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第三章 都での生活
20.アリアンナの話
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私は遠慮するアリアンナをソファに座らせ、お茶をカップに注いで勧めた。
リーチェもカントゥッチをひとつ手に取って、アリアンナに差し出す。
「このお菓子、きゅ…じゃなくて都で流行っているのよ~
なんたってアレク様が自ら考案したお菓子だものね。
唯一販売を許されてるポテンティさんのお店の前はいつも大行列よ」
「そうなんですよね!
庶民にはとても手の届かない、高級なお菓子で…
ジョルジーニさんが言ってました、これはクラリッサ様をイメージしたお菓子なんだって。
でもそれは内緒だよって。
ヤバいねーって皆で話してたんです」
アリアンナは目を輝かせてリーチェから焼き菓子を受け取って口に入れる。
ガリっという小気味よい音がして、アリアンナは咀嚼して飲み込み、ほーっと息をついた。
「すっごい…美味しいです。
お砂糖をたっぷり使っているというわけではないのに、甘くて歯ざわり?が良くて…
上等なお菓子ってこういう感じなんですね、こんなに美味しいお菓子、初めて食べました」
「後でディーノにも託けるわね。
それで?
ヴァネッサらしき人はどこにいるの?」
私はお茶を飲んでいるアリアンナに尋ねる。
アリアンナは「あ、はいすみません」と慌てたようにカップをソーサーに危なっかしく置いた。
「えっと、先日の祝日の日に…
ディーノがジョルジーニさんのお使いで、マルケッティ通りの精肉店に行ったときに、娼婦たちが昼間から居酒屋の外で酔っ払って大声で騒いでいたそうです」
「先日の祝日…って、ああ、エルヴィーノ様が凱旋なさったときのパレードがあった日ね!
何故かご愛妾候補の方々もぞろぞろとパレードに参加していて、着飾った令嬢たちがたくさん馬車に鈴なりになっていて、圧巻だったって」
リーチェがぱくぱくとスフォッリャテッラを頬張りながら言う。
そんな日があったのか…私全然知らなかった。
多分、都にはいなかった日だわ。
エルヴィーノ様もさっき、「帰京してすぐに、一度ここへ来たんだ。だけどお前は野営訓練で居なかった」と仰っていらしたし。
「その娼婦たちのひとりで年若い女の子が、大きな声で言っていたそうです。
『私だってご愛妾候補だったんだから。
山賊なんかに襲われなければ、私も今頃、あの馬車に乗ってパレードに加わっていたのよ』
って」
アリアンナはディーノの話を一生懸命思い出しながら話している。
「周りの娼婦や通りすがりの男たちがからかって『またヴァネッサの法螺話が始まった』と言うと、『本当よ!私はシエーラの領主の娘なんだから!』とむきになって言ったそうです。
『はいはい、それで男と駆け落ちして、山賊に襲われて男に捨てられたんだよね』
周りの皆の嘲笑を浴びて真っ赤になっていたそうで、なんだか可哀想だったって言っていました」
顔から血の気が引いていく。
やはり、あの声はヴァネッサだったんだ。
「クラリッサ?大丈夫?!
顔がまっさお!」
リーチェが焦ったように言って、誰かを呼ぼうと立ち上がった。
私は急いで「大丈夫よリーチェ、座ってちょうだい」と声をかける。
「え、でも…」
「平気だから。
それで、ヴァネッサは、今、マルケッティ通りの娼館にいるのかしら」
私は懸命に心を落ち着かせようとしながら、アリアンナに笑いかけた。
アリアンナは「たぶん、あそこら辺の娼館だと思います。皆が知り合いのようだったみたいですから」と頷いた。
「そう…判ったわ。
じゃあ、近いうちにディーノを貸してもらえるよう、ジョルジーニにお願いしてみる。
そこへ連れて行ってもらいたいの」
「え、クラリッサが自分で行くの?!
危ないよ…
誰かに代わりに行かせて、とりあえずこのサン=バルロッテ館に連れてくればいいじゃない」
リーチェが必死で言っているが、私の耳には入ってこなかった。
ヴァネッサ…逃亡中に16歳になったばかりなのに、娼婦をしているなんて。
『男に捨てられた』って、ダニエーレはどこへ行ったのかしら。
本当に酷い男。
お館様と奥方様も、気が狂わんばかりにご心配に違いない。
にぃ兄様と一緒に、三人でシエーラに帰らなきゃ。
リーチェもカントゥッチをひとつ手に取って、アリアンナに差し出す。
「このお菓子、きゅ…じゃなくて都で流行っているのよ~
なんたってアレク様が自ら考案したお菓子だものね。
唯一販売を許されてるポテンティさんのお店の前はいつも大行列よ」
「そうなんですよね!
