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第二章 都へ
10.呼び出しと準備
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眠ろうとするとエルヴィーノ様のあの苦しそうな表情が思い出され、その夜もあまりよく眠れず、私は鶏が時を作るのと同時に起きた。
あの歌を歌ってはいけなかったのだろうか。
最初に禁止された曲は歌わなかったし、どれがダメな曲かもわからなかったから、何も考えずに歌いたい曲を選んでしまった。
これからは失敗しないように、エルヴィーノ様に歌ってはいけない歌を、ちゃんと聞こう。
エルヴィーノ様にあんな顔をされるくらいなら、もう人前で歌いたくないというのが本音だけれど。
そう考えて、エルヴィーノ様に面会を申し込もうと邸の中をアドルナートを探していると、向こうからすたすたと歩いてきて「クラリッサ!ここにいたか」と私の前に来た。
「おはようございます、私、エルヴィーノ様に面」
「今さっき、賓客がお目覚めになられて、クラリッサに話があると。
ご主人様も同席なさるから、もっときちんとした服を着なさい」
アドルナートは私を一瞥して、私の言葉の途中に被せてにべもなく言う。
私はいつもの使用人のお仕着せを着ていたのだけど、「もっときちんとした服」という言葉にすごくひっかかった。
「これだって十分きちんとした服だと思いますけど」
少しきつく言い返すと、アドルナートは苦い顔をして答えた。
「そういう意味じゃない、お前にはあのお方がどういう方なのか判っていないのだ」
「どういうお方なのです?」
私は多少の好奇心を混ぜて尋ねる。
アドルナートがひたすら畏れているように見える、あのお方はどなたなんだろう。
しかしアドルナートは更に渋面を深くして「お前ごときが知る必要のないお方だ。分を弁えなさい」
と厳しく断罪した。
私ははしたない自分の行為に顔を赤くしてお辞儀をした。
アドルナートの言うとおりだ。
こんなことお母様がお聞きになったら、きっと叱責される。
私は黙って部屋に行き、デボラを寄こしてもらって、昨日とは違うドレスを着た。
デボラは「髪を結うのが上手な人を連れてきました」と言って、ひとりの女性を伴ってきた。
20代後半くらいのその女性は、少し笑って綺麗にお辞儀する。
「初めまして。
私は結婚前に、ここからもう少し都に近い街で、髪結いとして働いていました。
今は主婦になって、もうあまりやっていないのですが…デボラに頼まれて」
「あ、…わざわざいらしていただいて、ありがとうございます。
助かります」
そうか、所作が綺麗なのは街で接客のお仕事をしていたからなんだ。
わぁ、プロに結ってもらうなんて初めて。
私は少しワクワクする。
フィオレというその女性は私の金色の髪を、油をつけながら艶が出るまで櫛で梳かし、あちこちをピンでとめながら手早く結い上げた。
後れ毛をピンの内側に押し込み、トップには可愛らしい生花を飾った。
「わ、可愛いです!
そんなにきれいな金髪だったんだ~」
デボラが両手を打ちあわせてはしゃぐ。
「あまり今までお手入れをなさっていらっしゃらなかったのかしら。
毎日、手を入れられたらもっともっと綺麗になりますよ」
フィオラはにこにこして言い、私は赤面した。
髪の手入れなんて…考えたこともなかった。
自分の髪の色が、こんなに綺麗な金髪だったことも知らなかった。
もっとくすんだ色なのかと思ってた…
私はフィオラに髪の手入れの方法を教えてもらい、またアドルナートが「まだか!もう朝食を終えられてしまう!早くしなさい!」と呼びに来て、急いで部屋を出た。
あの歌を歌ってはいけなかったのだろうか。
最初に禁止された曲は歌わなかったし、どれがダメな曲かもわからなかったから、何も考えずに歌いたい曲を選んでしまった。
これからは失敗しないように、エルヴィーノ様に歌ってはいけない歌を、ちゃんと聞こう。
エルヴィーノ様にあんな顔をされるくらいなら、もう人前で歌いたくないというのが本音だけれど。
そう考えて、エルヴィーノ様に面会を申し込もうと邸の中をアドルナートを探していると、向こうからすたすたと歩いてきて「クラリッサ!ここにいたか」と私の前に来た。
「おはようございます、私、エルヴィーノ様に面」
「今さっき、賓客がお目覚めになられて、クラリッサに話があると。
ご主人様も同席なさるから、もっときちんとした服を着なさい」
アドルナートは私を一瞥して、私の言葉の途中に被せてにべもなく言う。
私はいつもの使用人のお仕着せを着ていたのだけど、「もっときちんとした服」という言葉にすごくひっかかった。
「これだって十分きちんとした服だと思いますけど」
少しきつく言い返すと、アドルナートは苦い顔をして答えた。
「そういう意味じゃない、お前にはあのお方がどういう方なのか判っていないのだ」
「どういうお方なのです?」
私は多少の好奇心を混ぜて尋ねる。
アドルナートがひたすら畏れているように見える、あのお方はどなたなんだろう。
しかしアドルナートは更に渋面を深くして「お前ごときが知る必要のないお方だ。分を弁えなさい」
と厳しく断罪した。
私ははしたない自分の行為に顔を赤くしてお辞儀をした。
アドルナートの言うとおりだ。
こんなことお母様がお聞きになったら、きっと叱責される。
私は黙って部屋に行き、デボラを寄こしてもらって、昨日とは違うドレスを着た。
デボラは「髪を結うのが上手な人を連れてきました」と言って、ひとりの女性を伴ってきた。
20代後半くらいのその女性は、少し笑って綺麗にお辞儀する。
「初めまして。
私は結婚前に、ここからもう少し都に近い街で、髪結いとして働いていました。
今は主婦になって、もうあまりやっていないのですが…デボラに頼まれて」
「あ、…わざわざいらしていただいて、ありがとうございます。
助かります」
そうか、所作が綺麗なのは街で接客のお仕事をしていたからなんだ。
わぁ、プロに結ってもらうなんて初めて。
私は少しワクワクする。
フィオレというその女性は私の金色の髪を、油をつけながら艶が出るまで櫛で梳かし、あちこちをピンでとめながら手早く結い上げた。
後れ毛をピンの内側に押し込み、トップには可愛らしい生花を飾った。
「わ、可愛いです!
そんなにきれいな金髪だったんだ~」
デボラが両手を打ちあわせてはしゃぐ。
「あまり今までお手入れをなさっていらっしゃらなかったのかしら。
毎日、手を入れられたらもっともっと綺麗になりますよ」
フィオラはにこにこして言い、私は赤面した。
髪の手入れなんて…考えたこともなかった。
自分の髪の色が、こんなに綺麗な金髪だったことも知らなかった。
もっとくすんだ色なのかと思ってた…
私はフィオラに髪の手入れの方法を教えてもらい、またアドルナートが「まだか!もう朝食を終えられてしまう!早くしなさい!」と呼びに来て、急いで部屋を出た。
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