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第一章 何処へ?
20.式部さんの話
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式部さんは、義光君が出て行った方を見ながら「…あの悪童がっ!」と毒づいた。
そしてビックリしているあたしに慰めるように言った。
「お気になさることはありませんわ。
伊靖様と義光様は昔からあんな感じでございましたでしょう。
お小さいころから伊都子姫様をからかっては反応を楽しんで。
本当に悪趣味」
あ…からかわれたのか。
あたしは、ちょっとがっかりしている自分に驚いた。
あの、薄い色の虹彩。吸い込まれるように綺麗だった。
『惚れそうですよ』
って…今まで告られたこともないあたしにはなんだか嬉しい言葉だった。
式部さんは作業に戻りながら、誰にともなしに話し出す。
「わたくしも、以前から伊都子姫様と弟君妹君のお側におりましたから、お殿様や北の方様は勿論、伊靖様や二の姫様が今回どれほど伊都子姫様のことを案じていらっしゃったかよく存じております」
「義光様も、傷心の姫様を元気づけようとして、あんなことをなさったのだと思います。
しかし失礼を承知で申し上げれば…頭が悪いというか…洒落人を気取って居られるのかもしれませんが…」
ふうっとため息をつき、あたしを見た。
「左近衛中将様も、三日夜の餅を焦っては居られないと存じます。
最初は姫様、左近衛中将様がこのお屋敷の中に入ることすら許されなかったでしょう…
それでも粘り強く毎日毎日通っていらして、だんだん少しずつ姫様の御心を解いてこられた。
姫様だって、昨日はお食事を一緒に召し上がるところまでお出来になられた」
だから「みかよのもち」って何??
あたしは話が見えず混乱する。
しかし…伊都子姫、「いわのひめ」と言われても仕方ないなぁ。
いくらなんでも家にも入れないって酷いよね。
左近衛中将様の執念みたいな愛情も凄いけど。
「義光様のおっしゃるように、わたくしどもも姫様があの世とこの世の間からお戻りあそばしてから、なんとのうお美しくなられたように感じておりますのよ。
表情が急に豊かになられたというか。笑みを浮かべられること自体、お珍しいですし」
たぶん、貴族とか上つ方って、感情をあまり表情にあらわさないんだろうな。
あたしは恥ずかしくなった。
ゲラゲラ笑ったりはしてないと思うけど…
だから、涙が有効な感情の表現方法なんだろうか。
なにかっつうとほろほろと涙を零すもんなあ、みんな。
美しく感情を表現する手段なんだろう。
あたしもそれ、会得しなくちゃいけないのかな?
式部さんが糸を切って、持っていた着物をあたしの方へ掲げて見せた。
「さ、姫様、お気に入りの袿の繕いが出来上がりましたわ。
今宵はこれをお召しになって、左近衛中将様をお迎えあそばせ」
え、今日も来るのか…
あたしの胸は、途端にドキドキしはじめた。
そしてビックリしているあたしに慰めるように言った。
「お気になさることはありませんわ。
伊靖様と義光様は昔からあんな感じでございましたでしょう。
お小さいころから伊都子姫様をからかっては反応を楽しんで。
本当に悪趣味」
あ…からかわれたのか。
あたしは、ちょっとがっかりしている自分に驚いた。
あの、薄い色の虹彩。吸い込まれるように綺麗だった。
『惚れそうですよ』
って…今まで告られたこともないあたしにはなんだか嬉しい言葉だった。
式部さんは作業に戻りながら、誰にともなしに話し出す。
「わたくしも、以前から伊都子姫様と弟君妹君のお側におりましたから、お殿様や北の方様は勿論、伊靖様や二の姫様が今回どれほど伊都子姫様のことを案じていらっしゃったかよく存じております」
「義光様も、傷心の姫様を元気づけようとして、あんなことをなさったのだと思います。
しかし失礼を承知で申し上げれば…頭が悪いというか…洒落人を気取って居られるのかもしれませんが…」
ふうっとため息をつき、あたしを見た。
「左近衛中将様も、三日夜の餅を焦っては居られないと存じます。
最初は姫様、左近衛中将様がこのお屋敷の中に入ることすら許されなかったでしょう…
それでも粘り強く毎日毎日通っていらして、だんだん少しずつ姫様の御心を解いてこられた。
姫様だって、昨日はお食事を一緒に召し上がるところまでお出来になられた」
だから「みかよのもち」って何??
あたしは話が見えず混乱する。
しかし…伊都子姫、「いわのひめ」と言われても仕方ないなぁ。
いくらなんでも家にも入れないって酷いよね。
左近衛中将様の執念みたいな愛情も凄いけど。
「義光様のおっしゃるように、わたくしどもも姫様があの世とこの世の間からお戻りあそばしてから、なんとのうお美しくなられたように感じておりますのよ。
表情が急に豊かになられたというか。笑みを浮かべられること自体、お珍しいですし」
たぶん、貴族とか上つ方って、感情をあまり表情にあらわさないんだろうな。
あたしは恥ずかしくなった。
ゲラゲラ笑ったりはしてないと思うけど…
だから、涙が有効な感情の表現方法なんだろうか。
なにかっつうとほろほろと涙を零すもんなあ、みんな。
美しく感情を表現する手段なんだろう。
あたしもそれ、会得しなくちゃいけないのかな?
式部さんが糸を切って、持っていた着物をあたしの方へ掲げて見せた。
「さ、姫様、お気に入りの袿の繕いが出来上がりましたわ。
今宵はこれをお召しになって、左近衛中将様をお迎えあそばせ」
え、今日も来るのか…
あたしの胸は、途端にドキドキしはじめた。
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