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第九章 逃亡の終着点
8.帰京
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それから首都に帰るまでは非常にめまぐるしかった。
刻々ともたらされる、ラ・カドリナ国の王太子の反乱についての情報、形骸化していた国軍の再編について各地方から集まりつつある貴族たちのこと、そしてシエーラおよびビトリア=ガンティス州の復興と併合についての諸々の決済。
アレク様とオズヴァルド様とシプリアノ、それからシエーラに残った副将軍の代わりに急遽戻って来たアンフォッシ副将軍は、馬車の中でも天幕の中でもずっと協議して、手紙を書いて飛脚に渡し、伝令に矢継ぎ早に指示を飛ばしまた報告を聞いていた。
私は席を外そうと何度も試みたのだけど、アレク様がお傍を離れることを絶対に許してくれず、仕方なくデメトリアと何故かヘイデンスタムと一緒に皆の食事を作った。
アレク様はまだ、完全に暴君のイメージから抜け切れていないとご自分で言っていた。
シエーラの蜂起を首謀者が自殺したとはいえ完全に収めたこと、戦勝国であるはずのラ・カドリナ国の州を一つ丸ごとダリスカーナに併呑したことなどは早々に都に伝わり、貴族や民衆たちは歓喜してアレク様を褒め称えているそうだ。
だけど、それをデマだと言い張る者、暴君は政敵であった前ヴァラリオーティ侯爵や宰相を斃したことで、今度は首都を恐怖政治に陥れるつもりだなどという流言があるのも事実で。
部下や兵たちを信じ切ることができない、と苦く笑っていた。
食事に毒が入れられたり寝首を掻かれる可能性がゼロではないのだ、と。
「だけど、これから。
すべては首都に帰って、新たな政治を始めたら皆にもわかってもらえることだと信じている。
そのためには、クレメンティナの存在が必要不可欠だ。
外国人のダイアナではできない、ダリスカーナ国の人間であり地方で育った下級貴族の娘で、民衆の感情に濃やかな配慮のできるそなたこそが、真の意味で俺を助けてくれると思ってる」
簡素な天幕の中で一緒の寝台に入って私の肩を抱き寄せながら、アレク様はそう言って私のこめかみにキスした。
私はアレク様の言葉を嬉しく思いながらも、その期待の大きさ責任の重大さに不安を感じぎゅっと身を縮めた。
「わたくしごときに…そのような大役が務まるのでしょうか。
いえ、わたくし自身の評価などどうでも宜しいのです。
やはり田舎の小娘を娶ったりなさるからと、アレク様が宮廷の誰彼に陰口を囁かれることになったらと思うと…
身の竦む思いがいたしますわ」
私がつい弱気な本音を口にすると、アレク様はふっと笑って私の頤に指をかけて顔を上げさせ唇に優しく口づける。
「そうならないよう、自らを律して努力していけるのが、我が妃だと思っている。
頼りにしておるぞ」
そう言われても猶、不安が拭えない表情の私に、アレク様は口調を替えて優しく囁いた。
「…というのは建前で。
俺が、お前に傍にいて欲しいのさ。
クレメンティナがいてくれないと俺はすぐに以前の猜疑心に塗れた、ただの暴君に成り下がってしまう。
お前が傍にいて初めて、俺は周りの人間を信じることができ人間らしく君主らしく振る舞っていける」
愛してるよクレメンティナ、お前は俺の救世主だ。
そう呟いてアレク様は片腕をついて身を起こすと私の上に覆いかぶさって深く口づける。
長いキスをして唇を離すと、息が上がってしまう私の頬を撫でて愛しげに微笑む。
「ヘイデンスタムが言っていた。
お妃様は大変聡明で器用で、度胸があって思いやりに満ちていると。
自分は宮廷人という人々を各国でたくさん見て来たけれども、お妃様のような方は初めてお会いしましたと楽しそうに笑うんだよ。
俺はまた…お前に邪念を抱く男がひとり、増えたのではないかと気が気じゃない」
「そんなことは絶対にありませんわ。
ヘイデンスタム様は故郷に、奥様と幼いお嬢さんがいらっしゃるそうです。
肌身離さず持っていらっしゃると言う小さな絵姿を拝見しましたけど、とても愛らしく賢そうなお嬢さんでしたわ」
私がアレク様の勘違いを笑いながら否定すると、アレク様は「それならいいが…」とまだ疑っている様子で私の頬や首筋にキスを落とす。
「…レオンツィオの赤ん坊を見て、それからレオンツィオの我が子を抱く幸せそうな顔を見て、俺も初めて自分が子供を持つということを考えた。
クレメンティナが俺の子供を産む…俺とお前が親になり、共に協力して子供を育てる…
そんなことを具体的に思い描いたのは、クレメンティナだからだと思う」
そう言ってアレク様は、だんだん息の上がってゆく私の夜着のボタンに手をかけ、外してゆく。
「今までは、周り中の人間に後継ぎをと言われ続けていたが、考えたこともなかった。
俺が親になるなんて絶対に嫌だし無理だ。
父上と母上のように、暗殺に怯えて暮らす人生なんてまっぴらだ。
だからそう言った意味じゃ、ダイアナは俺との子供を産む気なんてさらさらなかったから好都合だったが」
夜着をはだけ、胸の中央に口づける。
私は、あ、と小さく吐息を漏らして身をよじる。
アレク様の大きな手が私の夜着に入り込み、腰を撫で、太ももの間を割って入ってくる。
「…クレメンティナ、俺は、お前と家族を作りたい。
大切なものを増やしていきたい。
その想いがやがて国家を作っていくのだと思うようになった。
クレメンティナ…俺の愛するクレメンティナ」