庶民にはとても手の届かない、高級なお菓子で…
ジョルジーニさんが言ってました、これはクラリッサ様をイメージしたお菓子なんだって。
でもそれは内緒だよって。
ヤバいねーって皆で話してたんです」
アリアンナは目を輝かせてリーチェから焼き菓子を受け取って口に入れる。
ガリっという小気味よい音がして、アリアンナは咀嚼して飲み込み、ほーっと息をついた。
「すっごい…美味しいです。
お砂糖をたっぷり使っているというわけではないのに、甘くて歯ざわり?が良くて…
上等なお菓子ってこういう感じなんですね、こんなに美味しいお菓子、初めて食べました」
「後でディーノにも託けるわね。
それで?
ヴァネッサらしき人はどこにいるの?」
私はお茶を飲んでいるアリアンナに尋ねる。
アリアンナは「あ、はいすみません」と慌てたようにカップをソーサーに危なっかしく置いた。
「えっと、先日の祝日の日に…
ディーノがジョルジーニさんのお使いで、マルケッティ通りの精肉店に行ったときに、娼婦たちが昼間から居酒屋の外で酔っ払って大声で騒いでいたそうです」
「先日の祝日…って、ああ、エルヴィーノ様が凱旋なさったときのパレードがあった日ね!
何故かご愛妾候補の方々もぞろぞろとパレードに参加していて、着飾った令嬢たちがたくさん馬車に鈴なりになっていて、圧巻だったって」
リーチェがぱくぱくとスフォッリャテッラを頬張りながら言う。
そんな日があったのか…私全然知らなかった。
多分、都にはいなかった日だわ。
エルヴィーノ様もさっき、「帰京してすぐに、一度ここへ来たんだ。だけどお前は野営訓練で居なかった」と仰っていらしたし。
「その娼婦たちのひとりで年若い女の子が、大きな声で言っていたそうです。
『私だってご愛妾候補だったんだから。
山賊なんかに襲われなければ、私も今頃、あの馬車に乗ってパレードに加わっていたのよ』
って」
アリアンナはディーノの話を一生懸命思い出しながら話している。
「周りの娼婦や通りすがりの男たちがからかって『またヴァネッサの法螺話が始まった』と言うと、『本当よ!私はシエーラの領主の娘なんだから!』とむきになって言ったそうです。
『はいはい、それで男と駆け落ちして、山賊に襲われて男に捨てられたんだよね』
周りの皆の嘲笑を浴びて真っ赤になっていたそうで、なんだか可哀想だったって言っていました」
顔から血の気が引いていく。
やはり、あの声はヴァネッサだったんだ。
「クラリッサ?大丈夫?!
顔がまっさお!」
リーチェが焦ったように言って、誰かを呼ぼうと立ち上がった。
私は急いで「大丈夫よリーチェ、座ってちょうだい」と声をかける。
「え、でも…」
「平気だから。
それで、ヴァネッサは、今、マルケッティ通りの娼館にいるのかしら」
私は懸命に心を落ち着かせようとしながら、アリアンナに笑いかけた。
アリアンナは「たぶん、あそこら辺の娼館だと思います。皆が知り合いのようだったみたいですから」と頷いた。
「そう…判ったわ。
じゃあ、近いうちにディーノを貸してもらえるよう、ジョルジーニにお願いしてみる。
そこへ連れて行ってもらいたいの」
「え、クラリッサが自分で行くの?!
危ないよ…
誰かに代わりに行かせて、とりあえずこのサン=バルロッテ館に連れてくればいいじゃない」
リーチェが必死で言っているが、私の耳には入ってこなかった。
ヴァネッサ…逃亡中に16歳になったばかりなのに、娼婦をしているなんて。
『男に捨てられた』って、ダニエーレはどこへ行ったのかしら。
本当に酷い男。
お館様と奥方様も、気が狂わんばかりにご心配に違いない。
にぃ兄様と一緒に、三人でシエーラに帰らなきゃ。
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