帰りを待つ人

丸井まー(旧:まー)

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帰りを待つ人

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人通りが多い大通りを抜け、職人街に程近い所にある小さな武器屋。そこがガウディの小さな城である。売っているものは、ガウディが気に入った武器ばかりで、自画自賛ながら、いいものしか取り扱っていない。常連には、熟練の冒険者や騎士が多く、それなりに繁盛している。

日が暮れる頃。
ガウディが店仕舞いを始めていると、カランカランと店のドアにつけている鈴が鳴った。
入り口の所を見れば、1人の旅装の男が立っていた。白髪混じりの長い黒髪を適当に一つに括り、無精髭を生やした、丸眼鏡をかけている学者のような穏やかな顔をした男だ。
ガウディは男を見ると、右眉をくいっと上げた。


「よぉ。生きてたか」

「そりゃ生きてるさ。ただいま」

「おかえり。長かったな」

「まぁね。今度はシガリ地方まで行ってきたから」

「ふーん。飯は」

「まだ。一緒に食いに行こう」

「いいぜ。ちっと待ってろ」


旅装の男アリディオが機嫌よくゆるく笑った。

アリディオはガウディの伴侶である。アリディオは冒険者をしていて、穏やかな見て目に反して、苛烈な戦い方をすると聞く。実際、アリディオの身体には様々な古傷が多い。主に、魔物を討伐して素材を取ったりしている。

ガウディは店仕舞いを終わらせると、アリディオと一緒に店の外へ出た。
アリディオは伴侶だが、別に正式に結婚している訳ではない。所謂事実婚というやつだ。法的には、同性婚は認められていない。
ガウディは枯れ草みたいな色の髪と淡い緑色の瞳をした普通のおっさんである。痩身だが、最近、下っ腹が出てきたのを少し気にしている。

2人で馴染みの飲み屋に行くと、アリディオが草臥れた外套の中から、1本のナイフを取り出した。
ハッとする程、機能美に溢れた美しいナイフである。


「土産」

「誰の銘だ」

「さぁ?出先の露天で見つけて、お前が好きそうだから買ってきた」

「ふーん。ふむ。いい腕をしている。露天で売るなんざ勿体ねぇな。うちで仕入れてぇが、どこら辺で見つけた?」

「シガリ地方の小さな町だよ」

「遠すぎるな。片道3ヶ月はかかるじゃねぇか」

「そ。だから、これはお前への土産」

「ありがとな。部屋に飾る」

「あぁ」


ガウディは武器を眺めるのが好きだ。機能的で美しい武器は、見ているだけで心躍る。
アリディオはたまにこうしてガウディに何かしらの武器を買ってくる。ガウディはナイフすら使いこなせないが、美しい武器を眺めるのが大好きでコレクションをしているので、アリディオは旅先でいいものを見かけると買ってきてくれる。近場なら、その武器を作った職人が、新しい仕入先になったりもする。
ガウディはナイフを鞘から出して、じっくりと眺めた。本当に美しいナイフだ。重心もバランスがいいし、無駄のない切る為だけに磨かれたいい刃をしている。これを作った職人と交渉して、仕入先の一つにしたいが、片道3ヶ月は遠過ぎる。採算が合わないので、諦めるしかないだろう。

ナイフを眺めるガウディを、アリディオが頬杖をついて眺めている。
ガウディは武器に熱中し始めると、周りが見えなくなる癖がある。それを知っているから、アリディオは余計な口を挟んだりしない。時折、ガウディからの質問に答えるだけで、あとは運ばれてきた酒を静かに飲んでいる。
ガウディは気が済むまでナイフを眺めると、鞘におさめ、ふぅと満足気な溜め息を吐いた。


「マジでいいもんだな。近場なら仕入れに行けるのに」

「露天で売ってたからね。まだ駆け出しなんじゃないかな」

「駆け出しでこんだけのもんを作れるなら、そいつは大物になるぜ。そんだけ見事なもんだ」

「喜んでもらえて何より」

「飯が冷めちまうな。食うか」

「あぁ」


ガウディは貰ったナイフを草臥れた肩掛け鞄に大事に仕舞うと、適当に注文した料理を食べ始めた。ガウディは酒は飲まない。アリディオは酒が好きだが、ガウディは酒は美味いと思わない。珈琲の方が余程いい。
この店は飲み屋だが、頼めば珈琲も出してくれる。この珈琲が美味くて、アリディオが不在の時もよく来ている。料理も手頃な値段で美味いし、重宝している。

