BREAK THROUGHー地下大都市からの脱出ー

Dry_Socket

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第二章 出会い

2.初対面

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 遠夜はデスクワークをこなしてから会議に出て、場を紛糾させないように意見を述べて採用になった。
 人間力ついてきたんじゃないか、俺。
 ちょっと自信もついてきた。

 貴彦は主にESPの訓練だった。
 αクラスの指導資格を持つ先輩から透視と予知の訓練を受け疲労困憊した。
 訓練中はイヤーカフを外さなくてはならないので精神感応力テレパシーが解放されてしまって、それを抑えながらの精神集中を要求されるため、消耗が激しい。

 貴彦がぐったりと椅子に腰かけて休憩していると、悠美がやってきて隣に座った。
 貴彦はわずかに緊張して座り直す。

 『お疲れ様。だいぶ上達してきたね』
 声に出さずに直接脳に語りかけてくる。
 『ありがとう。
 でもこんなに疲れてたらダメですね』
 貴彦もなるべく表層意識に乗せるようにして話す。

 『ある能力を抑制しながら他の能力を遣うのは疲れるよ。
 貴彦は精神感応力テレパシーがずば抜けてるから、ある意味あたしなんかよりも大変かも』
 『悠美さんほどバランスが良ければ良かったんだけど』
 貴彦は思わず苦笑する。

 『ところで、今日2時からN5小会議室だよね?』
 『そう。結構厄介そうな17歳の男子ですよ』
 『そうなんだ。
 ずいぶん特殊なケースだね』

 考えるような素振りで一度瞬きをすると悠美は立ち上がった。
 「じゃ、また後で」
 と口に出して言って、貴彦に笑いかけると去っていった。

 貴彦はほっと息を漏らす。
 悠美の笑顔がやけに嬉しかった。
 午後が俄然、楽しみになった。

 午後1時に3人で食堂に落ち合って昼食を摂り、業務地区オフィスセクションに向かった。
 N5小会議室はその名のとおり、10人前後が入れるだけの小さなスペースだった。

 「これさあ、真人のサイキックが爆発したら、まずいんじゃね?」
 遠夜が心配そうに言う。
 「狭いよね、確かに」
 貴彦も部屋を見まわして言った。

 「まあ、ここを指定されちゃったんだから仕方ない。
 ドア開けとくか?」
 啓司が言って、扉を開く。

 と、ちょうど扉の前にいた人物が、驚いたように入ってきた。
 「おっ、ありがとう。
 よお遠夜、久しぶりだな。
 噂は聞いてるぞ。
 カンファレンスクラッシャーってな」
 わははと口を開けて笑う。

 「カンファレンスクラッシャー…」
 貴彦も啓司も笑いだす。
 「今日はちゃんとやったよ!」
 遠夜は思わず怒鳴る。
 なんだみんな酷いなあ。

 その時、開いたままの扉をコンコンとノックする音が聞こえ、本部の役員が「すみません、幸田真人さんと先生をお連れしました」と言った。
 「あ、どうぞどうぞ」
 隆一が、緊張した面持ちの地上都市からの客人を部屋の中に誘った。
 細長い会議室の奥側の席に案内する。

 「遅くなりました、すみません」
 悠美が入ってくる。
 貴彦は自分の心拍数が少し上がるのを感じた。
 落ち着け、気づかれる。

 長方形のテーブルの短い辺に幸田真人と担任教師、その横の長い辺に未成年アンダーの3人、真人の向かい側に隆一と悠美が座った。
 早くも真人からにじみ出る嫌な感じの精神波を貴彦は感じ取った。
 まあ、無理もないかな…

 隆一が皆を見まわして口を開いた。
 「えーと、じゃあ始めましょうか。
 本日はご足労いただきまして、ありがとうございます。
 こちらの都合で日にちを変更致しまして申し訳ありません」
 3人も隆一や悠美と一緒に頭を下げる。

 真人は思ったよりも線の細い、黒髪と抜けるように白い肌が特徴的な少年だった。
 天然の太陽光のない地下大都市でもこんなに色の白い奴は稀だなあ…白人の血が入ってる?
 貴彦が思っていると、真人が急にこちらを振り向いた。
 「こいつ、気に入らない。
 追い出して。
 じゃなきゃ何も喋らない!」

 おお、いきなり来たか。
 カウンター攻撃。
 その場にいた地下大都市組皆が思う。

 先生は慌てたように「こら幸田、今日はそういうこと言わないって約束したろう?」となだめる。
 真人はぷいっと顔を背け、だんまりを決め込んだ。

 こりゃあ前途多難だ…
 そこにいた全員が心の中でため息をついた。

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