
何故かデカいベッドがある地下室の固い石の床に座り込んでジョージが項垂れていると、地下室の入り口の扉がドンドンと強めにノックされ、扉の向こうからピンクちゃん(店長)の声が聞こえてきた。
「はぁーい。2人ともー。喧嘩して荒らしたお店の損害賠償としてぇー、面白いものを見せてちょーだぁい。ここねぇー、覗き穴がいっぱいあるお部屋なのぉー。素敵なショーを見せてねぇー」
「「……は?」」
「楽しいセックスでぇー、なーかーなーおーりー!」
「「はぁぁぁぁぁ!?」」
「よろしくぅー!あ、ヤらないとここから出してあげないからぁ。うちのお店を荒らしまくった、お・し・お・き・よーん!じゃあねーん。見てるから、早く始めてちょーだぁい」
口元がうっすら赤くなっているダーナーが、どんよりとした目でジョージを見た。ジョージも死んだ魚のような目でダーナーを見た。
今日は休日だが、明日は普通に仕事だ。現在時刻は夜の8時過ぎ。ジョージは帰って新品の玩具で遊んで寝る気満々だった。顔色が悪いダーナーが、ぎぎぎっとぎこちない動きで大きなベッドの方を見て、ぐだぁっとその場に倒れ伏した。
「……嘘だろ……何でよりにもよってこんな変態と……」
「こっちの台詞だ被虐趣味野郎」
「違うと言っている変態」
「お前の方が変態」
「お前以上の変態がこの世にいるか変態」
「「…………」」
ジョージとダーナーは再び無言で殴りあった。
***
ジョージとダーナーは、荒い息を吐きながら、ぐったりと無駄に大きなベッドに寝転がっていた。腕時計を見れば、地下室の閉じ込められて既に1時間半近く過ぎている。実に無駄な時間を過ごしてしまった。
ジョージの自宅からこの店まで、徒歩で1時間はかかる。自宅から職場までは、乗り合い馬車も使って片道40分程。自分用の馬車なんてものはない。伯爵家出身の王宮勤めとはいえ、所詮は跡取りとは無縁の三男坊。就職を機に家から出された後は、自分で家を借り、2人の通いの使用人を雇うので精一杯である。身支度や仕事の準備に必要な時間を考えたら、どれだけ遅くとも朝の4時にはここを出なければ仕事に遅れる。というか、出してもらわないと仕事に行けない。
ジョージは今のところ無遅刻無欠勤である。ジョージは見た目がチャラく見えるらしく、不真面目そうに思われることが多いので、決められた時間は必ず守るようにしているし、仕事もいつも真面目にしている。正直に言えば、真面目が服を着ているみたいな見た目のダーナーが少し羨ましい。眼鏡か。自分も眼鏡をかければ真面目そうに見られるのか。ジョージは現実逃避も兼ねて、どうでもいいことを少し考えた。
隣でむすっとした顔で黙り込んでいたダーナーが口を開いた。
「……おい」
「……なに」
「本当にヤるしかないのか」
「ピンクちゃん怒らせちゃったからな。ピンクちゃんは顔がめちゃくちゃ広いから、下手すれば王都のまともな連れ込み宿がまるっと使えなくなるかもな」
「……何者だ?あの店長」
「噂じゃ、花街取り仕切ってるデカい組織の身内らしいぜ。まともな連れ込み宿は基本的に花街にしかない。花街以外にもあるけど、質が悪かったり、ぼったくりだったり、何かとヤバい噂があるところだったりで、安心して女を連れていける所は殆んどないな」
「嘘だろ」
「マジだ。ていうか、ここから急いで出してもらわないと、明日は普通に仕事だぞ」
「……最悪だ」
「全くだ」
ジョージとダーナーは同時に大きな溜め息を吐いた。
***
ジョージはダーナーの目の前に仁王立ちして、憂鬱な溜め息を吐いた。事前準備をして戻ってきたばかりである。
ダーナーを抱くのは嫌だし、早く帰らねばならない。アナル未経験なダーナーよりも、中イキだってできちゃう素敵なアナニー上級者の自分が抱かれた方が多分早く終わるし、まだマシだろうということで、覗き穴から覗いているであろうピンクちゃんに声をかけ、建物内にあるトイレとシャワーを借りて、諸々の準備をしてきた。買う予定だったディルドを使ってアナルを慣らしながら、ジョージは虚しさを感じた。本当なら今頃これで楽しくアナニーしまくってイキまくっていたのに、何が悲しくてダーナーなんぞのペニスを咥え込まなければいけないのかと。虚しすぎてペニスの勃ちもいまいちである。とりあえずダーナーのペニスが入ればいいかと程々で切り上げ、監視兼案内役の筋肉ムキムキ店員と共に元の場所に戻った。
ジョージはもう1度溜め息を吐いて、その場で服を脱ぎ始めた。心底嫌だが、ヤらねばなるまい。死んだ魚みたいな目をしたダーナーも服を脱いでいる。お互い文官なので、似たような体格である。そこそこ締まっているが、筋肉ムキムキには遠い身体つきだ。チラッとダーナーのペニスを見れば、中々いい形と大きさをしている。ダーナーのくせに、と若干イラッとする。遅漏だったら全力で殴ろうと心に決め、ジョージは無言でローションのボトルを手に無駄に大きなベッドに上がった。
ジョージはベッドの上に四つん這いになった。ダーナーの顔を見ながらだと、確実に萎える。どうせヤるなら多少なりとも気持ち良くなりたい。自動で動いてくれるディルドが入ってくるだけだと自分に言い聞かせ、ベッドの側にいるダーナーに顔を向けた。