性急に呟き、アレク様も夜着を脱ぎ捨てて私の脚を開いた。
そして外が白み始めるまで、私は離してもらえなかった。
刻々ともたらされる、ラ・カドリナ国の王太子の反乱についての情報、形骸化していた国軍の再編について各地方から集まりつつある貴族たちのこと、そしてシエーラおよびビトリア=ガンティス州の復興と併合についての諸々の決済。
アレク様とオズヴァルド様とシプリアノ、それからシエーラに残った副将軍の代わりに急遽戻って来たアンフォッシ副将軍は、馬車の中でも天幕の中でもずっと協議して、手紙を書いて飛脚に渡し、伝令に矢継ぎ早に指示を飛ばしまた報告を聞いていた。
私は席を外そうと何度も試みたのだけど、アレク様がお傍を離れることを絶対に許してくれず、仕方なくデメトリアと何故かヘイデンスタムと一緒に皆の食事を作った。
アレク様はまだ、完全に暴君のイメージから抜け切れていないとご自分で言っていた。
シエーラの蜂起を首謀者が自殺したとはいえ完全に収めたこと、戦勝国であるはずのラ・カドリナ国の州を一つ丸ごとダリスカーナに併呑したことなどは早々に都に伝わり、貴族や民衆たちは歓喜してアレク様を褒め称えているそうだ。
だけど、それをデマだと言い張る者、暴君は政敵であった前ヴァラリオーティ侯爵や宰相を斃したことで、今度は首都を恐怖政治に陥れるつもりだなどという流言があるのも事実で。
部下や兵たちを信じ切ることができない、と苦く笑っていた。
食事に毒が入れられたり寝首を掻かれる可能性がゼロではないのだ、と。
「だけど、これから。
すべては首都に帰って、新たな政治を始めたら皆にもわかってもらえることだと信じている。
そのためには、クレメンティナの存在が必要不可欠だ。
外国人のダイアナではできない、ダリスカーナ国の人間であり地方で育った下級貴族の娘で、民衆の感情に濃やかな配慮のできるそなたこそが、真の意味で俺を助けてくれると思ってる」
簡素な天幕の中で一緒の寝台に入って私の肩を抱き寄せながら、アレク様はそう言って私のこめかみにキスした。
私はアレク様の言葉を嬉しく思いながらも、その期待の大きさ責任の重大さに不安を感じぎゅっと身を縮めた。
「わたくしごときに…そのような大役が務まるのでしょうか。
いえ、わたくし自身の評価などどうでも宜しいのです。
やはり田舎の小娘を娶ったりなさるからと、アレク様が宮廷の誰彼に陰口を囁かれることになったらと思うと…
身の竦む思いがいたしますわ」
私がつい弱気な本音を口にすると、アレク様はふっと笑って私の頤に指をかけて顔を上げさせ唇に優しく口づける。
「そうならないよう、自らを律して努力していけるのが、我が妃だと思っている。
頼りにしておるぞ」
そう言われても猶、不安が拭えない表情の私に、アレク様は口調を替えて優しく囁いた。
「…というのは建前で。
俺が、お前に傍にいて欲しいのさ。
クレメンティナがいてくれないと俺はすぐに以前の猜疑心に塗れた、ただの暴君に成り下がってしまう。
お前が傍にいて初めて、俺は周りの人間を信じることができ人間らしく君主らしく振る舞っていける」
愛してるよクレメンティナ、お前は俺の救世主だ。
そう呟いてアレク様は片腕をついて身を起こすと私の上に覆いかぶさって深く口づける。
長いキスをして唇を離すと、息が上がってしまう私の頬を撫でて愛しげに微笑む。
「ヘイデンスタムが言っていた。
お妃様は大変聡明で器用で、度胸があって思いやりに満ちていると。
自分は宮廷人という人々を各国でたくさん見て来たけれども、お妃様のような方は初めてお会いしましたと楽しそうに笑うんだよ。
俺はまた…お前に邪念を抱く男がひとり、増えたのではないかと気が気じゃない」
「そんなことは絶対にありませんわ。
ヘイデンスタム様は故郷に、奥様と幼いお嬢さんがいらっしゃるそうです。
肌身離さず持っていらっしゃると言う小さな絵姿を拝見しましたけど、とても愛らしく賢そうなお嬢さんでしたわ」
私がアレク様の勘違いを笑いながら否定すると、アレク様は「それならいいが…」とまだ疑っている様子で私の頬や首筋にキスを落とす。
「…レオンツィオの赤ん坊を見て、それからレオンツィオの我が子を抱く幸せそうな顔を見て、俺も初めて自分が子供を持つということを考えた。
クレメンティナが俺の子供を産む…俺とお前が親になり、共に協力して子供を育てる…
そんなことを具体的に思い描いたのは、クレメンティナだからだと思う」
そう言ってアレク様は、だんだん息の上がってゆく私の夜着のボタンに手をかけ、外してゆく。
「今までは、周り中の人間に後継ぎをと言われ続けていたが、考えたこともなかった。
俺が親になるなんて絶対に嫌だし無理だ。
父上と母上のように、暗殺に怯えて暮らす人生なんてまっぴらだ。
だからそう言った意味じゃ、ダイアナは俺との子供を産む気なんてさらさらなかったから好都合だったが」
夜着をはだけ、胸の中央に口づける。
私は、あ、と小さく吐息を漏らして身をよじる。
アレク様の大きな手が私の夜着に入り込み、腰を撫で、太ももの間を割って入ってくる。
「…クレメンティナ、俺は、お前と家族を作りたい。
大切なものを増やしていきたい。
その想いがやがて国家を作っていくのだと思うようになった。
クレメンティナ…俺の愛するクレメンティナ」
性急に呟き、アレク様も夜着を脱ぎ捨てて私の脚を開いた。
そして外が白み始めるまで、私は離してもらえなかった。
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