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第七章 焦土
5.エルヴィーノ様の提案
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私たちは、卓の周りに集まる。
エルヴィーノ様は梳き流した髪をかき上げ、話し出した。
「クレメンティナ様を、交渉に行かせよう。
オズヴァルドがさっき言ったように、敵もこのまま力で押し切れるとは思わなくなってきたようだ。
クレメンティナ様が今ここにいるのも好都合だ」
「では私も行きます」
にぃ兄様が早口で言葉をはさむ。
「クレメンティナ様をひとりでなんて、それはあまりに無茶だ。
交渉だってしたことがないのだし、またペデルツィーニに恫喝されて恐怖で従ってしまうようなことがあったら、哀れに過ぎる、可哀想すぎる。
私は奴と知り合いだし、私に武術の心得などまったくないのは奴も良く知っている」
苦しげに話すにぃ兄様を見て、私の心も痛む。
にぃ兄様はきっと、この5か月半ずっと苦しんでこられたのだろう。
私を都へ行かせる決断に賛成したことを。
ご自分の向学心を責めたこともあったに違いない。
「話を最後まで聴けよセノフォンテ。
誰もクレメンティナ様をひとりで行かせるなんて言っちゃいないさ。
俺が一緒に行く」
「いや、でも、大将が交渉の場に乗り込んでいくと言うのは…」
慌てたようににぃ兄様が言うのへ、エルヴィーノ様はにやっと笑ってみせた。
「大将はアレクが来てるんだから、アレクになるだろ。
敵がクレメンティナひとりでと言ってきたからといって、それに従う義理はない。
侍女を伴うのがこちらの条件だと言えばそれでいいだろう」
侍女?
デメトリア?
と首を傾げて、はっとする。
「お前…まさか!」
オズヴァルド様が驚いたように声を上げる。
エルヴィーノ様は皆の表情を見て、満足げにうなずいた。
「小さいころから女の子みたいだってずっと言われてきたんだよな俺。
兄上よりも母親の顔立ちに似てるんだ。
小さいころは世間のそういった評価に腹が立って暴れたりもしたが…セノフォンテを見て妙に納得した。
肖像画に残る母親の面影にそっくりなんだよ、俺もセノフォンテも。
身体つきがさすがにごついから、ちょっと大変かもだけど」
確かに、最初にエルヴィーノ様と対面した時、女性のように優しい顔立ちだと思った。
当時はそれほどにぃ兄様に似ているとは思わなかったけれど(恰好が違い過ぎた)、今は本当に似ていると思う。
「いや…だけど」
アレク様は言葉を失ったように呟く。
「アレクの気持ちは判る。
俺だって最初は、クレメンティナ様をそんな危ない交渉の場に行かせるなんてまったく考えられなかった。
それにセノフォンテやレオンツィオのお陰で陽動作戦も奏功しているし、弓兵など援軍も来ている今、力で押し切り勝利することができるかもしれないとも思う」
しかし、とエルヴィーノ様は私の方を見て言葉を続けた。
「俺は今回初めて、本当の戦争といえる戦いを経験した。
今までの価値観を覆すような、人の無慈悲や残忍さを目の当たりにした。
だけど国に帰れば、その兵士や騎士たちにも、俺と同じように愛しい人がいるはずだ。
これ以上無駄な犠牲を出して、惨い戦いを続けたくないんだ」
私達は絞り出すようなエルヴィーノ様の言葉にしんとして聞き入った。
「エルヴィーノ様がそれで宜しければ、わたくし行きます」
私が言うと、アレク様は一瞬、躊躇したが、私をぐっと抱きしめて額にキスした。
「二人とも絶対に生きて帰ってこい。
それが条件だ」
「なに、ご心配には及びません。
部屋の外までは私も行きます」
エセルバート様がのんびりと言う。
「そうか、エセルが行ってくれるなら少しは安心できる」
「侍女の格好は出来ませんがなあ」
わっはっはと笑うエセルバート様の言葉に、私たちも少し和んだ。
それからはバタバタで準備が進んでいった。
使いの兵士は信書を持たせて返し、私達も味方の本拠地の移動する。
約半年ぶりの領主館、それにお館様。
言いたいこと、全部言ってやるんだから!