「さっさと勃たせて突っ込め。そんで一瞬で出しやがれ早漏野郎。ちんこにローション塗るの忘れんなよ」
「誰が早漏だ淫乱野郎。お前相手にすぐに勃つか」
「勃たせろよ、ふにゃちん野郎。早くここから出たいんだよ。俺は」
「ケツの穴ガバガバ過ぎてイケなかったらお前のせいだからな。ガバまん野郎」
「殴る」
「上等」
ジョージは額に青筋を浮かべながら起き上がり、再び全裸のダーナーと殴りあった。
***
また無駄な時間を過ごした2人は、お互いどんよりと濁った目をしてベッドの上にいた。
ジョージは無言でダーナーに背を向け、四つん這いになった。無駄な時間のせいで微妙に乾いていたアナルには、再びローションを塗ってある。本当に遅漏だったら無駄に形がいいダーナーの鼻が折れるまでダーナーを全力で殴ろうと心に決め、ジョージは、背後で自分のペニスを擦って勃起させているであろうダーナーのペニスが、自分のアナルへ入ってくるのを待った。
女の柔らかい手とは全然違うゴツいダーナーの手がジョージの尻に触れ、ジョージのアナルを露にするように尻たぶを広げた。少しの沈黙の後、ジョージのアナルに熱くて固いものが触れる。さようなら、俺の処女。ダーナーなんかで一生する気がなかった処女喪失をするなんて。
ジョージはシーツを睨み付けながら、ゆっくりと自分のアナルの中に入ってくる熱くて固くて太くて長い本物のペニスの感覚に腰を震わせた。ディルドとは違う、粘膜同士が擦れあう初めての感覚に、ジョージは思わず熱い溜め息を吐いた。あ、ヤバい。これ気持ちいいやつだ。ジョージは自分の狭いアナルの中をみっちり満たして、内壁をゆっくり擦ってくるペニスの刺激に、ペニスの持ち主がダーナーだということを忘れて、小さく喘いだ。ヤバい。生のペニス、マジで気持ちいい。ゆっくりと長いストロークでペニスを抜き差しされ、太いカリが前立腺を擦る度に堪らない快感が身体中に広がる。ジョージは腰をくねらせ、喘ぎまじりの荒い吐息を吐いた。萎えていたジョージのペニスは予想外の快感にガチガチに勃起して、先走りが出まくっている感じがする。自分の意思で動かすバイブやディルドとは違う、予想がつかない熱くて固いペニスの動きに堪らなく興奮する。ジョージは相手が心底ムカつくダーナーだということをすっかり忘れて、快感に浸った。最初はまるでジョージのアナルをじっくり味わうようにゆっくりだったペニスの動きが次第に激しくなり、そのうちパンパンッと肌がぶつかり合う音がする程激しく下腹部を尻に打ち付けられ、強く速くジョージのアナルの中をペニスが突き上げてくる。腰を強く掴まれ、長いストロークで勢いよく熱くて固いペニスがアナルを行き来して、内壁を擦り上げ、前立腺をゴリッと擦り、アナルの入り口らへんの感じやすい部分もガンガン刺激してくる。ジョージは本当に相手がダーナーだということを忘れて、初めての生ペニスがもたらす快感に夢中になった。
「あっ!あぁっ!あ!いいっ!いいっ!あぁっ!」
ジョージは脳ミソが蕩けるような快感に口角を上げて喘いだ。だらしなく涎を垂らして喘いでいると、肩をぐっと掴まれた。肩を引かれるままに上体を起こすと、腹に腕を回され、ダーナーに背後から抱き締められる状態で激しくアナルを突き上げられた。
「あ!あ!あ!あ!あ、いっっっってぇぇぇぇ!!」
堪らない快感に酔っていた次の瞬間、右の肩に激痛が走った。強く噛みつかれ、ギリギリッと更に強く歯が肩に食い込んでいる感じがする。快感で蕩けていた脳ミソが一気に素面へと戻るくらい痛い。ジョージは首を左に傾け、自分の右肩に噛みついているダーナーの頭にガッと自分の頭をぶつけた。
「ぐっ!」
「くっ……そ、いてぇ!!」
ぶつけた側頭部が痛いが、それ以上に痛かった右肩からダーナーの口が離れた。ジョージは後ろ手にダーナーの頭を両手で掴むと、ダーナーの顔面に思いっきり後頭部をぶつけた。
「がっ!」
後頭部も痛くなるが、折角いい感じに気持ち良くなっていたのに邪魔をされたのが非常に腹立たしい。ジョージがダーナーの頭から両手を離して首だけで振り返れば、ダーナーが鼻を押さえて呻いていた。かけていた筈の眼鏡が外れている。ジョージは微妙に涙目になっているダーナーを睨んだ。
「何噛んでんだクソ野郎」
「……つい」
「つい、じゃねぇよ。くっそ。がっつり歯形ついてんじゃん。ふざけんな馬鹿野郎。くそ痛ぇ。お前女にもこんな感じで噛みついてるわけ?」
ダーナーが気まずそうな顔で目を逸した。控えめに言っても最低と罵っていい程、肩が痛い。痛すぎてペニスが萎えたレベルで痛い。自分の右肩を見れば、くっきり歯形がついている。じんじん痛む右肩を撫でながら、ジョージは舌打ちをした。
「次噛んだら殴る」
「……分かった」
ジョージの気持ちもペニスも萎えたが、腹が立つことにアナルの中のダーナーのペニスはガチガチに勃起したままだ。嗜虐趣味な上に被虐趣味かよ、とジョージはまた舌打ちをして、ダーナーにまた噛まれないように上体を下ろして四つん這いになった。再びダーナーのペニスが動き始める。ジョージの反応がいい所をもう把握したのか、ダーナーがジョージの前立腺をカリの部分でぐりぐり強めに擦ってきた。
