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第一章 何処へ?
3.平安時代??
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あたしは身じろぎして、目を開けた。
低いベッドの周りで泣き伏していた人たちが顔をあげて、のしかかるように顔を覗き込む。
「お姫様っっ」
「お気づきあそばしましたか!!」
えっ!
あたしは驚いて周りを見回そうとして…頭が重くて首が回せず、諦めて硬い枕に頭をつける。
あたしの顔を覗き込んだ人たちの、異様ないでたちに声も出ない。
なに、この人たち…
錦絵とか、平安絵巻物とか、百人一首とか、…そんな時代の恰好して、涙で化粧がぐちゃぐちゃに崩れてて、髪もめちゃくちゃに壊れてて、凄まじい有様だった。
「誰か、典薬助殿を!」
「誰か、お殿様と北の方様を!
お姫様がお気づきあそばした!」
一番近くにいて、あたしの手を握りしめていた女性が大声で呼ばわり、あたしが寝ている部屋の簾?のようなものの外で「畏まりました!」という声がしてバタバタと人の走り回る音がする。
「伊都子様、ご気分はいかがでいらっしゃいますか?
まだお苦しゅうあそばしますか?」
あたしの表情の変化を見逃すまいとするように必死であたしの顔を凝視しながら訊く、その女性にあたしは好感を持った。
化粧は崩れ、髪は乱れているけど、あたしより年上な感じの若い女性。
「いつこ」というのが誰なのか判らないけど、とりあえずあたしを指しているようだ。
床に縫い付けられているかのように重く感じる頭を、頑張って左右に振った。
なんだか異様に疲れているけど、苦しいとかはない。
でもこの布団、重い…
何でできてるんだコレ。
しかもこの強烈な抹香の匂い。頭痛がしてくるよ。
よく皆、平気だなあ。
お経の大合唱は止んだようだ。
ばたばたと部屋の中を走り回る音だけが響いている。
板敷の床なのかな?
部屋全体がとても暗くて、よく判らない。
女性は安心したようにあたしの手を離して、ほっと息をつき、またさめざめと泣きだした。
「良かった…伊都子様にもしものことがあれば、この式部も生きては居れませなんだ…」
やがて、簾の縁を上げてお爺さんが入ってきた。
白髪の髷がほんのちょびっと、頭の上に乗っかってる感じ。
痩せていて、しわの寄った直衣の中で身体が泳いでるように見える。
「お姫様…ほんにようございました。この助も命拾いいたしました」
穏やかに笑って「お脈を拝見」と言いながらあたしの手をとって手首に指をあてた。
お爺さんの指、お歳のせいか震えているけど…脈、判ります?
あたしはちょっと不安になる。
「お熱を拝見」
と言って、額に触る。
乾いて体温の低い掌の感触が心地よかった。
「お熱がまだ少しあるようですが…心の臓には問題なさそうじゃ。
あとはたくさん召し上がって、病をご自分の力で退治なさることが肝要。
後ほど薬湯を届けさせますゆえ、式部の言うことを聞いて、きちんと服用なさるのですぞ」
そう言って式部という女性に目配せすると、簾を持ち上げ出て行った。
ちょっと待って!
お爺さん、ここはどこ?!
あたしはだれ?!
あたしはカラカラに乾いている喉を振り絞って声を出そうとするが、かすれて声が出ない。
重い頭(比喩じゃなくて、物理的に重い)と重い布団に阻まれて起き上がることもできず、あたしは不安でいっぱいになり泣き出した。
どうなってるの?
あたし、どうなっちゃったの?!
低いベッドの周りで泣き伏していた人たちが顔をあげて、のしかかるように顔を覗き込む。
「お姫様っっ」
「お気づきあそばしましたか!!」
えっ!
あたしは驚いて周りを見回そうとして…頭が重くて首が回せず、諦めて硬い枕に頭をつける。
あたしの顔を覗き込んだ人たちの、異様ないでたちに声も出ない。
なに、この人たち…
錦絵とか、平安絵巻物とか、百人一首とか、…そんな時代の恰好して、涙で化粧がぐちゃぐちゃに崩れてて、髪もめちゃくちゃに壊れてて、凄まじい有様だった。
「誰か、典薬助殿を!」
「誰か、お殿様と北の方様を!
お姫様がお気づきあそばした!」
一番近くにいて、あたしの手を握りしめていた女性が大声で呼ばわり、あたしが寝ている部屋の簾?のようなものの外で「畏まりました!」という声がしてバタバタと人の走り回る音がする。
「伊都子様、ご気分はいかがでいらっしゃいますか?
まだお苦しゅうあそばしますか?」
あたしの表情の変化を見逃すまいとするように必死であたしの顔を凝視しながら訊く、その女性にあたしは好感を持った。
化粧は崩れ、髪は乱れているけど、あたしより年上な感じの若い女性。
「いつこ」というのが誰なのか判らないけど、とりあえずあたしを指しているようだ。
床に縫い付けられているかのように重く感じる頭を、頑張って左右に振った。
なんだか異様に疲れているけど、苦しいとかはない。
でもこの布団、重い…
何でできてるんだコレ。
しかもこの強烈な抹香の匂い。頭痛がしてくるよ。
よく皆、平気だなあ。
お経の大合唱は止んだようだ。
ばたばたと部屋の中を走り回る音だけが響いている。
板敷の床なのかな?
部屋全体がとても暗くて、よく判らない。
女性は安心したようにあたしの手を離して、ほっと息をつき、またさめざめと泣きだした。
「良かった…伊都子様にもしものことがあれば、この式部も生きては居れませなんだ…」
やがて、簾の縁を上げてお爺さんが入ってきた。
白髪の髷がほんのちょびっと、頭の上に乗っかってる感じ。
痩せていて、しわの寄った直衣の中で身体が泳いでるように見える。
「お姫様…ほんにようございました。この助も命拾いいたしました」
穏やかに笑って「お脈を拝見」と言いながらあたしの手をとって手首に指をあてた。
お爺さんの指、お歳のせいか震えているけど…脈、判ります?
あたしはちょっと不安になる。
「お熱を拝見」
と言って、額に触る。
乾いて体温の低い掌の感触が心地よかった。
「お熱がまだ少しあるようですが…心の臓には問題なさそうじゃ。
あとはたくさん召し上がって、病をご自分の力で退治なさることが肝要。
後ほど薬湯を届けさせますゆえ、式部の言うことを聞いて、きちんと服用なさるのですぞ」
そう言って式部という女性に目配せすると、簾を持ち上げ出て行った。
ちょっと待って!
お爺さん、ここはどこ?!
あたしはだれ?!
あたしはカラカラに乾いている喉を振り絞って声を出そうとするが、かすれて声が出ない。
重い頭(比喩じゃなくて、物理的に重い)と重い布団に阻まれて起き上がることもできず、あたしは不安でいっぱいになり泣き出した。
どうなってるの?
あたし、どうなっちゃったの?!
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