三日夜の餅はハイティーと共に

Dry_Socket

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第一章 何処へ?

22.生きる決意

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 あたしはまた大きくため息をつくと、文机の横に置いてあった、千代紙のような和紙で綺麗に装丁された冊子を手に取った。

 中を開いてみると、思った通り、薫物の配合のレシピのようだ。
 しっかし…文法は現代仮名遣いのように読めるとはいえ、名詞は平安時代の言葉のままなんだよ!
 「黒方」とか「荷葉」とか…何のことやら。

 うーむ、と文机の前で唸っていると、後ろから控えめに衛門さんが声をかけてきた。
 「姫様…もう、薫物のご研究でございますか?
 ひとやすみあそばして、甘いものでもお召し上がりになられては?」

 あ、そういえば。ちょっとお腹空いてきたよ。
 この時代って、お昼ご飯ないのかな?

 お膳にゴマ団子のようなものと果物(柑橘)が盛られて置いてある。
 飲み物もあるけど…なんだこれ、甘酒?
 砂糖がないんだろうか。
 どれも甘さ控えめ(柚子みたいのは酸っぱかった)。
 
 だけど、こう動かなくちゃなあ…
 病み上がりとはいえ、半径3Mくらいしか動いてない。しかも膝ずり。
 運動不足で他の病気になんね?

 伊靖君みたいに馬とか乗れればいいのに。
 イヤ、乗馬の経験はないけどさ。
 伊靖君が楽しそうだったから。

 式部さんが漆塗りの平たく大きな箱を持ってきた。
 「衛門が、姫様が調香のご研究をなさって居られると申しておりましたので、お持ちしました。
 姫様がまたやる気になってくださって、わたくしども本当に安堵しております」

 そっか。
 出家したいばっかりだった伊都子姫は、薫物もめてたのか。
 
 あっ!
 それで、さっき皆して薫物合わせに参加しろしろってうるさく勧めてきたんだ。
 あたしが仕方なく、やるって言ったらあんなに喜んでたのもそのせいか…

 あたしは不覚にも涙が出そうになった。
 皆に愛されてるじゃん、伊都子さん。

 あたしは、死にたがってた貴女に突き飛ばされてここに来た。
 自分の身体を失って、貴女の身体を借りてまったく違う世界で生きることになって。
 戸惑うことばかりだけど、貴女の代わりにあたしと貴女、二人分の人生を。

 あたしなりのやり方で、精一杯、生きてみるよ。
 怒りながらかもしれないけど、見てて。

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