「んあっ!」
身体に広がり始めた強い快感にジョージは思わず腰をくねらせた。ダーナーが腰を動かしながら、ジョージの腰や尻を撫で回してくる。触れるか触れないかという絶妙なタッチでジョージの肌を撫でるダーナーの手の感触が気持ちいい。ジョージの身体が再びじわじわ熱を持った。ジョージは目を閉じて、堪らない快感に酔い始めた。
***
ガブッ。
「いってぇぇぇぇ!!」
バシーーンッ。
ガブッ。
「いっっってぇぇぇ!!」
バシーーンッ。
ガブッ。
「……痛ぇっつってんだろうがごらぁ!!」
バシバシバシバシバシッ。
ジョージは腰を動かしてダーナーのペニスを素早くアナルから引き抜くと、背後のダーナーに向かい合い、ダーナーの首を片手で掴んで、全力で往復ビンタをした。何度も噛みつかれた肩が痛い。気持ち良くなって、快感に夢中になってきたタイミングで噛まれて痛すぎて萎え、ダーナーに平手打ちをし、全然萎えないダーナーが再び腰を動かし始めて、また噛まれるということを何度か繰り返した結果、ジョージは本気でキレた。
ジョージはペニスを勃起させたままの、両頬を真っ赤に腫らしたダーナーをベッドの上に正座させ、ベッドの上で仁王立ちした。
「言い訳を聞かせてもらおうか」
ジョージが額に青筋を浮かべて、にっこり笑うと、ダーナーが目を泳がせた。
「……興奮すると、つい……」
「犬かお前は」
「誰が犬だ」
「がぶがぶ噛みやがって。ふざけんなよ駄犬。遅漏。腐れド変態」
「……尻にちんこ咥えこんでよがってる淫乱野郎に変態呼ばわりされる謂れはない」
「あ?」
「噛むのは癖なんだから仕方がないだろう!?」
「開き直ってんじゃねぇぞ駄犬!」
「誰が駄犬だ!淫乱!」
「誰が淫乱だクソ犬!男は皆気持ちいいこと大好きだろうが!」
ジョージとダーナーは、また殴りあった。
***
「……おい」
「……なんだ」
「お前の噛み癖をどうにかしろ」
「自分じゃどうにもできんから、ギャグボールなんてものを買いに来たんだろ」
「……筋金入りかよ」
ジョージは自分の鼻から垂れる鼻血を拭きながら、舌打ちをした。頬を真っ赤に腫らし、同じく鼻血を垂らしているダーナーが凛々しく整っている眉毛を情けなく下げた。
「その……悪い……」
「謝るくらいなら噛むな」
「無理だ」
「あ?」
「……お前の尻、めちゃくちゃ具合いいし……その、なんだ、あれだ……」
「どれだ」
「……お前が乱れると、興奮する」
「はぁ?」
「し、仕方がないだろう!?いつも愛想が良くて要領もいい誰にでも好かれるお前が俺の下で喘いでるんだぞ!?」
「意味が分からん」
本当に意味が分からない。ジョージのアナルが最高なのは単なる事実として、その後のダーナーの発言の意味が理解できない。ジョージは首を傾げた。ダーナーがジョージから目を反らし、早口で何やらボソボソ言い始めた。
「俺はお前みたいに誰にでも愛想よくはできないし先輩達からは好かれていないし要領もよくないからお前みたいに仕事が早いわけじゃないし女を楽しませてやることもできないし」
「うん?」
「小粋な冗談で話を盛り上げることもできないし……」
ボソボソだらだら垂れ流し始めたダーナーを、ジョージはキョトンとした顔で眺めた。いつも真面目で堅物で、職場では理路整然とした発言をし、常にピシッと背筋を伸ばしているダーナーは、意外なことに劣等感の塊らしい。だらだらとした散文的なダーナーの話を要約すると、どうもジョージは、ダーナーにとっては自分もそうでありたいと願う理想らしい。その理想が自分に抱かれて乱れて喘ぐのが非常に興奮すると。正直いまいち理解できない。
ジョージは首を傾げて、気まずそうな顔をしているダーナーに質問した。
「結局なに?お前、俺が好きなわけ?」
「はぁ!?何でそうなる!?」
ダーナーが眉間に皺を寄せて、『全然違うっ!』と言っているが、その顔は真っ赤である。ジョージが殴ったり平手打ちした場所以外も赤くなっており、なんなら耳や首筋まで赤く染まっている。図星か。好きな相手、つまり俺とセックスしちゃってるものだから、興奮して、ついつい噛んでしまうと。ジョージは納得すると同時に、ギャンギャン否定しているダーナーを生温い目で見た。
「そっかそっかー。俺が好きかー」
「ちっ、違う!!」
「うんうん。そうだな。俺が好きなんだな」
「だから違うと言っている!!」
「じゃあ何でずっと勃ちっぱなしなわけ?お前」
とても間抜けな話なのだが、ダーナーは未だに勃起したままだ。ダーナーはペニスを勃起させたままジョージと殴りあいをし、ベッドの上に座って話している今でさえペニスが勃って反り返っている。ジョージがダーナーのペニスを指差して聞くと、ダーナーが言葉に詰まった。気まずそうに目を泳がせるダーナーを、ジョージはニヤニヤして眺めた。
「何で?」
「それは……」
「それは?」
「……お、お前が……裸でいるし……」
「やっぱ好きなんじゃねぇか」
「ち、ちがっ……」
「俺を抱きたい?」
ジョージが真っ直ぐダーナーの深い蒼の瞳を見つめると、ダーナーが暫く沈黙した後、本当に小さな声で呟いた。
「……抱きたい」