アリディオの旅の話を聴きながら、のんびりと夕食を楽しんで、ほろ酔いのアリディオと共に飲み屋を出た。
季節は初夏になり、昼間は汗ばむ程暑くなってきたが、夜はまだ涼しい。

暗くなった道を2人で歩き、武器屋の2階の自宅へと帰った。
ガウディの家は武器屋の2階で、狭い居間と台所、風呂トイレ以外には、寝室にしている部屋とコレクション置き場にしている狭い部屋しかない。
アリディオが旅装をとき、風呂に入っている間に、ガウディは新たに増えたコレクションを、キレイにコレクション部屋の棚に並べた。
アリディオと出会って、もう20年が過ぎた。その間に増えたコレクションは結構な数がある。ガウディの宝物である。

ガウディとアリディオの出会いは、お互いに18歳だった頃だ。アリディオはまだまだ冒険者としては駆け出しの頃で、武器を求めて店にやって来たのが始まりである。その頃、ガウディの父親が死に、ガウディが店を継いだばかりだった。
お互いにまだまだひよっこということで、なんとなく気が合い、アリディオが拠点としているこの街に帰ってくる度に、一緒に食事をしたりしていた。
ふとした事から身体の関係を持つようになり、それからは何年もずるずると身体だけの関係を続けていたのだが、お互い30になった年に、アリディオからプロポーズをされた。それまで『好き』だの『愛してる』だの言ったことがない癖に、突然プロポーズをしてきたアリディオに心底驚いたが、ガウディもアリディオに情が湧いていたので、黙って頷いた。

それからは、ガウディはアリディオの帰る場所になった。アリディオは根っからの冒険者気質で、旅をしていないと落ち着かない性分をしている。ついでに言うと、戦闘狂の気がある。
伴侶になっても、アリディオは冒険者としてフラフラと旅を続けているので、ガウディはいつもアリディオの帰りを待ちながら、武器屋の商売をしている。
アリディオに着いていく気はない。ガウディは三代前から続いている店をまだ畳むつもりはないし、ずっと生まれ故郷であるこの街で暮らしてきた。旅暮らしは性に合わない。女と結婚して子供をもたない以上、ガウディの代で武器屋は閉めることになるが、ガウディが生きている限りは店を続けるつもりである。

ガウディがコレクション部屋で、キレイに並べたコレクション達をうっとりと眺めていると、アリディオが顔を出した。


「出たぞ。湯が冷める前に入れよ」

「おう」


ガウディはコレクション部屋から出て、寝室に向かい、着替えを取ってから風呂場へと向かった。
今日は間違いなくセックスをするだろう。むしろ、セックスをするという選択肢しかない。ガウディはそろそろ39歳になるが、まだまだ枯れていないし、アリディオが不在の間は、たまに卑猥な道具を使って自分を慰めていただけなので、何がなんでもアリディオとセックスがしたい。男なんて皆気持ちがいい事が大好きなものである。ガウディだって、大好きだ。アリディオとのセックスは気持ちよくて、楽しくて、すごく好きだ。

ガウディは入念に身体を洗い、ゆっくりお湯に浸かって身体を温めると、脱衣場に出て、身体を拭いてから自分のアナルに浄化剤を入れた。座薬タイプの浄化剤は、アナルセックスの必需品である。浄化剤をアナルの中に入れると、中をキレイにしてくれる。服と一緒に持ってきていた浄化剤を入れ、中までキレイにしたら準備万端である。いつでもどんとこい。
ガウディは一応寝間着を着てから、アリディオが待つ寝室へと軽やかな足取りで向かった。

寝室に入ると、アリディオが全裸で待ち構えていた。この歳になってもガウディを求めてくれるのが酷く嬉しい。
ガウディは少し照れくさくなって、寝間着を脱ぎながら、アリディオが待つベッドに近づいた。


