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第四章 謎解き
9.にぃ兄様の経緯と…正体?
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にぃ兄様とベアトリーチェ様も何か話しながら、勧められたカントゥッチを食べている。
ベアトリーチェ様は器用にベールを持ち上げて、上品に口に運んでいた。
にぃ兄様は細やかにサポートしていて、私は何となく切なくなった。
久しぶりに見るにぃ兄様は、以前より少し肉がついて、でも精悍な感じはそのままで、なんというか…素敵だった。
野良着ではなくこういうきちんとした格好をなさると、冷たいほどに整いすぎていると思っていたお顔がとても理知的で高貴で都会的に見えるのだと思った。
にぃ兄様がふと顔を上げて私を見て、私たちは一瞬、見つめあった。
にぃ兄様の瞳に切ない、というか哀しみのような光が宿っているのに気づいて、私は少し戸惑う。
なぜ…そんな目で私を見るのだろう…
「では、セノフォンテ殿の重大だという話をお聞きして、これからのことを話しましょう」
少し声を改めて、エルヴィーノ様が声をかけた。
にぃ兄様とベアトリーチェ様も、心持ち寄り添って居住まいを正す。
にぃ兄様の表情がひどく緊張し、膝の上で握った両手が細かく震えているのを見て、私は不安になって自分も知らず知らずのうちに両手を合わせてぎゅっと力を込めた。
にぃ兄様の硬く握った拳の上に、ベアトリーチェ様の細く繊細な指が励ますように触れる。
にぃ兄様は、一度小さく咳払いして、話しだした。
「…私は、山賊の館(と思い込んでいましたが、実際は討伐隊でしたね)を飛び出して、高熱と怪我でふらふらの身体で妹を探して山中を彷徨っていました。
いつしか夜になって、もう歩くこともできなくなったときに、山賊のものらしき松明の火が見えました。
その途端に襲われたときの記憶がばぁっと甦り、あそこにクレメンティナがいるような気がして、無我夢中で明かりに向かって駆けだしました。
しかしそれは山賊ではありましたが、前日の者たちとは違った。
私はまた殴られ、殺されそうになりました」
一度言葉を切って、深くため息をつく。
私の眼前にも襲われた夜が甦り眩暈がした。
エルヴィーノ様が私の肩をしっかりと抱く。
「そこへ、ベアトリーチェ様のお乗りになった馬車が通りかかりました。
後から考えてみると、山賊どもは誰だか判らないが女性の貴族が載った馬車が夜中に山中を抜けるという情報を、どこからか入手して待ち伏せていたようでした。
しかし、夜間にのこのこ山に入ってきた貴族の女性一人、簡単に襲って我が物にできるだろうという山賊の目論見は外れます。
屈強な騎士兵士に、瞬く間に蹴散らされて、散り散りになって逃げて行きました」
「虫の息で倒れていた私は、ベアトリーチェ様の温情によって助けられ、手当てを受けながら首都まで連れて行かれました。
それから1か月ほどは、身動きもならないほどの大怪我と高熱で、私はクレメンティナの幻を見るほどに恋しく思いながらも起き上がることさえできなかった。
自分の無力さをこれほど無念に思ったことはありません」
悔しそうに握った拳を振るにぃ兄様の腕に、ベアトリーチェ様はそっと手を触れる。
そして細く落ち着いた声で話し出した。
「わたくしは、大公国の南西部にある我が家の領地に静養に行った帰りでございました。
この顔が万が一にも人目に触れることを恐れて、夜間にしか移動いたしません。
大公様がご愛妾を全国からお集めになっていらっしゃることで、その女性たちを狙った山賊が増えていることは承知しておりましたので、精鋭の騎士と兵士を父親がつけてくれておりました」
「わたくしは…傷ついたセノフォンテ様を救いたいと衝動的に強く思い、何も考えずに都へ連れて行きますと言ってしまいました。
隊長は反対いたしましたが…
そして父にもひどく叱られましたが…」
消沈するベアトリーチェ様の手を、今度はにぃ兄様が優しく撫でる。
にぃ兄様は、そこで淹れかえられたばかりのお茶を手に取って口に含む。
意を決したように顔を上げてまた話し始めた。
「そしてようやく回復して、少しは外へ出ることができるようになった時。
私は夜にしか外出できないベアトリーチェ様に頼まれた用事をするために、街の店に行きました。
そこで私は、気づいたのです。
…この景色に見覚えがあることに」
「厳密に言えば、まったく同じというわけではありませんでした。
私の記憶では、大公様の居城が西に見え、南北にまっすぐ走る道路と右に市場、左に競技場。
アンノヴァッツィ伯爵家の別宅と、正面に医者の看板。
その景色は」
「この邸…じゃないか?」
にぃ兄様の言葉に、エルヴィーノ様は呆然と呟く。
にぃ兄様は顔を伏せ、深くうなずいた。
「そして私は、思い出したのです。
今まですっかり忘れていたことを」