ジョージはニッと笑って、ダーナーの顎を片手で掴み、ダーナーの瞳を真っ直ぐに見つめながら宣言した。
「それじゃあ躾の時間の始まりだ」
ダーナーがジョージの瞳を見つめながら、こくっと生唾を飲んだ。
***
ジョージは正常位でダーナーのペニスを受け入れながら、快感に身体を震わせ、喘いでいた。ジョージの身体に覆い被さって腰を激しく振っているダーナーの首に両腕を絡め、首筋をダーナーにやんわりと噛まれている。肌に優しく歯が当たり、舌を這わされながら、あむあむ優しく噛まれる。優しく気持ち良くなれる力加減でダーナーが噛めるようになるまでに、何度教育的指導という名の平手打ちと頭突きをしたのか覚えていない。肩を中心に、ジョージの身体には何ヵ所もくっきりと歯形がついてしまっている。
激しくジョージの奥を突き上げていたダーナーが、腰を緩急つけて動かしながら、今度は喘ぐジョージの唇に噛みついてきた。あむあむと優しく下唇を噛まれる。ジョージが舌を伸ばすと、ダーナーがジョージの舌を舐め、舌にも軽く噛みついた。ジョージがダーナーの唇に吸いつき、優しい甘噛みを褒めるようにダーナーの頭を撫でると、超至近距離にあるダーナーの瞳が嬉しそうに輝いた。やっぱり犬だな。ジョージの鼻を甘噛みしながら腰を激しく振ってジョージに強烈な快感を与えてくるダーナーが、ほんの少しだけ可愛い。本当にほんの少しだけ。
ジョージはダーナーの腰に両足を絡め、再び唇を噛んでくるダーナーの頭を撫でながら、心行くまで快感に溺れた。
***
「完全に遅刻だ」
痛む腰を擦りながら、疲れた身体で店の外に出ると、朝日が昇ってすっかり明るくなっていた。ジョージは溜め息を吐いた。折角今まで無遅刻無欠勤だったのに。腰が痛いし、なんだかんだで長時間ダーナーのペニスが入っていたアナルも熱を持っている感じがする。殴りあったり噛みつかれまくったので、身体の色んな所が鈍く痛む。
ジョージの隣に立つ微妙に皹が入った眼鏡をかけているダーナーが、いつもは整髪剤で後ろに流している少し長めの前髪をかき上げた。
「ジョージ」
「ん?」
「その……ここからなら俺の家の方が近い」
「あ?そうなのか?」
「あぁ。職場には使用人に連絡しに行ってもらう。とりあえず俺の家で休んだ方がいい」
「……襲うなよ?」
「お、襲わないっ!」
「ふーん。なんだ。襲わないのか」
「は?え?」
間抜け面をするダーナーの微妙に赤く腫れた頬を、ジョージは指先で摘まんで軽く引っ張った。
「で?俺が寝るのは客間?お前の寝室?」
ダーナーの顔が真っ赤になった。ジョージはニヤニヤしながら、ダーナーの赤い頬をペチペチと軽く叩いた。
「冗談だ。バーカ。俺にお前の家で寝てほしかったら、精々頑張って口説いてみれば?」
「……ぐっ……くそっ。今に見てろよ!」
「ぶはっ。がんばれー?犬っころ」
「犬言うな!」
ぎゃんぎゃん吠えているダーナーを置いて、ジョージは自宅へ向かって、さっさと歩き始めた。慌ててジョージを追いかけきて隣に並んだダーナーを、ジョージはチラッと見た。
もしかしたらそのうち犬を飼うことになるかもしれない。噛み癖がある可愛げがない眼鏡をかけた犬を。ジョージは歩きながら、クックッと小さく笑った。
〈おしまい〉
ジョージは浣腸セットと数本のバイブとディルド、ローションの大きなボトルを両手に抱えたまま固まった。目の前には同じ様に固まっている男がいる。職場のいけすかない同僚であるダーナーだ。ダーナーの手にはギャグボールが握られている。
ジョージとダーナーは同時に口を開いた。
「「変態」」
何とも言えない空気が2人の間を流れる。ジョージもダーナーも王宮に勤める文官である。2人は同期で共に28歳。出自も同じくらいの規模の財力や領地を持つ伯爵家で、お互い跡取りとは無縁の三男坊である。顔立ちは若干方向性が違うが、2人とも男前で、女にモテる。何かと比較されやすいジョージとダーナーは普通に仲が悪かった。
ダーナーがいつものように眼鏡をくいっと上げた。
「そんなものを恋人に使う気か変態」
ジョージは鼻でふんっと笑った。
「使うわけないだろうが。そっちこそ、そんなもん女に使うなんざ最低だな変態」
「「誰が変態だ!これは自分用だっ!」」
ハモった。また何とも言えない空気が流れた。
ジョージは女とセックスをするのも好きだが、それ以上にアナニーをするのが大好きである。エロいことに興味津々だった10代の頃に前立腺の噂を聞き、物は試しとやってみて、見事にどハマりした。アナニー歴10年の、もはやアナニーのプロである。ちなみに処女だ。アナニーは大好きだが、男に抱かれる気なんて更々ない。
「やっぱり変態じゃないか。ジョージ」
「いや、お前程じゃねぇよ。被虐趣味のド変態野郎」
「違うっ!誰が被虐趣味のド変態野郎だっ!!」
「お前」
「これはっ……噛みつく癖があるから、ヤりたいならつけろと言われて……」
「え?何?毎回女噛んでんの?うわ、サイテー」
「う、うるさいっ!仕方がないだろう!興奮するとついやってしまうのだからっ!」
「さーいてーい」
「……そういうお前だって、男を咥え込むのが好きとは思わなかったな。女を食い捨てするような最低男が、まさかの男好きとは」