「ガウディ。早く」

「急かすな」

「急かしもする。久しぶりなんだ」

「あっそ」

「ちなみに、浮気の心配はしてないか?」

「あ?お前が浮気?ねぇだろ。お前、俺以外で満足できるのか」

「できる訳ないだろう」

「だったら、する必要ねぇだろ」

「まぁ、そうか。いやでも、少しくらいはして欲しいな」

「なんでだよ」

「複雑な男心かなぁ。娼婦も買ってない。溜まっている」

「明日は臨時休業だな」


ガウディはクっと機嫌よく笑って、アリディオの逞しい身体に飛び込むように抱きついた。
アリディオは着痩せをするタイプで、学者みたいな穏やかな顔立ちには似合わない逞しい身体つきをしている。無駄な脂肪なんてない筋肉質な身体には、古傷がいくつもある。

ガウディは抱きつくついでにアリディオの身体を押し倒して、アリディオの身体に跨り、アリディオの盛り上がった胸筋を撫で回しながら、じっくりとアリディオの身体を眺めた。


「怪我はねぇな」

「ないね。今回は大物とは遭遇しなかったからね」

「ふーん」


新しい傷が無いことを確認すると、ガウディはアリディオの身体に覆い被さって、アリディオの唇を吸い、ねろーっとアリディオの下唇に舌を這わせた。
眼鏡を外したアリディオの目が細まり、普段は穏やかな色合いの深い青い瞳が、一気に熱を孕んだ。獲物を狩る獣みたいに爛々と輝く瞳を見つめているだけで、射精してしまいそうなくらい興奮する。

アリディオがガウディの肩を掴んで、くるりと体勢を入れ替えた。アリディオに組み敷かれて、めちゃくちゃに口内を舐め回されながら、ガウディは機嫌よく目を細めた。

アリディオは舐めるのが好きだ。もう若さを感じない肌を、文字通り全身舐められる。まるで味見でもされているかのような気分になるが、それはそれで楽しいし、気持ちがいい。
足の指の股を舐め回されながら、ガウディはクックッと上機嫌に笑った。

背中もねっとりと舐められた後、四つん這いになったガウディのアナルをアリディオが舐め始めた。ガウディのアナルは長年使っているせいで、縦割れになってぷっくりしている。アナルの皺の間を広げるように丁寧に丁寧に舐められると、気持ちよくて勝手に腰が震えてしまう。
ガウディのアナルは、アリディオしか知らない。アリディオがガウディの身体を仕込んだ。今では全身性感帯と言っていいくらい、アリディオに触れられると感じてしまう。
アリディオが不在の間は卑猥な道具で自分を慰めていたが、いつだって物足りなくて、アリディオの熱が欲しくて堪らなかった。
ガウディは漸く与えられたアリディオの熱に低く笑いながら喘いだ。

ローションをたっぷり使って指でアナルを解される。ほんの一瞬でも早くアリディオのペニスが欲しくて、ガウディはわざとアナルに力を入れて、アリディオの指をきゅっと締めつけた。
背後のアリディオが楽しそうに笑った。


「もうちょっと我慢」

「誰がするか。さっさと寄越せ」

「はははっ。どうしようかな」

「お前だって欲しいんだろうが。痩せ我慢してねぇで突っ込みやがれ」

「ふはっ!ガウディ」

「あ?」

「お前のそういうところも好きだよ」

「そりゃどうも……っ、はっ、あぁっ……」


ずるりとアリディオの指がアナルから抜け出て、代わりに熱くて硬いものが欲しがってひくつくアナルの表面に触れた。ゆっくりと解して尚狭いアナルを押し拡げるようにして、アリディオの熱くて硬いペニスがガウディのアナルの中へと入ってくる。太くて長いペニスがガウディな直腸を擦りながら押し拡げ、前立腺をゴリッと擦り、更に奥深くにまで入ってくる。

ガウディは口角を上げて、堪らず喘いだ。ガウディの中がアリディオで満たされている。ずっと欲しかった熱が与えられて、充足感で胸がいっぱいになる。地味に脂肪が増えた腰を掴むアリディオの手の強さにも酷く興奮して、心が満たされる。
ガウディの中を味わうかのようにゆっくりと動いていたアリディオの動きが、どんどん激しくなっていく。シーツを強く掴んで、快感の嵐に翻弄されながら、四つん這いの状態をなんとか保っているガウディの肩に、アリディオが強く噛みついた。鋭い痛みと共に、ゾクゾクゾクッと興奮と快感が背を走り抜ける。
ガウディはアリディオに強く肩を噛みつかれながら、仰け反るように身体を震わせ、吠えるような声を上げながら、触れてもいないペニスから精液を飛ばした。