「私は、この邸で生まれ、2~3歳までここに住んでいました。
名前もセノフォンテではなかった。
ステファノ…
エルヴィーノ様、貴方の双子の弟です」
ベアトリーチェ様は器用にベールを持ち上げて、上品に口に運んでいた。
にぃ兄様は細やかにサポートしていて、私は何となく切なくなった。
久しぶりに見るにぃ兄様は、以前より少し肉がついて、でも精悍な感じはそのままで、なんというか…素敵だった。
野良着ではなくこういうきちんとした格好をなさると、冷たいほどに整いすぎていると思っていたお顔がとても理知的で高貴で都会的に見えるのだと思った。
にぃ兄様がふと顔を上げて私を見て、私たちは一瞬、見つめあった。
にぃ兄様の瞳に切ない、というか哀しみのような光が宿っているのに気づいて、私は少し戸惑う。
なぜ…そんな目で私を見るのだろう…
「では、セノフォンテ殿の重大だという話をお聞きして、これからのことを話しましょう」
少し声を改めて、エルヴィーノ様が声をかけた。
にぃ兄様とベアトリーチェ様も、心持ち寄り添って居住まいを正す。
にぃ兄様の表情がひどく緊張し、膝の上で握った両手が細かく震えているのを見て、私は不安になって自分も知らず知らずのうちに両手を合わせてぎゅっと力を込めた。
にぃ兄様の硬く握った拳の上に、ベアトリーチェ様の細く繊細な指が励ますように触れる。
にぃ兄様は、一度小さく咳払いして、話しだした。
「…私は、山賊の館(と思い込んでいましたが、実際は討伐隊でしたね)を飛び出して、高熱と怪我でふらふらの身体で妹を探して山中を彷徨っていました。
いつしか夜になって、もう歩くこともできなくなったときに、山賊のものらしき松明の火が見えました。
その途端に襲われたときの記憶がばぁっと甦り、あそこにクレメンティナがいるような気がして、無我夢中で明かりに向かって駆けだしました。
しかしそれは山賊ではありましたが、前日の者たちとは違った。
私はまた殴られ、殺されそうになりました」
一度言葉を切って、深くため息をつく。
私の眼前にも襲われた夜が甦り眩暈がした。
エルヴィーノ様が私の肩をしっかりと抱く。
「そこへ、ベアトリーチェ様のお乗りになった馬車が通りかかりました。
後から考えてみると、山賊どもは誰だか判らないが女性の貴族が載った馬車が夜中に山中を抜けるという情報を、どこからか入手して待ち伏せていたようでした。
しかし、夜間にのこのこ山に入ってきた貴族の女性一人、簡単に襲って我が物にできるだろうという山賊の目論見は外れます。
屈強な騎士兵士に、瞬く間に蹴散らされて、散り散りになって逃げて行きました」
「虫の息で倒れていた私は、ベアトリーチェ様の温情によって助けられ、手当てを受けながら首都まで連れて行かれました。
それから1か月ほどは、身動きもならないほどの大怪我と高熱で、私はクレメンティナの幻を見るほどに恋しく思いながらも起き上がることさえできなかった。
自分の無力さをこれほど無念に思ったことはありません」
悔しそうに握った拳を振るにぃ兄様の腕に、ベアトリーチェ様はそっと手を触れる。
そして細く落ち着いた声で話し出した。
「わたくしは、大公国の南西部にある我が家の領地に静養に行った帰りでございました。
この顔が万が一にも人目に触れることを恐れて、夜間にしか移動いたしません。
大公様がご愛妾を全国からお集めになっていらっしゃることで、その女性たちを狙った山賊が増えていることは承知しておりましたので、精鋭の騎士と兵士を父親がつけてくれておりました」
「わたくしは…傷ついたセノフォンテ様を救いたいと衝動的に強く思い、何も考えずに都へ連れて行きますと言ってしまいました。
隊長は反対いたしましたが…
そして父にもひどく叱られましたが…」
消沈するベアトリーチェ様の手を、今度はにぃ兄様が優しく撫でる。
にぃ兄様は、そこで淹れかえられたばかりのお茶を手に取って口に含む。
意を決したように顔を上げてまた話し始めた。
「そしてようやく回復して、少しは外へ出ることができるようになった時。
私は夜にしか外出できないベアトリーチェ様に頼まれた用事をするために、街の店に行きました。
そこで私は、気づいたのです。
…この景色に見覚えがあることに」
「厳密に言えば、まったく同じというわけではありませんでした。
私の記憶では、大公様の居城が西に見え、南北にまっすぐ走る道路と右に市場、左に競技場。
アンノヴァッツィ伯爵家の別宅と、正面に医者の看板。
その景色は」
「この邸…じゃないか?」
にぃ兄様の言葉に、エルヴィーノ様は呆然と呟く。
にぃ兄様は顔を伏せ、深くうなずいた。
「そして私は、思い出したのです。
今まですっかり忘れていたことを」
「私は、この邸で生まれ、2~3歳までここに住んでいました。
名前もセノフォンテではなかった。
ステファノ…
エルヴィーノ様、貴方の双子の弟です」
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