「違うわっ!アナニーが趣味なだけだっ!男なんぞ気持ち悪いっ!」
「どっちにしろ変態」
「世の中のアナニー好きに謝れ」
「誰が謝るか変態」
「そんなもん使ってまでセックスするお前の方が変態」
「俺だって、こんなもん使いたくないわっ!」
「はーん?どうだか?」
「くっそ……最悪だ。こんな変態に見られるなんて……」
「誰が変態だ。善良なアナニー好きに対して、あまりにも酷い言い草。慰謝料として、お前がこいつらの代金払えよ」
「ふざけんな」
2人は互いにメンチを切りながら、じわじわと近寄りあった。
「ジョージ。お前のことは前々から気にくわなかった」
「奇遇だなぁ。ダーナー。俺もだ」
「「ぶっ飛ばす」」
ジョージとダーナーは、筋肉ムキムキな店員から力ずくで止められるまで、狭い大人の玩具専門店の店内で殴りあった。
***
「で?」
「何が」
「どうすんだよ」
「……どうしようもない」
2人は大人の玩具専門店の地下室に閉じ込められていた。『仲直りするまで出さないわよぉ』と、ジョージと仲がいい店長であるムキムキマッチョなオカマに2人まとめて閉じ込められた。買う予定だったものと、オマケだと言ってデカいローションのボトルも地下室に一緒に放り込まれた。ヤれってか。ヤれっていうのか。
冷静になると、完全に馬鹿なことをしてしまった気がする。ジョージがアナニー好きなことを知っているのは、この馴染みの店のオカマ店長だけだ。流石に恥ずかしくて、誰にも知られたくなかった。ジョージの秘密がよりにもよって嫌いなダーナーに知られてしまったと、思わず動揺してしまったのが悪かった。ジョージは人を殴ったことなどないので、ダーナーを殴った拳や手首が地味に痛い。
何故かデカいベッドがある地下室の固い石の床に座り込んでジョージが項垂れていると、地下室の入り口の扉がドンドンと強めにノックされ、扉の向こうからピンクちゃん(店長)の声が聞こえてきた。
「はぁーい。2人ともー。喧嘩して荒らしたお店の損害賠償としてぇー、面白いものを見せてちょーだぁい。ここねぇー、覗き穴がいっぱいあるお部屋なのぉー。素敵なショーを見せてねぇー」
「「……は?」」
「楽しいセックスでぇー、なーかーなーおーりー!」
「「はぁぁぁぁぁ!?」」
「よろしくぅー!あ、ヤらないとここから出してあげないからぁ。うちのお店を荒らしまくった、お・し・お・き・よーん!じゃあねーん。見てるから、早く始めてちょーだぁい」
口元がうっすら赤くなっているダーナーが、どんよりとした目でジョージを見た。ジョージも死んだ魚のような目でダーナーを見た。
今日は休日だが、明日は普通に仕事だ。現在時刻は夜の8時過ぎ。ジョージは帰って新品の玩具で遊んで寝る気満々だった。顔色が悪いダーナーが、ぎぎぎっとぎこちない動きで大きなベッドの方を見て、ぐだぁっとその場に倒れ伏した。
「……嘘だろ……何でよりにもよってこんな変態と……」
「こっちの台詞だ被虐趣味野郎」
「違うと言っている変態」
「お前の方が変態」
「お前以上の変態がこの世にいるか変態」
「「…………」」
ジョージとダーナーは再び無言で殴りあった。
***
ジョージとダーナーは、荒い息を吐きながら、ぐったりと無駄に大きなベッドに寝転がっていた。腕時計を見れば、地下室の閉じ込められて既に1時間半近く過ぎている。実に無駄な時間を過ごしてしまった。
ジョージの自宅からこの店まで、徒歩で1時間はかかる。自宅から職場までは、乗り合い馬車も使って片道40分程。自分用の馬車なんてものはない。伯爵家出身の王宮勤めとはいえ、所詮は跡取りとは無縁の三男坊。就職を機に家から出された後は、自分で家を借り、2人の通いの使用人を雇うので精一杯である。身支度や仕事の準備に必要な時間を考えたら、どれだけ遅くとも朝の4時にはここを出なければ仕事に遅れる。というか、出してもらわないと仕事に行けない。
ジョージは今のところ無遅刻無欠勤である。ジョージは見た目がチャラく見えるらしく、不真面目そうに思われることが多いので、決められた時間は必ず守るようにしているし、仕事もいつも真面目にしている。正直に言えば、真面目が服を着ているみたいな見た目のダーナーが少し羨ましい。眼鏡か。自分も眼鏡をかければ真面目そうに見られるのか。ジョージは現実逃避も兼ねて、どうでもいいことを少し考えた。
隣でむすっとした顔で黙り込んでいたダーナーが口を開いた。
「……おい」
「……なに」
「本当にヤるしかないのか」
「ピンクちゃん怒らせちゃったからな。ピンクちゃんは顔がめちゃくちゃ広いから、下手すれば王都のまともな連れ込み宿がまるっと使えなくなるかもな」
「……何者だ?あの店長」
「噂じゃ、花街取り仕切ってるデカい組織の身内らしいぜ。まともな連れ込み宿は基本的に花街にしかない。花街以外にもあるけど、質が悪かったり、ぼったくりだったり、何かとヤバい噂があるところだったりで、安心して女を連れていける所は殆んどないな」
「嘘だろ」
「マジだ。ていうか、ここから急いで出してもらわないと、明日は普通に仕事だぞ」
「……最悪だ」