イッているガウディの奥深くを、更に激しくアリディオが突き上げてくる。内臓が内側から揺さぶられるような感じが、怖くて、気持よ過ぎて、もう本当に堪らない。
ガウディはあまりの快感に悲鳴じみた声を上げながら、うっとりと口角を上げた。

アリディオがガウディの腹に腕を回し、繋がったまま、シーツの上に座り込んだ。元々深く入っていたアリディオのペニスが、更に奥深くへと入り込んでくる。かはっと衝撃に掠れた息を吐くガウディの奥深くを、アリディオが容赦なく突き上げてくる。


「あっあっあーーっ!くっそ!たまんねぇ!!もっとだ!もっとよこせ!」

「ははっ!最高!」

「あぁっ!?」


アリディオがガウディの腹に逞しい片腕を回してガウディの身体を固定して、下からガンガン突き上げながら、空いている手で射精して萎えていたガウディのペニスを扱き始めた。漏れた精液や先走りで濡れたペニスの亀頭だけを掌でぐりゅんぐりゅんと強く擦られる。
過ぎた快感に目の裏がチカチカする。勝手にアナルがアリディオのペニスを締めつける。アリディオのペニスの形が分かるような気がするくらいアリディオのペニスをアナルで締めつけながら、ガウディは大きく吠えて、ぷしゃぁぁぁぁっとペニスから潮を吹いた。
過ぎた快感が地味に辛いが、まだまだ終わらない。アリディオは年々遅漏になりつつあり、今もガウディのアナルの中でガチガチに硬いままだ。

ガウディは生理的に溢れてきた涙を流しながら、だらしなく涎を垂らして、クックッと笑った。
クッソ気持ちよくて、クッソ楽しい。
ガウディは力が入らない手を無理矢理動かして、後ろ手にアリディオのうなじを掴んだ。首を捻って顔だけで振り返り、べーっと舌を伸ばせば、アリディオがめちゃくちゃに舌を舐め回してくる。

ガウディの腹の奥深くを容赦なく突き上げていたアリディオが動きを止め、ガウディの身体を軽々と持ち上げてアナルからペニスを引き抜いた。アリディオがガウディの身体をころんと仰向けにすると、ガウディの両足の膝裏を掴んで、足を大きく広げさせた。
そのまま、また一気にアリディオの太くて長い硬いペニスがガウディの腹の奥深くへと、ズンッと勢いよく入ってくる。
野太い悲鳴じみた声を上げながら、ガウディはアリディオの顔を真っ直ぐに見上げた。
アリディオの普段は穏やかな顔は、今は獲物を狙う猛禽みたいな鋭い表情をしている。普段とはかけ離れた表情をさせているのが自分だと思うと、酷く気分がいい。

ガウディはキツい程の快感によがりながら、アリディオを煽るようにアリディオの首に両腕を絡め、大きく口を開けて、べーっと舌を伸ばした。
アリディオがガウディの呼吸を奪うように、強くガウディの唇を吸って、めちゃくちゃに舌を絡め、口内を舐め回してくる。
ガウディはアリディオに激しく揺さぶられながら、アリディオがガウディの中に射精するまで、両腕を首に、両足を腰に絡めて、必死でアリディオの身体に縋りついた。






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ガウディは腰を中心とする身体のあちこちの痛みで目が覚めた。
低く唸りながら目を開ければ、全裸のアリディオが、ベッド横にある窓を開け、煙草を吸っていた。アリディオが煙草を咥え、窓の外に向かって煙を吐き出している。
いつもの丸眼鏡をかけたアリディオの顔は普段通りの穏やかなもので、ガウディは俯せのまま、顔だけ横を向けて、煙草を吸うアリディオの横顔を眺めた。
あっちこっち歯型がつく程噛みつかれたし、腰が死ぬんじゃないかと本気で思うくらい容赦なくガンガンペニスでアナルを突きまくられた。腰が本気で痛いし、アリディオのペニスで擦られまくったアナルも痛い。長時間アリディオのペニスを咥えこんでいたせいで、今でも何か入っているような感覚がする。
だが、それが最高にいい。事後の痛みは、ガウディに満足感を与えてくれる。アリディオに愛された証拠だからだ。

