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第一章 辺境の地
19.部屋で
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私は空のお皿を満載にした配膳車をガラガラと押して厨房に行き、厨房のスタッフにお礼を言われて恐縮しながら部屋へ戻った。
暗い部屋のランプに火を灯すと、ベッドの上に何か置いてあるのが目に入った。
手燭の光をベッドサイドの燭台に移してからベッドの上を改めて見て、驚いた。
3着もの新しいドレスがベッドの上に広げてあった。
私は思わず手に取って、姿見の方へ向いて身体へあててみた。
わ…素敵。
豪華ではないけれど、普段着としては上等の細かい刺繍やレースが施してあるものだった。
こんなにたくさんのドレスを一度にもらったことがない。
しかも新調してもらうなんて、初めて。
嬉しい…けど、なんかこれを盾に家に帰してもらえないような気もする。
高揚していた気分が下がり、私はドレスをベッドの上に置いた。
ドレスの横に何かある。
何だろうと思って見ると、それは真新しい下着だった。
恥ずかしく思いながらも、正直なところとても有り難かった。
コルセットまで新しいのが置いてある。
仕立て屋のウルビーニか、エルダさんが揃えてくれたのだろうか。
ご主人様にお礼を言いたい。
だけど今日は無理かな…
そろそろ晩餐会も終わるだろうけど、お疲れだろうし…
エルダさんが「ご主人様」と呼んでいたので、私も便宜上そう言っているが、別に私のご主人様ではない。
かと言ってバルトロやシプリアノみたいに「隊長」というのもおかしいよね…私は討伐隊の隊員ではないし。
アドルナートが「ヴァラリオーティ様のお越しです」と呼ばわっていたっけ。
ヴァラリオーティ…聞いたことあるような気がする。
バルトロが「都じゃ偉い人なんだよ」と言ってた。
でも私が都の偉い人の名前を知っているわけもないし。
うーん。
私はクロゼットにドレスをしまい、下着を取り換えてベッドに横になった。
部屋の燭台の火は消し、手燭の灯りだけの灯る狭い部屋の天井をぼんやりと眺める。
今日は午後からは本当にいろんなことがあって、疲れた…
身体や傷の痛みもさほど気にならないくらいだった。
ご主人様という人は、なんだか不思議な人だ。
私を「気に入った」と言っていたけど、どういう意味なのか。
ドレスを誂えさせたり、南部訛りの発音を直させようとしたり、晩餐会に列席させるつもりだったようだし、私の想像を超えている。
これではまるで、夫人のようではないかしら…
都の偉い人ならば、都に奥方がいらっしゃるだろうから、妾とか現地妻のような感じ?
考えてぞっとする。
嫌だ、これでは都へご愛妾候補として行くのと変わらないじゃないの。
「逃げ出したりしないでくれ」と言っていたバルトロには悪いけど、また逃げたほうがいいのかな。
でも、まったく正体の知れない、山中で拾った(しかも姓も出自も言わない怪しさ満載の)女を、いくら少し気に入ったからって妾にしようと思うのかなあ?
だとしたら相当変わった人だよね。
拾った正体不明の女なら、都へ帰るとき、ぽいと棄てればいいってことなのか…?
私は手燭の灯りも吹き消して、ベッドにもぐりこんだ。
暖かい。有難い。
にぃ兄様…
どうしているだろう。
寒い山中で一人、私を探していたりしないだろうか。
いやそれとも、恋人の許へ帰ろうとしているのかしら…
にぃ兄様。どうかご無事で。
私は、クレメンティナは、今のところ元気でいます。
私は神に祈りを捧げ、眠りについた。
暗い部屋のランプに火を灯すと、ベッドの上に何か置いてあるのが目に入った。
手燭の光をベッドサイドの燭台に移してからベッドの上を改めて見て、驚いた。
3着もの新しいドレスがベッドの上に広げてあった。
私は思わず手に取って、姿見の方へ向いて身体へあててみた。
わ…素敵。
豪華ではないけれど、普段着としては上等の細かい刺繍やレースが施してあるものだった。
こんなにたくさんのドレスを一度にもらったことがない。
しかも新調してもらうなんて、初めて。
嬉しい…けど、なんかこれを盾に家に帰してもらえないような気もする。
高揚していた気分が下がり、私はドレスをベッドの上に置いた。
ドレスの横に何かある。
何だろうと思って見ると、それは真新しい下着だった。
恥ずかしく思いながらも、正直なところとても有り難かった。
コルセットまで新しいのが置いてある。
仕立て屋のウルビーニか、エルダさんが揃えてくれたのだろうか。
ご主人様にお礼を言いたい。
だけど今日は無理かな…
そろそろ晩餐会も終わるだろうけど、お疲れだろうし…
エルダさんが「ご主人様」と呼んでいたので、私も便宜上そう言っているが、別に私のご主人様ではない。
かと言ってバルトロやシプリアノみたいに「隊長」というのもおかしいよね…私は討伐隊の隊員ではないし。
アドルナートが「ヴァラリオーティ様のお越しです」と呼ばわっていたっけ。
ヴァラリオーティ…聞いたことあるような気がする。
バルトロが「都じゃ偉い人なんだよ」と言ってた。
でも私が都の偉い人の名前を知っているわけもないし。
うーん。
私はクロゼットにドレスをしまい、下着を取り換えてベッドに横になった。
部屋の燭台の火は消し、手燭の灯りだけの灯る狭い部屋の天井をぼんやりと眺める。
今日は午後からは本当にいろんなことがあって、疲れた…
身体や傷の痛みもさほど気にならないくらいだった。
ご主人様という人は、なんだか不思議な人だ。
私を「気に入った」と言っていたけど、どういう意味なのか。
ドレスを誂えさせたり、南部訛りの発音を直させようとしたり、晩餐会に列席させるつもりだったようだし、私の想像を超えている。
これではまるで、夫人のようではないかしら…
都の偉い人ならば、都に奥方がいらっしゃるだろうから、妾とか現地妻のような感じ?
考えてぞっとする。
嫌だ、これでは都へご愛妾候補として行くのと変わらないじゃないの。
「逃げ出したりしないでくれ」と言っていたバルトロには悪いけど、また逃げたほうがいいのかな。
でも、まったく正体の知れない、山中で拾った(しかも姓も出自も言わない怪しさ満載の)女を、いくら少し気に入ったからって妾にしようと思うのかなあ?
だとしたら相当変わった人だよね。
拾った正体不明の女なら、都へ帰るとき、ぽいと棄てればいいってことなのか…?
私は手燭の灯りも吹き消して、ベッドにもぐりこんだ。
暖かい。有難い。
にぃ兄様…
どうしているだろう。
寒い山中で一人、私を探していたりしないだろうか。
いやそれとも、恋人の許へ帰ろうとしているのかしら…
にぃ兄様。どうかご無事で。
私は、クレメンティナは、今のところ元気でいます。
私は神に祈りを捧げ、眠りについた。
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