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第一章 何処へ?
17.お誘い
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内侍さんは集中を解いて、ほっと息をついた。
お殿様は御簾の裾をからげて「何と…?」と覗き込んでくる。
そのお殿様の背から、ひょこひょこと若公達ふたりの顔も見える。
「お姫様がよくお読みあそばされる前に、わたくしが拝読してしまい申し訳ございませんでした。
ただ…いつものように、何もおっしゃらず破られてしまったらと思うと…」
内侍さんは、手をついてあたしに深々と頭を下げた。
伊都子姫ってば…
あたしは苦笑して「構わないわ。早くお返事を」と言うしかない。
「恐れ多くも主上のお手紙には、有り難い丁寧なお見舞いと、姫様のご快癒に対する寿ぎのお歌が美しい手蹟にて書いてございました」
「え?それで、何のお返事??」
あたしはそこにいる皆の心に浮かんだであろう疑問を口にする。
「お手紙は二枚に渡って居りまして」
と内侍さんはコホンと咳をして続ける。
「…大変申し上げにくい内容なのですが…あの…姫様が激昂される可能性が…高いかと」
皆、心持ちあたしから距離を取る。
失礼ねえ…
あたしはまたもや苦笑。
「良いわよ。怒ったりしないから」
「…左様でございますか?
…それでは、お話し申し上げますわ…」
内侍さんは居住まいを正す。
「二枚目は、今秋に宮中で催される 薫物合わせへの、姫様のご招待状でございました」
早口で言ってパチンと口を閉じてしまった内侍さんに、あたしは「ん?」と首を傾げた。
それが…何?
周りを見ると、皆一斉に顔を逸らす。
わけわからん。
ポカンとしているあたしに、式部さんが覚悟を決めたように話し始める。
「毎年、秋の始まりのころに宮中で行われる、薫物合わせの行事でございますわ。
ただ…今年は、今春に入内あそばした新女御のお披露目も兼ねて、新太政大臣が大々的に薫物合わせをなさるという噂で。
新女御側が薫物に詳しい女性を手を尽くして集めはじめているという話も耳に致します」
「前の太政大臣の御娘御であられて、今は宝鏡殿の女御とお呼び奉る姫君の方には旧太政大臣の失脚により、宝鏡殿は光を失ったようになっておられるとか。
薫物合わせの女人集めどころではないのかもしれません」
お殿様が悔しそうに扇の音を立てて閉じる。
そうか、右大臣であるお殿様は、前の太政大臣の失脚で影響を受けたのか。
「主上は一番先に入内なさってそれなりに情もおありになる宝鏡殿の女御が、薫物合わせで大敗を喫する結果になることを避けたいとお考えなのでしょう。
主上は幼いころから伊都子姫様とお過ごしになられることも多かったので、姫様の薫物に関する知識と技量について高く買っておられるのだと存じます」
つまり…あたしに、薫物合わせとやらで古参の奥さんの側につけということなのね?
伊都子姫がもし天皇に嫁いでいたら、後宮でライバル関係になっていたであろう姫の味方になれと。
そりゃあ、伊都子姫じゃなくても怒るんじゃないかしら。
あたしは思わず唸った。
なんて返事をしよう?
お殿様は御簾の裾をからげて「何と…?」と覗き込んでくる。
そのお殿様の背から、ひょこひょこと若公達ふたりの顔も見える。
「お姫様がよくお読みあそばされる前に、わたくしが拝読してしまい申し訳ございませんでした。
ただ…いつものように、何もおっしゃらず破られてしまったらと思うと…」
内侍さんは、手をついてあたしに深々と頭を下げた。
伊都子姫ってば…
あたしは苦笑して「構わないわ。早くお返事を」と言うしかない。
「恐れ多くも主上のお手紙には、有り難い丁寧なお見舞いと、姫様のご快癒に対する寿ぎのお歌が美しい手蹟にて書いてございました」
「え?それで、何のお返事??」
あたしはそこにいる皆の心に浮かんだであろう疑問を口にする。
「お手紙は二枚に渡って居りまして」
と内侍さんはコホンと咳をして続ける。
「…大変申し上げにくい内容なのですが…あの…姫様が激昂される可能性が…高いかと」
皆、心持ちあたしから距離を取る。
失礼ねえ…
あたしはまたもや苦笑。
「良いわよ。怒ったりしないから」
「…左様でございますか?
…それでは、お話し申し上げますわ…」
内侍さんは居住まいを正す。
「二枚目は、今秋に宮中で催される 薫物合わせへの、姫様のご招待状でございました」
早口で言ってパチンと口を閉じてしまった内侍さんに、あたしは「ん?」と首を傾げた。
それが…何?
周りを見ると、皆一斉に顔を逸らす。
わけわからん。
ポカンとしているあたしに、式部さんが覚悟を決めたように話し始める。
「毎年、秋の始まりのころに宮中で行われる、薫物合わせの行事でございますわ。
ただ…今年は、今春に入内あそばした新女御のお披露目も兼ねて、新太政大臣が大々的に薫物合わせをなさるという噂で。
新女御側が薫物に詳しい女性を手を尽くして集めはじめているという話も耳に致します」
「前の太政大臣の御娘御であられて、今は宝鏡殿の女御とお呼び奉る姫君の方には旧太政大臣の失脚により、宝鏡殿は光を失ったようになっておられるとか。
薫物合わせの女人集めどころではないのかもしれません」
お殿様が悔しそうに扇の音を立てて閉じる。
そうか、右大臣であるお殿様は、前の太政大臣の失脚で影響を受けたのか。
「主上は一番先に入内なさってそれなりに情もおありになる宝鏡殿の女御が、薫物合わせで大敗を喫する結果になることを避けたいとお考えなのでしょう。
主上は幼いころから伊都子姫様とお過ごしになられることも多かったので、姫様の薫物に関する知識と技量について高く買っておられるのだと存じます」
つまり…あたしに、薫物合わせとやらで古参の奥さんの側につけということなのね?
伊都子姫がもし天皇に嫁いでいたら、後宮でライバル関係になっていたであろう姫の味方になれと。
そりゃあ、伊都子姫じゃなくても怒るんじゃないかしら。
あたしは思わず唸った。
なんて返事をしよう?
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