「全くだ」
ジョージとダーナーは同時に大きな溜め息を吐いた。
***
ジョージはダーナーの目の前に仁王立ちして、憂鬱な溜め息を吐いた。事前準備をして戻ってきたばかりである。
ダーナーを抱くのは嫌だし、早く帰らねばならない。アナル未経験なダーナーよりも、中イキだってできちゃう素敵なアナニー上級者の自分が抱かれた方が多分早く終わるし、まだマシだろうということで、覗き穴から覗いているであろうピンクちゃんに声をかけ、建物内にあるトイレとシャワーを借りて、諸々の準備をしてきた。買う予定だったディルドを使ってアナルを慣らしながら、ジョージは虚しさを感じた。本当なら今頃これで楽しくアナニーしまくってイキまくっていたのに、何が悲しくてダーナーなんぞのペニスを咥え込まなければいけないのかと。虚しすぎてペニスの勃ちもいまいちである。とりあえずダーナーのペニスが入ればいいかと程々で切り上げ、監視兼案内役の筋肉ムキムキ店員と共に元の場所に戻った。
ジョージはもう1度溜め息を吐いて、その場で服を脱ぎ始めた。心底嫌だが、ヤらねばなるまい。死んだ魚みたいな目をしたダーナーも服を脱いでいる。お互い文官なので、似たような体格である。そこそこ締まっているが、筋肉ムキムキには遠い身体つきだ。チラッとダーナーのペニスを見れば、中々いい形と大きさをしている。ダーナーのくせに、と若干イラッとする。遅漏だったら全力で殴ろうと心に決め、ジョージは無言でローションのボトルを手に無駄に大きなベッドに上がった。
ジョージはベッドの上に四つん這いになった。ダーナーの顔を見ながらだと、確実に萎える。どうせヤるなら多少なりとも気持ち良くなりたい。自動で動いてくれるディルドが入ってくるだけだと自分に言い聞かせ、ベッドの側にいるダーナーに顔を向けた。
「さっさと勃たせて突っ込め。そんで一瞬で出しやがれ早漏野郎。ちんこにローション塗るの忘れんなよ」
「誰が早漏だ淫乱野郎。お前相手にすぐに勃つか」
「勃たせろよ、ふにゃちん野郎。早くここから出たいんだよ。俺は」
「ケツの穴ガバガバ過ぎてイケなかったらお前のせいだからな。ガバまん野郎」
「殴る」
「上等」
ジョージは額に青筋を浮かべながら起き上がり、再び全裸のダーナーと殴りあった。
***
また無駄な時間を過ごした2人は、お互いどんよりと濁った目をしてベッドの上にいた。
ジョージは無言でダーナーに背を向け、四つん這いになった。無駄な時間のせいで微妙に乾いていたアナルには、再びローションを塗ってある。本当に遅漏だったら無駄に形がいいダーナーの鼻が折れるまでダーナーを全力で殴ろうと心に決め、ジョージは、背後で自分のペニスを擦って勃起させているであろうダーナーのペニスが、自分のアナルへ入ってくるのを待った。
女の柔らかい手とは全然違うゴツいダーナーの手がジョージの尻に触れ、ジョージのアナルを露にするように尻たぶを広げた。少しの沈黙の後、ジョージのアナルに熱くて固いものが触れる。さようなら、俺の処女。ダーナーなんかで一生する気がなかった処女喪失をするなんて。
ジョージはシーツを睨み付けながら、ゆっくりと自分のアナルの中に入ってくる熱くて固くて太くて長い本物のペニスの感覚に腰を震わせた。ディルドとは違う、粘膜同士が擦れあう初めての感覚に、ジョージは思わず熱い溜め息を吐いた。あ、ヤバい。これ気持ちいいやつだ。ジョージは自分の狭いアナルの中をみっちり満たして、内壁をゆっくり擦ってくるペニスの刺激に、ペニスの持ち主がダーナーだということを忘れて、小さく喘いだ。ヤバい。生のペニス、マジで気持ちいい。ゆっくりと長いストロークでペニスを抜き差しされ、太いカリが前立腺を擦る度に堪らない快感が身体中に広がる。ジョージは腰をくねらせ、喘ぎまじりの荒い吐息を吐いた。萎えていたジョージのペニスは予想外の快感にガチガチに勃起して、先走りが出まくっている感じがする。自分の意思で動かすバイブやディルドとは違う、予想がつかない熱くて固いペニスの動きに堪らなく興奮する。ジョージは相手が心底ムカつくダーナーだということをすっかり忘れて、快感に浸った。最初はまるでジョージのアナルをじっくり味わうようにゆっくりだったペニスの動きが次第に激しくなり、そのうちパンパンッと肌がぶつかり合う音がする程激しく下腹部を尻に打ち付けられ、強く速くジョージのアナルの中をペニスが突き上げてくる。腰を強く掴まれ、長いストロークで勢いよく熱くて固いペニスがアナルを行き来して、内壁を擦り上げ、前立腺をゴリッと擦り、アナルの入り口らへんの感じやすい部分もガンガン刺激してくる。ジョージは本当に相手がダーナーだということを忘れて、初めての生ペニスがもたらす快感に夢中になった。
「あっ!あぁっ!あ!いいっ!いいっ!あぁっ!」
ジョージは脳ミソが蕩けるような快感に口角を上げて喘いだ。だらしなく涎を垂らして喘いでいると、肩をぐっと掴まれた。肩を引かれるままに上体を起こすと、腹に腕を回され、ダーナーに背後から抱き締められる状態で激しくアナルを突き上げられた。
「あ!あ!あ!あ!あ、いっっっってぇぇぇぇ!!」
