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第一章 地下大都市トウキョウ
13.遠夜の評価
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しばらく二人で黙ってそれぞれの思いに耽っていると。
「お疲れ遠夜。
お、貴彦大丈夫なのか?」
背後から声をかけられた。
声で直紀と判る。
「ああ、ありがとう大丈夫。
今日は啓司の代わりに遠夜のマネジメント?」
貴彦がにっこり笑って答える。
直紀は頷いて遠夜の隣の椅子を引いて座った。
「今日は1日、会議参加お疲れさん。
しっかしやってくれたなあ遠夜…」
タブレット型端末を眺めながらため息をつく。
「えっ?何を?」
とりあえず惚けておこう。
遠夜は素知らぬ顔でスープを口に入れる。
「何をじゃねーよ、判ってるだろ。
今日の3つの会議からの報告書見たら、お前の評価凄いことになってるぞ」
「えーっ評価なんかされんの?」
だったらもっと真面目にやれば良かった。
いやでも真面目にやったからこそ、あんなふうになっちゃったんだし。
「啓司から説明を訊いてなかったか?
…ま、いいや、全部最高点の評価だ」
「マジすか」
意外な評価に驚いて問う。
直紀はタブレット端末を指の背でコツコツ叩きながら冷たく言い返した。
「点数は、な。
コメントは最悪だよ。
酷評されてる」
ああ、やっぱりな。
遠夜はそちらの方がすんなり納得した。
あ、じゃあ、恭香もか…
「まあ、今日突然初めて参加した未成年に、今までやってきたことを根底から覆されるような理論を、初見でぽっと出されちゃなあ。
しかも遠夜の理論の方が数段上を行っちゃってれば、尚更面白くないのは判るけど」
「大人の癖に大人げないね」
黙って聞いてた貴彦が少し笑って言った。
「そうなんだよ!
レポート読みながら俺は内心、空気読めない遠夜に喝采を送ったね。
だけど来年成人していろんなプロジェクトに関わるようになったら、大変だな遠夜」
「悪気は無かったんだ」
遠夜はぶつぶつ言う。
『空気読めない』
…確かに。その通りなんだよな…
「そりゃ幼い頃からお前を知ってる俺たちには、お前に他意がないってことくらい判るよ。
だけど他の大人はそうは思わないって事さ」
直紀は立ちあがり、遠夜の肩をぽんぽんと叩いて言った。
「いずれにせよ、初日にしては上出来だ。
明日のスケジュールはまたショートメッセージで知らせる。
早く寝めよ」
じゃあな、と言って直紀は食堂から出ていった。
「何も言わない方が良いのかなあ…」
遠夜はスプーンをもてあそびながら思わず呟く。
でもなあ、改善点はたくさん見えてるのに、目隠しをしたまましゃべってるような人たちの中に黙って座ってるのも辛すぎる…
貴彦は食べ終わった食器を押しやってテーブルに肘をつき、遠夜をじっと見て口を開いた。
「いや、今日みたいに思ったことはどんどん言った方がいい。
空気なんて読めなくて全然構わないんだよ。
遠夜の評価は絶対に下がらないし、そもそも来年から遠夜が関わるようなプロジェクトは、αクラスの人しか居ないものばかりになるはずだから」
そこで一度言葉を切ってニコッと笑った。
「恭香さんとか、俺とかね」
あっそーだ!
遠夜は唐突に思い出した。
そわそわと席を立つ。
「あの、俺…」
言いかける遠夜に貴彦はいたずらっぽく笑いかけた。
「部屋に戻る?
いいよ、ここは片付けとく。
恭香さんに宜しくね、心配してくれてありがとうって言っといて」
立ちがって食器の載ったプレートをふたつ持って立ち上がった。
ホント、精神って嫌だ!
遠夜はムカつきながら部屋へ戻る。
デスクの椅子に座り、早速ウェアラブル端末でショートメッセージを呼び出して、送信先に恭香のIDを打ち込んだ。
『貴彦は全然元気でメシ食ってます。
心配してくれてありがとうって言ってます』
と書き込んで、こっそり撮った食事している貴彦の画像を添付して送信した。
コーヒーでも淹れようと立ち上がると、ウェアラブル端末がアラームを鳴らした。
なんだかドキドキしながら操作すると文字が目の前に浮かび上がった。
『メッセありがと!
