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第四章 謎解き
13.身バレの理由
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私は私とエルヴィーノ様が愛し合っている恋人同士だという、にぃ兄様の誤解を解きたいと思ったけれど、この話の流れではどうも言い出しにくく、黙っていた。
にぃ兄様が、まさかずっと私を好きだったとか…どう考えても受け入れがたい。
にぃ兄様はいつでも優しく勉強熱心で仕事にも情熱を持っていて、私の尊敬する敬愛する人だ。
早く素敵なお嫁様が来てくれるといいなと思っていた。
エルヴィーノ様も、あんなに情熱的に私を想っていてくださっていたとは…
嬉しいとかいうより、何故こんな私を、という疑問の方が強い。
山賊討伐隊隊長としか思っていなかったエルヴィーノ様が侯爵様の息子で、私の従兄弟だったというだけでも驚天動地なのに、にぃ兄様が実はエルヴィーノ様の双子の弟だった、なんて…
私の脳の処理能力を超えている。
どう理解したらいいのか判らない。
「セノフォンテ殿は少し思い違いをなさっている。
クレメンティナは山賊討伐隊の邸にいた時には、自分が山賊に捕まりご愛妾候補として都に辿り着けなかったことで、シエーラの領主や家族に累が及ぶのを恐れて、クラリッサと名乗って、出自については一切話さなかったんだ。
しかし俺は、かなり早い段階でクレメンティナがヴァラリオーティに繋がりのある人間だと判っていた。
俺が何故、首都に凱旋する前に判ったかと言うと」
場の空気を換えようと思ったのか、エルヴィーノ様が話し出す。
私もそのことはずっと疑問だったので、思わず身を乗り出した。
エルヴィーノ様は私を見て、手を伸ばし頭を撫でてそのまま話し出した。
「クラリッサと名乗っていたクレメンティナは最初から、少し異質な存在だった。
ガリガリに痩せて栄養状態は悪くつぎはぎの下着をつけていて、針仕事や給仕などを日常のようにこなすのに、どこか気品があって言葉遣いや立ち居振る舞いが綺麗で、教養もある。
都でもめったに見ないような美人だし、謎の多すぎる女に俺は興味をひかれた」
私を見つめながら淡々と話すエルヴィーノ様の言葉に、私はいちいち赤面する。
エルヴィーノ様の濃いブラウンの瞳は、言われてみればにぃ兄様に似ている。
そこに湛えられている強い感情に、私は見つめ返すことができず目を逸らす。
「クレメンティナが山賊討伐隊の酔っぱらいの前で余興を迫られ、歌った歌の歌詞に、俺は驚いて席を立ちそうになった。
ヴァラリオーティ家に伝わる、歌詞の一部を替えたものだったからだ。
そもそもその歌は、広く巷間に流布する民謡ではあるけれど、その昔、ヴァラリオーティの祖先が戦でめざましい戦功をあげた時に作られた歌なんだ。
だから、我が家では世間の歌詞とは違う部分がある」
そう言えば、アレク様とフランシスカに尋ねられて歌った時『2か所、受動的な部分が能動的になっている』と言われた。
そういうことだったんだ、あの時のエルヴィーノ様の周章狼狽の訳は…
「しかし、誰に教わったか訊いてもクレメンティナは覚えていないと言う。
まあ、皆が知っている歌だからなとは思ったものの、父親かも知れないと言ったことが引っかかった。
父上が爵位を奪った伯父は、南部に行ったと聞いた覚えがある」
「そしてアレクが都から軍を率いて山賊討伐隊の館に来たとき、晩餐会で歌った歌が…
完全に、ヴァラリオーティ家にだけ伝わる歌で、俺はもうどう考えていいのか、混乱した。
アレクも聞いたことくらいはあったんだろう、あいつの明晰な頭脳だったら見当がついてもおかしくない」
エルヴィーノ様は手を降ろして膝でぎゅっと拳を握る。
「俺は、最初、この事実を梃子に、大嫌いな父と兄を、権力の座から引きずり下ろそうと思った。
しかしあの、化け物みたいな執着心で権力の座にしがみついて、私腹を肥やすことしか考えていない二人には、クレメンティナだけでは弱いと思った。
だからセノフォンテ殿を探し出し、南部の子爵家に連絡を取って長兄という人物に侯爵の爵位を奪還しないかと持ち掛けてみようと」
「アレクに力を借りればあるいは…と思ったが、アレクにも何か思惑があるみたいで、クレメンティナのことも…
俺はあいつにこれ以上の借りを作るのは怖い」
エルヴィーノ様は顔を上げて、まっすぐににぃ兄様とベアトリーチェ様を見つめる。
「お二人にも、結婚となればさまざまな障害があることだろう。
セノフォンテ殿が承諾してくれれば、俺と双子だということも、父を斃す理由になるかもしれない。
そうしたら、貴方はヴァラリオーティ侯爵の子息ということで、堂々とトランクウィッロ家に求婚できるだろう」
にぃ兄様とベアトリーチェ様は顔を見合わせた。