堪らない快感に酔っていた次の瞬間、右の肩に激痛が走った。強く噛みつかれ、ギリギリッと更に強く歯が肩に食い込んでいる感じがする。快感で蕩けていた脳ミソが一気に素面へと戻るくらい痛い。ジョージは首を左に傾け、自分の右肩に噛みついているダーナーの頭にガッと自分の頭をぶつけた。
「ぐっ!」
「くっ……そ、いてぇ!!」
ぶつけた側頭部が痛いが、それ以上に痛かった右肩からダーナーの口が離れた。ジョージは後ろ手にダーナーの頭を両手で掴むと、ダーナーの顔面に思いっきり後頭部をぶつけた。
「がっ!」
後頭部も痛くなるが、折角いい感じに気持ち良くなっていたのに邪魔をされたのが非常に腹立たしい。ジョージがダーナーの頭から両手を離して首だけで振り返れば、ダーナーが鼻を押さえて呻いていた。かけていた筈の眼鏡が外れている。ジョージは微妙に涙目になっているダーナーを睨んだ。
「何噛んでんだクソ野郎」
「……つい」
「つい、じゃねぇよ。くっそ。がっつり歯形ついてんじゃん。ふざけんな馬鹿野郎。くそ痛ぇ。お前女にもこんな感じで噛みついてるわけ?」
ダーナーが気まずそうな顔で目を逸した。控えめに言っても最低と罵っていい程、肩が痛い。痛すぎてペニスが萎えたレベルで痛い。自分の右肩を見れば、くっきり歯形がついている。じんじん痛む右肩を撫でながら、ジョージは舌打ちをした。
「次噛んだら殴る」
「……分かった」
ジョージの気持ちもペニスも萎えたが、腹が立つことにアナルの中のダーナーのペニスはガチガチに勃起したままだ。嗜虐趣味な上に被虐趣味かよ、とジョージはまた舌打ちをして、ダーナーにまた噛まれないように上体を下ろして四つん這いになった。再びダーナーのペニスが動き始める。ジョージの反応がいい所をもう把握したのか、ダーナーがジョージの前立腺をカリの部分でぐりぐり強めに擦ってきた。
「んあっ!」
身体に広がり始めた強い快感にジョージは思わず腰をくねらせた。ダーナーが腰を動かしながら、ジョージの腰や尻を撫で回してくる。触れるか触れないかという絶妙なタッチでジョージの肌を撫でるダーナーの手の感触が気持ちいい。ジョージの身体が再びじわじわ熱を持った。ジョージは目を閉じて、堪らない快感に酔い始めた。
***
ガブッ。
「いってぇぇぇぇ!!」
バシーーンッ。
ガブッ。
「いっっってぇぇぇ!!」
バシーーンッ。
ガブッ。
「……痛ぇっつってんだろうがごらぁ!!」
バシバシバシバシバシッ。
ジョージは腰を動かしてダーナーのペニスを素早くアナルから引き抜くと、背後のダーナーに向かい合い、ダーナーの首を片手で掴んで、全力で往復ビンタをした。何度も噛みつかれた肩が痛い。気持ち良くなって、快感に夢中になってきたタイミングで噛まれて痛すぎて萎え、ダーナーに平手打ちをし、全然萎えないダーナーが再び腰を動かし始めて、また噛まれるということを何度か繰り返した結果、ジョージは本気でキレた。
ジョージはペニスを勃起させたままの、両頬を真っ赤に腫らしたダーナーをベッドの上に正座させ、ベッドの上で仁王立ちした。
「言い訳を聞かせてもらおうか」
ジョージが額に青筋を浮かべて、にっこり笑うと、ダーナーが目を泳がせた。
「……興奮すると、つい……」
「犬かお前は」
「誰が犬だ」
「がぶがぶ噛みやがって。ふざけんなよ駄犬。遅漏。腐れド変態」
「……尻にちんこ咥えこんでよがってる淫乱野郎に変態呼ばわりされる謂れはない」
「あ?」
「噛むのは癖なんだから仕方がないだろう!?」
「開き直ってんじゃねぇぞ駄犬!」
「誰が駄犬だ!淫乱!」
「誰が淫乱だクソ犬!男は皆気持ちいいこと大好きだろうが!」
ジョージとダーナーは、また殴りあった。
***
「……おい」
「……なんだ」
「お前の噛み癖をどうにかしろ」
「自分じゃどうにもできんから、ギャグボールなんてものを買いに来たんだろ」
「……筋金入りかよ」
ジョージは自分の鼻から垂れる鼻血を拭きながら、舌打ちをした。頬を真っ赤に腫らし、同じく鼻血を垂らしているダーナーが凛々しく整っている眉毛を情けなく下げた。
「その……悪い……」
「謝るくらいなら噛むな」
「無理だ」
「あ?」
「……お前の尻、めちゃくちゃ具合いいし……その、なんだ、あれだ……」
「どれだ」
「……お前が乱れると、興奮する」
「はぁ?」
「し、仕方がないだろう!?いつも愛想が良くて要領もいい誰にでも好かれるお前が俺の下で喘いでるんだぞ!?」
「意味が分からん」
本当に意味が分からない。ジョージのアナルが最高なのは単なる事実として、その後のダーナーの発言の意味が理解できない。ジョージは首を傾げた。ダーナーがジョージから目を反らし、早口で何やらボソボソ言い始めた。
「俺はお前みたいに誰にでも愛想よくはできないし先輩達からは好かれていないし要領もよくないからお前みたいに仕事が早いわけじゃないし女を楽しませてやることもできないし」
「うん?」
「小粋な冗談で話を盛り上げることもできないし……」