エルヴィーノ様は梳き流した髪をかき上げ、話し出した。
「クレメンティナ様を、交渉に行かせよう。
オズヴァルドがさっき言ったように、敵もこのまま力で押し切れるとは思わなくなってきたようだ。
クレメンティナ様が今ここにいるのも好都合だ」
「では私も行きます」
にぃ兄様が早口で言葉をはさむ。
「クレメンティナ様をひとりでなんて、それはあまりに無茶だ。
交渉だってしたことがないのだし、またペデルツィーニに恫喝されて恐怖で従ってしまうようなことがあったら、哀れに過ぎる、可哀想すぎる。
私は奴と知り合いだし、私に武術の心得などまったくないのは奴も良く知っている」
苦しげに話すにぃ兄様を見て、私の心も痛む。
にぃ兄様はきっと、この5か月半ずっと苦しんでこられたのだろう。
私を都へ行かせる決断に賛成したことを。
ご自分の向学心を責めたこともあったに違いない。
「話を最後まで聴けよセノフォンテ。
誰もクレメンティナ様をひとりで行かせるなんて言っちゃいないさ。
俺が一緒に行く」
「いや、でも、大将が交渉の場に乗り込んでいくと言うのは…」
慌てたようににぃ兄様が言うのへ、エルヴィーノ様はにやっと笑ってみせた。
「大将はアレクが来てるんだから、アレクになるだろ。
敵がクレメンティナひとりでと言ってきたからといって、それに従う義理はない。
侍女を伴うのがこちらの条件だと言えばそれでいいだろう」
侍女?
デメトリア?
と首を傾げて、はっとする。
「お前…まさか!」
オズヴァルド様が驚いたように声を上げる。
エルヴィーノ様は皆の表情を見て、満足げにうなずいた。
「小さいころから女の子みたいだってずっと言われてきたんだよな俺。
兄上よりも母親の顔立ちに似てるんだ。
小さいころは世間のそういった評価に腹が立って暴れたりもしたが…セノフォンテを見て妙に納得した。
肖像画に残る母親の面影にそっくりなんだよ、俺もセノフォンテも。
身体つきがさすがにごついから、ちょっと大変かもだけど」
確かに、最初にエルヴィーノ様と対面した時、女性のように優しい顔立ちだと思った。
当時はそれほどにぃ兄様に似ているとは思わなかったけれど(恰好が違い過ぎた)、今は本当に似ていると思う。
「いや…だけど」
アレク様は言葉を失ったように呟く。
「アレクの気持ちは判る。
俺だって最初は、クレメンティナ様をそんな危ない交渉の場に行かせるなんてまったく考えられなかった。
それにセノフォンテやレオンツィオのお陰で陽動作戦も奏功しているし、弓兵など援軍も来ている今、力で押し切り勝利することができるかもしれないとも思う」
しかし、とエルヴィーノ様は私の方を見て言葉を続けた。
「俺は今回初めて、本当の戦争といえる戦いを経験した。
今までの価値観を覆すような、人の無慈悲や残忍さを目の当たりにした。
だけど国に帰れば、その兵士や騎士たちにも、俺と同じように愛しい人がいるはずだ。
これ以上無駄な犠牲を出して、惨い戦いを続けたくないんだ」
私達は絞り出すようなエルヴィーノ様の言葉にしんとして聞き入った。
「エルヴィーノ様がそれで宜しければ、わたくし行きます」
私が言うと、アレク様は一瞬、躊躇したが、私をぐっと抱きしめて額にキスした。
「二人とも絶対に生きて帰ってこい。
それが条件だ」
「なに、ご心配には及びません。
部屋の外までは私も行きます」
エセルバート様がのんびりと言う。
「そうか、エセルが行ってくれるなら少しは安心できる」
「侍女の格好は出来ませんがなあ」
わっはっはと笑うエセルバート様の言葉に、私たちも少し和んだ。
それからはバタバタで準備が進んでいった。
使いの兵士は信書を持たせて返し、私達も味方の本拠地の移動する。
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言いたいこと、全部言ってやるんだから!
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