困惑して、でも手を取り合うお二人を見て、私は少し安堵した。
にぃ兄様にはお幸せになって欲しい。
私は、…どうなるんだろう。
にぃ兄様が、まさかずっと私を好きだったとか…どう考えても受け入れがたい。
にぃ兄様はいつでも優しく勉強熱心で仕事にも情熱を持っていて、私の尊敬する敬愛する人だ。
早く素敵なお嫁様が来てくれるといいなと思っていた。
エルヴィーノ様も、あんなに情熱的に私を想っていてくださっていたとは…
嬉しいとかいうより、何故こんな私を、という疑問の方が強い。
山賊討伐隊隊長としか思っていなかったエルヴィーノ様が侯爵様の息子で、私の従兄弟だったというだけでも驚天動地なのに、にぃ兄様が実はエルヴィーノ様の双子の弟だった、なんて…
私の脳の処理能力を超えている。
どう理解したらいいのか判らない。
「セノフォンテ殿は少し思い違いをなさっている。
クレメンティナは山賊討伐隊の邸にいた時には、自分が山賊に捕まりご愛妾候補として都に辿り着けなかったことで、シエーラの領主や家族に累が及ぶのを恐れて、クラリッサと名乗って、出自については一切話さなかったんだ。
しかし俺は、かなり早い段階でクレメンティナがヴァラリオーティに繋がりのある人間だと判っていた。
俺が何故、首都に凱旋する前に判ったかと言うと」
場の空気を換えようと思ったのか、エルヴィーノ様が話し出す。
私もそのことはずっと疑問だったので、思わず身を乗り出した。
エルヴィーノ様は私を見て、手を伸ばし頭を撫でてそのまま話し出した。
「クラリッサと名乗っていたクレメンティナは最初から、少し異質な存在だった。
ガリガリに痩せて栄養状態は悪くつぎはぎの下着をつけていて、針仕事や給仕などを日常のようにこなすのに、どこか気品があって言葉遣いや立ち居振る舞いが綺麗で、教養もある。
都でもめったに見ないような美人だし、謎の多すぎる女に俺は興味をひかれた」
私を見つめながら淡々と話すエルヴィーノ様の言葉に、私はいちいち赤面する。
エルヴィーノ様の濃いブラウンの瞳は、言われてみればにぃ兄様に似ている。
そこに湛えられている強い感情に、私は見つめ返すことができず目を逸らす。
「クレメンティナが山賊討伐隊の酔っぱらいの前で余興を迫られ、歌った歌の歌詞に、俺は驚いて席を立ちそうになった。
ヴァラリオーティ家に伝わる、歌詞の一部を替えたものだったからだ。
そもそもその歌は、広く巷間に流布する民謡ではあるけれど、その昔、ヴァラリオーティの祖先が戦でめざましい戦功をあげた時に作られた歌なんだ。
だから、我が家では世間の歌詞とは違う部分がある」
そう言えば、アレク様とフランシスカに尋ねられて歌った時『2か所、受動的な部分が能動的になっている』と言われた。
そういうことだったんだ、あの時のエルヴィーノ様の周章狼狽の訳は…
「しかし、誰に教わったか訊いてもクレメンティナは覚えていないと言う。
まあ、皆が知っている歌だからなとは思ったものの、父親かも知れないと言ったことが引っかかった。
父上が爵位を奪った伯父は、南部に行ったと聞いた覚えがある」
「そしてアレクが都から軍を率いて山賊討伐隊の館に来たとき、晩餐会で歌った歌が…
完全に、ヴァラリオーティ家にだけ伝わる歌で、俺はもうどう考えていいのか、混乱した。
アレクも聞いたことくらいはあったんだろう、あいつの明晰な頭脳だったら見当がついてもおかしくない」
エルヴィーノ様は手を降ろして膝でぎゅっと拳を握る。
「俺は、最初、この事実を梃子に、大嫌いな父と兄を、権力の座から引きずり下ろそうと思った。
しかしあの、化け物みたいな執着心で権力の座にしがみついて、私腹を肥やすことしか考えていない二人には、クレメンティナだけでは弱いと思った。
だからセノフォンテ殿を探し出し、南部の子爵家に連絡を取って長兄という人物に侯爵の爵位を奪還しないかと持ち掛けてみようと」
「アレクに力を借りればあるいは…と思ったが、アレクにも何か思惑があるみたいで、クレメンティナのことも…
俺はあいつにこれ以上の借りを作るのは怖い」
エルヴィーノ様は顔を上げて、まっすぐににぃ兄様とベアトリーチェ様を見つめる。
「お二人にも、結婚となればさまざまな障害があることだろう。
セノフォンテ殿が承諾してくれれば、俺と双子だということも、父を斃す理由になるかもしれない。
そうしたら、貴方はヴァラリオーティ侯爵の子息ということで、堂々とトランクウィッロ家に求婚できるだろう」
にぃ兄様とベアトリーチェ様は顔を見合わせた。
困惑して、でも手を取り合うお二人を見て、私は少し安堵した。
にぃ兄様にはお幸せになって欲しい。
私は、…どうなるんだろう。
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