ボソボソだらだら垂れ流し始めたダーナーを、ジョージはキョトンとした顔で眺めた。いつも真面目で堅物で、職場では理路整然とした発言をし、常にピシッと背筋を伸ばしているダーナーは、意外なことに劣等感の塊らしい。だらだらとした散文的なダーナーの話を要約すると、どうもジョージは、ダーナーにとっては自分もそうでありたいと願う理想らしい。その理想が自分に抱かれて乱れて喘ぐのが非常に興奮すると。正直いまいち理解できない。
ジョージは首を傾げて、気まずそうな顔をしているダーナーに質問した。
「結局なに?お前、俺が好きなわけ?」
「はぁ!?何でそうなる!?」
ダーナーが眉間に皺を寄せて、『全然違うっ!』と言っているが、その顔は真っ赤である。ジョージが殴ったり平手打ちした場所以外も赤くなっており、なんなら耳や首筋まで赤く染まっている。図星か。好きな相手、つまり俺とセックスしちゃってるものだから、興奮して、ついつい噛んでしまうと。ジョージは納得すると同時に、ギャンギャン否定しているダーナーを生温い目で見た。
「そっかそっかー。俺が好きかー」
「ちっ、違う!!」
「うんうん。そうだな。俺が好きなんだな」
「だから違うと言っている!!」
「じゃあ何でずっと勃ちっぱなしなわけ?お前」
とても間抜けな話なのだが、ダーナーは未だに勃起したままだ。ダーナーはペニスを勃起させたままジョージと殴りあいをし、ベッドの上に座って話している今でさえペニスが勃って反り返っている。ジョージがダーナーのペニスを指差して聞くと、ダーナーが言葉に詰まった。気まずそうに目を泳がせるダーナーを、ジョージはニヤニヤして眺めた。
「何で?」
「それは……」
「それは?」
「……お、お前が……裸でいるし……」
「やっぱ好きなんじゃねぇか」
「ち、ちがっ……」
「俺を抱きたい?」
ジョージが真っ直ぐダーナーの深い蒼の瞳を見つめると、ダーナーが暫く沈黙した後、本当に小さな声で呟いた。
「……抱きたい」
ジョージはニッと笑って、ダーナーの顎を片手で掴み、ダーナーの瞳を真っ直ぐに見つめながら宣言した。
「それじゃあ躾の時間の始まりだ」
ダーナーがジョージの瞳を見つめながら、こくっと生唾を飲んだ。
***
ジョージは正常位でダーナーのペニスを受け入れながら、快感に身体を震わせ、喘いでいた。ジョージの身体に覆い被さって腰を激しく振っているダーナーの首に両腕を絡め、首筋をダーナーにやんわりと噛まれている。肌に優しく歯が当たり、舌を這わされながら、あむあむ優しく噛まれる。優しく気持ち良くなれる力加減でダーナーが噛めるようになるまでに、何度教育的指導という名の平手打ちと頭突きをしたのか覚えていない。肩を中心に、ジョージの身体には何ヵ所もくっきりと歯形がついてしまっている。
激しくジョージの奥を突き上げていたダーナーが、腰を緩急つけて動かしながら、今度は喘ぐジョージの唇に噛みついてきた。あむあむと優しく下唇を噛まれる。ジョージが舌を伸ばすと、ダーナーがジョージの舌を舐め、舌にも軽く噛みついた。ジョージがダーナーの唇に吸いつき、優しい甘噛みを褒めるようにダーナーの頭を撫でると、超至近距離にあるダーナーの瞳が嬉しそうに輝いた。やっぱり犬だな。ジョージの鼻を甘噛みしながら腰を激しく振ってジョージに強烈な快感を与えてくるダーナーが、ほんの少しだけ可愛い。本当にほんの少しだけ。
ジョージはダーナーの腰に両足を絡め、再び唇を噛んでくるダーナーの頭を撫でながら、心行くまで快感に溺れた。
***
「完全に遅刻だ」
痛む腰を擦りながら、疲れた身体で店の外に出ると、朝日が昇ってすっかり明るくなっていた。ジョージは溜め息を吐いた。折角今まで無遅刻無欠勤だったのに。腰が痛いし、なんだかんだで長時間ダーナーのペニスが入っていたアナルも熱を持っている感じがする。殴りあったり噛みつかれまくったので、身体の色んな所が鈍く痛む。
ジョージの隣に立つ微妙に皹が入った眼鏡をかけているダーナーが、いつもは整髪剤で後ろに流している少し長めの前髪をかき上げた。
「ジョージ」
「ん?」
「その……ここからなら俺の家の方が近い」
「あ?そうなのか?」
「あぁ。職場には使用人に連絡しに行ってもらう。とりあえず俺の家で休んだ方がいい」
「……襲うなよ?」
「お、襲わないっ!」
「ふーん。なんだ。襲わないのか」
「は?え?」
間抜け面をするダーナーの微妙に赤く腫れた頬を、ジョージは指先で摘まんで軽く引っ張った。
「で?俺が寝るのは客間?お前の寝室?」
ダーナーの顔が真っ赤になった。ジョージはニヤニヤしながら、ダーナーの赤い頬をペチペチと軽く叩いた。
「冗談だ。バーカ。俺にお前の家で寝てほしかったら、精々頑張って口説いてみれば?」
「……ぐっ……くそっ。今に見てろよ!」
「ぶはっ。がんばれー?犬っころ」
「犬言うな!」
ぎゃんぎゃん吠えているダーナーを置いて、ジョージは自宅へ向かって、さっさと歩き始めた。慌ててジョージを追いかけきて隣に並んだダーナーを、ジョージはチラッと見た。
もしかしたらそのうち犬を飼うことになるかもしれない。噛み癖がある可愛げがない眼鏡をかけた犬を。ジョージは歩きながら、クックッと小さく笑った。
〈おしまい〉
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