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第一章 地下大都市トウキョウ
16.地下大都市コウシュウからの客人
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啓司が戻ってきたと直紀からのショートメッセージで知って、遠夜はすぐに会いに行きたいと思った。
しかし仕事もあるし何となくどう接していいか判らず、貴彦にメッセージを送った。
『了解。
今日、仕事が終わったら遠夜の部屋に行く』
と短い返事が来て、遠夜はホッとして仕事に向かった。
本来なら、今日は貴彦や啓司と一緒に地上都市東京から来る17歳の新人との面談があったはずだったのだが、啓司と貴彦も今日は無理ということで延期になった。
遠夜は、いつもなら文句ばかり言って先延ばしにして啓司に怒られるデスクワークを淡々とこなし、驚愕した直紀から額に手を当てられるという暴挙を許し、午後の講演会に臨んだ。
直紀からのメッセージによると、講演会の内容はこんなものだった。
『13時より、地下大都市コウシュウから招いた技術者、梁宇航氏による講演会。
業務地区B講堂』
あれ、これって昨日、恭香さんが午後から面談した人なんじゃ…
と思いながらB講堂へ向かうと、扉の前で恭香が大人の男性二人とにこやかに話していた。
どうしよう…
意味もなくドキドキしながら、何気なさを装って講堂へ入ろうとする。
「あら、遠夜さん」
と恭香から声をかけられ、不自然な感じで立ち止まって「あ、昨日はどうも」と挨拶した。
ものすごくぎごちなかった気がする…不愛想になっちゃった。
「昨日はショートメッセージありがとう。
すごく嬉しかったです」
ニコッと笑って言う。
遠夜は笑顔が何だか眩しくて目を逸らし
「いや…貴彦はもう今日から仕事してるよ」
ととんちんかんな返事をしてしまった。
「そうなんですね!良かった」
と両手を顎の下で打合せてから、今日はふと気づいたように首を傾げて遠夜を見た。
「遠夜さんは、この講演会を聴きに?」
「そう。仕事の一環みたい」
遠夜が答えると、恭香はまたパッと笑顔になる。
「梁さんはコウシュウでも指折りの技術者テクニシャンで、お若いけどすごい能力の持ち主なの。
面白い講演になると思うわ」
では、と言って軽く手を振り、恭香は講堂の袖の方へ去っていった。
遠夜も精一杯の勇気を出して手を振り返した。
ああ、主催者の側なんだ。
ちゃんと仕事してるんだな。
俺も…来年からは貴彦や恭香とともにこの地下大都市トウキョウを運営する側になるんだ。
講堂の入口で同時通訳のイヤホンを配っていた人が、遠夜のイヤーカフを見て「要りますか?」と訊いてきた。
「いや、要らない」
と断って、遠夜は階段を上がり隅の方の席に腰かけた。
寝てても判らないかな?と思いながらイヤーカフを操作してウェアラブル端末にブルートゥースで接続する。
ウェアラブル端末の同時通訳アプリを起動して、広東語に設定した。
梁氏の講演は、非常にレベルの高い話で恭香の言った通りとても面白かった。
地上都市群のことなど今まで全然興味がなかった遠夜だが、勉強してみようかと思わせるものだった。
『お前は幹部候補なんだから、地上都市や地球全体の趨勢も見ていかなければならない。
いつまでもあれが嫌これが嫌なんて言っていられないんだよ』
啓司の声が蘇る。
そうなんだな…βクラスの啓司だってちゃんとそうやって将来を見据えてるんだ。
俺もいつまでも啓司や貴彦に甘えてちゃダメなんだな。
啓司に無性に会いたくなった。
あのおっかない声と、こんなに離れていたのは生まれて初めてだ。
しかし仕事もあるし何となくどう接していいか判らず、貴彦にメッセージを送った。
『了解。
今日、仕事が終わったら遠夜の部屋に行く』
と短い返事が来て、遠夜はホッとして仕事に向かった。
本来なら、今日は貴彦や啓司と一緒に地上都市東京から来る17歳の新人との面談があったはずだったのだが、啓司と貴彦も今日は無理ということで延期になった。
遠夜は、いつもなら文句ばかり言って先延ばしにして啓司に怒られるデスクワークを淡々とこなし、驚愕した直紀から額に手を当てられるという暴挙を許し、午後の講演会に臨んだ。
直紀からのメッセージによると、講演会の内容はこんなものだった。
『13時より、地下大都市コウシュウから招いた技術者、梁宇航氏による講演会。
業務地区B講堂』
あれ、これって昨日、恭香さんが午後から面談した人なんじゃ…
と思いながらB講堂へ向かうと、扉の前で恭香が大人の男性二人とにこやかに話していた。
どうしよう…
意味もなくドキドキしながら、何気なさを装って講堂へ入ろうとする。
「あら、遠夜さん」
と恭香から声をかけられ、不自然な感じで立ち止まって「あ、昨日はどうも」と挨拶した。
ものすごくぎごちなかった気がする…不愛想になっちゃった。
「昨日はショートメッセージありがとう。
すごく嬉しかったです」
ニコッと笑って言う。
遠夜は笑顔が何だか眩しくて目を逸らし
「いや…貴彦はもう今日から仕事してるよ」
ととんちんかんな返事をしてしまった。
「そうなんですね!良かった」
と両手を顎の下で打合せてから、今日はふと気づいたように首を傾げて遠夜を見た。
「遠夜さんは、この講演会を聴きに?」
「そう。仕事の一環みたい」
遠夜が答えると、恭香はまたパッと笑顔になる。
「梁さんはコウシュウでも指折りの技術者テクニシャンで、お若いけどすごい能力の持ち主なの。
面白い講演になると思うわ」
では、と言って軽く手を振り、恭香は講堂の袖の方へ去っていった。
遠夜も精一杯の勇気を出して手を振り返した。
ああ、主催者の側なんだ。
ちゃんと仕事してるんだな。
俺も…来年からは貴彦や恭香とともにこの地下大都市トウキョウを運営する側になるんだ。
講堂の入口で同時通訳のイヤホンを配っていた人が、遠夜のイヤーカフを見て「要りますか?」と訊いてきた。
「いや、要らない」
と断って、遠夜は階段を上がり隅の方の席に腰かけた。
寝てても判らないかな?と思いながらイヤーカフを操作してウェアラブル端末にブルートゥースで接続する。
ウェアラブル端末の同時通訳アプリを起動して、広東語に設定した。
梁氏の講演は、非常にレベルの高い話で恭香の言った通りとても面白かった。
地上都市群のことなど今まで全然興味がなかった遠夜だが、勉強してみようかと思わせるものだった。
『お前は幹部候補なんだから、地上都市や地球全体の趨勢も見ていかなければならない。
いつまでもあれが嫌これが嫌なんて言っていられないんだよ』
啓司の声が蘇る。
そうなんだな…βクラスの啓司だってちゃんとそうやって将来を見据えてるんだ。
俺もいつまでも啓司や貴彦に甘えてちゃダメなんだな。
啓司に無性に会いたくなった。
あのおっかない声と、こんなに離れていたのは生まれて初めてだ。
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