ガウディがのろのろと痛む身体で寝返りを打つと、アリディオが窓の外からガウディへと視線を移した。
アリディオが吸いかけの煙草を片手に、穏やかな顔で笑った。


「大丈夫?」

「クッソいてぇ」

「あらー。ごめんね。歯止めがきかなくてねぇ」

「別に構わん。いつまで居るんだ?」

「そうさねぇ。再来週くらいまでのんびりしようかな」

「次は何処に行くんだ」

「んー。バーナ地方にでも行くかな。一緒に行く?」

「行かねぇ」

「残念。とてもキレイな湿原があるのだけど」

「絵でも描いてくれればいいだろ」

「ははっ。僕に絵心なんてないのは知ってるだろう?」

「まぁな。猫が奇っ怪な生き物になるもんな」

「不思議だよね。猫のつもりで描いた筈なんだけどね」

「……へったくそでいいから、描いてこい。後は話を聴かせてくれりゃいい」

「おや。宿題?」

「宿題。ちゃんとやらねぇとお前のチン毛を全部毟りとる」

「それは嫌だなぁ。まぁ、頑張ってみるけど、期待はしないでおくれよ」

「おぅ」


アリディオが吸い終わった煙草を、ベッドのヘッドボードの上に置いている缶の灰皿の中に放り込み、するりとガウディの隣に寝転がった。
最近気にしている脂肪が増えた下っ腹をむにむにと揉まれる。
ガウディが無言でアリディオの頬を引っ張ると、アリディオが楽しそうに笑った。


「いい肉付きだよね」

「うるせぇ。こちとら気にしてんだよ」

「お前は痩せてるから、もう少し太った方がいいよ」

「下っ腹だけ出てるなんざ、みっともねぇだろ」

「そうかい?可愛いけどなぁ」

「お前の可愛いの基準が分からん」

「ははっ。僕が可愛いと思ったら、それは可愛いんだよ」

「あっそ」


ガウディは楽しそうに下っ腹の肉をむにむに揉んでくるアリディオを好きにさせながら、ころんと寝返りを打ち、アリディオの方を向いた。
アリディオの名前を呼ぶと、アリディオが触れるだけの優しいキスをしてくれる。いちいち何をしろと言わなくても察してくれるので助かる。

ガウディは1日、アリディオと一緒にダラダラとベッドの上で過ごした。

アリディオが気まぐれに店番を手伝ったり、次の旅への準備をしたりしていると、あっという間にアリディオが再び旅立つ日がやって来た。
ガウディは店を開ける前の時間に、アリディオを店の前で見送った。

アリディオが、次はいつ帰ってくるのか分からない。アリディオはフラフラしていないと落ち着かない性分だから仕方がない。もうとっくの昔に、そういうものだと諦めている。ガウディとずっと一緒に暮らし欲しいと思った事も無いではないが、そんな生活では、アリディオがアリディオのままでいられないだろう。フラフラと旅をして、魔物と戦って、色んな景色を見て、そうやってアリディオはアリディオとして在る。そんなアリディオが好きだから、無理に一緒に暮らすつもりはない。ただ、あちこちを飛び回るアリディオが、時折羽を休める場所であれたら、それでいい。

ガウディはアリディオの背中が見えなくなるまで店の前にいると、ぐっと背伸びをした。
ガウディにはガウディの暮らしがある。アリディオの帰る場所であり続ける為にも、まずは自分の生活をしなければ。

アリディオは例え魂になったとしても、ガウディの元へ帰ってくる。そう信じているから、いくらだって待ってやれる。
勿論、アリディオがいない寂しさは常に感じているが、ありのままのアリディオを愛してしまったのだから、まぁ仕方がない。

ガウディは気合を入れるようにピシャリと両手で頬を叩くと、早速開店準備を始めた。
何気なく空を見上げれば、雲一つない青空を、番と思われる二羽の鳥達が戯れ合うように飛んでいた。



(おしまい)
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