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第一章 地下大都市トウキョウ
7.啓司の嫉妬と羨望
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「それで、だ」
啓司は遠夜の方を見て、厳しい表情と口調で言った。
「俺と貴彦は、その年食った新人の教育を担当することになった。
お前っていう実績があるからな」
ああそうですか。
遠夜は無視してコーヒーを飲んだ。
耳も塞いでやりたいくらいだ。
「だからお前の方に今までのように注力することはできない。
もっと自覚を持って仕事なり生活をしろ」
「はいはい」
投げやりに呟く。
べつに頼んでないしー。
「それとね、遠夜にも協力を仰ぎたい」
貴彦が遠夜を見つめて言った。
「俺に?」
「うん。
性格はまだよく判らないけど、能力のタイプ的には君に似てるんだ。
君ほどの高い能力は勿論持ってないんだけどね」
「だから、遠夜にはその新人のメンタル面でのフォローをしてもらいたい」
無理だろうけどな…と思いながらも、啓司は一応頼んでみる。
上層部と貴彦の意見だから仕方ない。
「俺にそんなことができるわけないだろ?!」
案の定、遠夜は即座に否定する。
貴彦は遠夜の感情に、不安定な色が濃く混ざるのを感じる。
これは、不安な感情。
「大丈夫だよ、別に彼を救えと言ってるわけじゃない。
話を聞くとか、食事を一緒にするとか、そんなことでいいんだ」
なだめるように、貴彦は言う。
「友達になってやれってことだよ。
難しいことじゃないだろう」
啓司は殊更にさらっと言う。
遠夜には難しいよな。
判ってるけど。
「無理。
二人とも判ってるくせに!」
遠夜は激しく首を振って拒否する。
不安な感情が濃密になり、怒りの感情が混ざり始める。
潮時か。
貴彦は決断した。
「判った。
すぐにとは言わない。
時間をかけてやっていこう」
手を伸ばし遠夜の肩に置いて言った。
ヒーリングの精神波をほんの少し送り込む。
遠夜の感情が少し落ち着いた。
「とにかく、明日の朝から俺が起こす。
覚悟しとけよ」
啓司が言って立ち上がった。
「え~~~」
遠夜は不満そうに口を尖らせた。
「明日に備えて早く寝ろ。
明日も仕事がてんこ盛りだ」
「うげ。
どーなってんだよこの頃。
おかしいだろこの仕事量」
「うるさい。
皆増えてるんだよ。
お前だけじゃない!」
イライラして啓司は言った。
まったくコイツは何も解ってない!
ぶつくさ文句ばかり言う遠夜を叱りつけながら3人で食べ散らかしたお菓子を片付け、貴彦と啓司は遠夜の部屋を辞去した。
廊下を歩きながら啓司は貴彦に
「やっぱり遠夜には無理なんじゃないか?」
と話しかけた。
しばらく無言で歩いていた貴彦は
「うん。
でもやっぱり、これからの遠夜の人生というかここでの生き方を考えたら、必要不可欠な挑戦だと思う」
きっぱり断じた。
「それはそうだけど…」
啓司はため息をつく。
地下大都市トウキョウにおける将来の幹部候補。
それはここに来た時からの遠夜の運命だ。
なにしろ、17年間ずっとこのトウキョウでブレインの最高値をマークし続けている。
トウキョウ始まって以来の天才と言っていい。
「しかしなあ、性格に難ありすぎだろ」
いつまで経っても子供のようなあの幼稚さ、感情の表し方。
「まあ確かに…」
貴彦も苦笑する。
「だけど俺たちしかいないんだよ、遠夜には。
ああいう天才と同時代に俺たちがトウキョウにいるっていうのは、天の配剤なのかもしれない」
自分だってサイキックではずば抜けた能力を持つ貴彦は、考え込むように言う。
啓司はその端正な横顔を眺めながら、自分の感情に嫉妬が混ざるのを抑えることができなかった。
俺なんか、ブレインとしては2流だ。
この事務処理能力と、遠夜に対しての指導力(何故かあの遠夜が啓司の指示にだけは従う)によって多少上層部に重用されているだけの話だ。
貴彦と別れて自分の部屋に入ると、啓司は余った菓子の入った箱をごみ箱に叩きつけるように捨てた。
こんな負の感情は良くない。
俺は、俺の役割を果たすだけだ。
地下大都市トウキョウの未来とか、地上都市東京の行く末とか、俺には関係ない!