元気なようで何よりです。
画像もThankyou♡
友達に自慢します!!』
この、ハートマークってどういう意味だろう…
遠夜の悩みは尽きないのだった。
「お疲れ遠夜。
お、貴彦大丈夫なのか?」
背後から声をかけられた。
声で直紀と判る。
「ああ、ありがとう大丈夫。
今日は啓司の代わりに遠夜のマネジメント?」
貴彦がにっこり笑って答える。
直紀は頷いて遠夜の隣の椅子を引いて座った。
「今日は1日、会議参加お疲れさん。
しっかしやってくれたなあ遠夜…」
タブレット型端末を眺めながらため息をつく。
「えっ?何を?」
とりあえず惚けておこう。
遠夜は素知らぬ顔でスープを口に入れる。
「何をじゃねーよ、判ってるだろ。
今日の3つの会議からの報告書見たら、お前の評価凄いことになってるぞ」
「えーっ評価なんかされんの?」
だったらもっと真面目にやれば良かった。
いやでも真面目にやったからこそ、あんなふうになっちゃったんだし。
「啓司から説明を訊いてなかったか?
…ま、いいや、全部最高点の評価だ」
「マジすか」
意外な評価に驚いて問う。
直紀はタブレット端末を指の背でコツコツ叩きながら冷たく言い返した。
「点数は、な。
コメントは最悪だよ。
酷評されてる」
ああ、やっぱりな。
遠夜はそちらの方がすんなり納得した。
あ、じゃあ、恭香もか…
「まあ、今日突然初めて参加した未成年に、今までやってきたことを根底から覆されるような理論を、初見でぽっと出されちゃなあ。
しかも遠夜の理論の方が数段上を行っちゃってれば、尚更面白くないのは判るけど」
「大人の癖に大人げないね」
黙って聞いてた貴彦が少し笑って言った。
「そうなんだよ!
レポート読みながら俺は内心、空気読めない遠夜に喝采を送ったね。
だけど来年成人していろんなプロジェクトに関わるようになったら、大変だな遠夜」
「悪気は無かったんだ」
遠夜はぶつぶつ言う。
『空気読めない』
…確かに。その通りなんだよな…
「そりゃ幼い頃からお前を知ってる俺たちには、お前に他意がないってことくらい判るよ。
だけど他の大人はそうは思わないって事さ」
直紀は立ちあがり、遠夜の肩をぽんぽんと叩いて言った。
「いずれにせよ、初日にしては上出来だ。
明日のスケジュールはまたショートメッセージで知らせる。
早く寝めよ」
じゃあな、と言って直紀は食堂から出ていった。
「何も言わない方が良いのかなあ…」
遠夜はスプーンをもてあそびながら思わず呟く。
でもなあ、改善点はたくさん見えてるのに、目隠しをしたまましゃべってるような人たちの中に黙って座ってるのも辛すぎる…
貴彦は食べ終わった食器を押しやってテーブルに肘をつき、遠夜をじっと見て口を開いた。
「いや、今日みたいに思ったことはどんどん言った方がいい。
空気なんて読めなくて全然構わないんだよ。
遠夜の評価は絶対に下がらないし、そもそも来年から遠夜が関わるようなプロジェクトは、αクラスの人しか居ないものばかりになるはずだから」
そこで一度言葉を切ってニコッと笑った。
「恭香さんとか、俺とかね」
あっそーだ!
遠夜は唐突に思い出した。
そわそわと席を立つ。
「あの、俺…」
言いかける遠夜に貴彦はいたずらっぽく笑いかけた。
「部屋に戻る?
いいよ、ここは片付けとく。
恭香さんに宜しくね、心配してくれてありがとうって言っといて」
立ちがって食器の載ったプレートをふたつ持って立ち上がった。
ホント、精神って嫌だ!
遠夜はムカつきながら部屋へ戻る。
デスクの椅子に座り、早速ウェアラブル端末でショートメッセージを呼び出して、送信先に恭香のIDを打ち込んだ。
『貴彦は全然元気でメシ食ってます。
心配してくれてありがとうって言ってます』
と書き込んで、こっそり撮った食事している貴彦の画像を添付して送信した。
コーヒーでも淹れようと立ち上がると、ウェアラブル端末がアラームを鳴らした。
なんだかドキドキしながら操作すると文字が目の前に浮かび上がった。
『メッセありがと!
元気なようで何よりです。
画像もThankyou♡
友達に自慢します!!』
この、ハートマークってどういう意味だろう…
遠夜の悩みは尽きないのだった。
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