啓司は遠夜の方を見て、厳しい表情と口調で言った。
「俺と貴彦は、その年食った新人の教育を担当することになった。
お前っていう実績があるからな」
ああそうですか。
遠夜は無視してコーヒーを飲んだ。
耳も塞いでやりたいくらいだ。
「だからお前の方に今までのように注力することはできない。
もっと自覚を持って仕事なり生活をしろ」
「はいはい」
投げやりに呟く。
べつに頼んでないしー。
「それとね、遠夜にも協力を仰ぎたい」
貴彦が遠夜を見つめて言った。
「俺に?」
「うん。
性格はまだよく判らないけど、能力のタイプ的には君に似てるんだ。
君ほどの高い能力は勿論持ってないんだけどね」
「だから、遠夜にはその新人のメンタル面でのフォローをしてもらいたい」
無理だろうけどな…と思いながらも、啓司は一応頼んでみる。
上層部と貴彦の意見だから仕方ない。
「俺にそんなことができるわけないだろ?!」
案の定、遠夜は即座に否定する。
貴彦は遠夜の感情に、不安定な色が濃く混ざるのを感じる。
これは、不安な感情。
「大丈夫だよ、別に彼を救えと言ってるわけじゃない。
話を聞くとか、食事を一緒にするとか、そんなことでいいんだ」
なだめるように、貴彦は言う。
「友達になってやれってことだよ。
難しいことじゃないだろう」
啓司は殊更にさらっと言う。
遠夜には難しいよな。
判ってるけど。
「無理。
二人とも判ってるくせに!」
遠夜は激しく首を振って拒否する。
不安な感情が濃密になり、怒りの感情が混ざり始める。
潮時か。
貴彦は決断した。
「判った。
すぐにとは言わない。
時間をかけてやっていこう」
手を伸ばし遠夜の肩に置いて言った。
ヒーリングの精神波をほんの少し送り込む。
遠夜の感情が少し落ち着いた。
「とにかく、明日の朝から俺が起こす。
覚悟しとけよ」
啓司が言って立ち上がった。
「え~~~」
遠夜は不満そうに口を尖らせた。
「明日に備えて早く寝ろ。
明日も仕事がてんこ盛りだ」
「うげ。
どーなってんだよこの頃。
おかしいだろこの仕事量」
「うるさい。
皆増えてるんだよ。
お前だけじゃない!」
イライラして啓司は言った。
まったくコイツは何も解ってない!
ぶつくさ文句ばかり言う遠夜を叱りつけながら3人で食べ散らかしたお菓子を片付け、貴彦と啓司は遠夜の部屋を辞去した。
廊下を歩きながら啓司は貴彦に
「やっぱり遠夜には無理なんじゃないか?」
と話しかけた。
しばらく無言で歩いていた貴彦は
「うん。
でもやっぱり、これからの遠夜の人生というかここでの生き方を考えたら、必要不可欠な挑戦だと思う」
きっぱり断じた。
「それはそうだけど…」
啓司はため息をつく。
地下大都市トウキョウにおける将来の幹部候補。
それはここに来た時からの遠夜の運命だ。
なにしろ、17年間ずっとこのトウキョウでブレインの最高値をマークし続けている。
トウキョウ始まって以来の天才と言っていい。
「しかしなあ、性格に難ありすぎだろ」
いつまで経っても子供のようなあの幼稚さ、感情の表し方。
「まあ確かに…」
貴彦も苦笑する。
「だけど俺たちしかいないんだよ、遠夜には。
ああいう天才と同時代に俺たちがトウキョウにいるっていうのは、天の配剤なのかもしれない」
自分だってサイキックではずば抜けた能力を持つ貴彦は、考え込むように言う。
啓司はその端正な横顔を眺めながら、自分の感情に嫉妬が混ざるのを抑えることができなかった。
俺なんか、ブレインとしては2流だ。
この事務処理能力と、遠夜に対しての指導力(何故かあの遠夜が啓司の指示にだけは従う)によって多少上層部に重用されているだけの話だ。
貴彦と別れて自分の部屋に入ると、啓司は余った菓子の入った箱をごみ箱に叩きつけるように捨てた。
こんな負の感情は良くない。
俺は、俺の役割を果たすだけだ。
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