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第二章 賀茂祭・流鏑馬神事
16.二通の手紙
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あたしは侍女さんに、ジェスチャーで計画を指示した。
侍女さんは渋りながらも、あたしの命に逆らうわけにもいかず、あたしからそろそろと離れていった。
少し距離を取り廊下に出ると、さも今気づいたように「あ、伊靖様!こんなところにいらしたのですか?」と大きな声で話しかけた。
伊靖君が驚いたように侍女さんの方に顔を向けたところで、あたしは伊靖君の後ろから二通の手紙を素早く取り上げる。
「あっ…!」
伊靖君は声を上げながら手紙の方を見て、その先にいるあたしに気づいて仰天したように
「姉上?!何を…ちょっと!それはっ!」
と言いざまにあたしの手から取り返そうとする。
あたしは伊靖君から身体ごと背け、手紙を検分する。
一通は、伊靖君に宛てた手紙のようだ。
『求愛ありがとう。でもわたし、民部大輔様の方を選ぶから』
といった内容で、見た目も紙も、心なしか筆の運びまで素っ気ない感じだった。
「姉上!ちょっ…
やめてくださいよ!」
伊靖君が必死に伸ばしてくる手を払いのけながらもう一通を見る。
民部太夫様と書いてあるから、義光君宛てらしい。
『求愛、すごくすごく嬉しかったです!
ぜひ今夜わたくしの許へいらっしゃってくださいね♡
治部大輔様は好みじゃないの』
って感じの、結構あけすけに求愛を受けるぞ!的な内容のハイテンションな手紙だった。
紙も装飾も薫りも、非常に気を遣った手紙であることが判る。
おお、義光君モテんじゃん。
「あねうえっ!」
伊靖君が手紙を奪い取った。
あたしは同情の眼差しで伊靖君を見遣る。
可哀相な弟よ…
「…なんですかその目は」
伊靖君は手紙を背後に隠しながら、あたしを見下ろした。
「言っときますけど、これで12勝10敗ですからね!
私の方が勝ってるんです!
今回の女は、どうも最初から乗り気じゃなかったんだ私は」
横を向いて吐き捨てる。
よく言うよ、さっきめちゃめちゃ悔しそうだったじゃん。
しっかし、こいつら…
どんな遊びしてるんだよ!
ナンパして勝率競い合ってんのか。
高校にもいたなぁ、そういうチャラい男子が…
まあ、それはそれとして。
あたしは本題に入る。
「どうして伊靖君が、義光君宛ての返事まで持っているの?」
伊靖君はあからさまにギクッとする。
「いや…それは…」
「もしかして、手紙を届けに来た家来から義光君の分まで取り上げたんじゃないでしょうね?」
「まさかそんな~…あ、はは…」
伊靖君の目が完全に泳ぐ。
手紙の見た目で、内容まで見当がつくからなあ。
この勝負ごと、なかったことにしようと思ったに違いない。
あたしは大袈裟にため息をつく。
「あなたったら、とんでもないわねえ…
これを義光君が知ったら、どう思うかしらね?
負けるのが嫌で、この勝負なかったことにしようとしたなんて…」
ねえ?
あたしは笑いながら、背の高い伊靖君を下から睨めつけた。
侍女さんは渋りながらも、あたしの命に逆らうわけにもいかず、あたしからそろそろと離れていった。
少し距離を取り廊下に出ると、さも今気づいたように「あ、伊靖様!こんなところにいらしたのですか?」と大きな声で話しかけた。
伊靖君が驚いたように侍女さんの方に顔を向けたところで、あたしは伊靖君の後ろから二通の手紙を素早く取り上げる。
「あっ…!」
伊靖君は声を上げながら手紙の方を見て、その先にいるあたしに気づいて仰天したように
「姉上?!何を…ちょっと!それはっ!」
と言いざまにあたしの手から取り返そうとする。
あたしは伊靖君から身体ごと背け、手紙を検分する。
一通は、伊靖君に宛てた手紙のようだ。
『求愛ありがとう。でもわたし、民部大輔様の方を選ぶから』
といった内容で、見た目も紙も、心なしか筆の運びまで素っ気ない感じだった。
「姉上!ちょっ…
やめてくださいよ!」
伊靖君が必死に伸ばしてくる手を払いのけながらもう一通を見る。
民部太夫様と書いてあるから、義光君宛てらしい。
『求愛、すごくすごく嬉しかったです!
ぜひ今夜わたくしの許へいらっしゃってくださいね♡
治部大輔様は好みじゃないの』
って感じの、結構あけすけに求愛を受けるぞ!的な内容のハイテンションな手紙だった。
紙も装飾も薫りも、非常に気を遣った手紙であることが判る。
おお、義光君モテんじゃん。
「あねうえっ!」
伊靖君が手紙を奪い取った。
あたしは同情の眼差しで伊靖君を見遣る。
可哀相な弟よ…
「…なんですかその目は」
伊靖君は手紙を背後に隠しながら、あたしを見下ろした。
「言っときますけど、これで12勝10敗ですからね!
私の方が勝ってるんです!
今回の女は、どうも最初から乗り気じゃなかったんだ私は」
横を向いて吐き捨てる。
よく言うよ、さっきめちゃめちゃ悔しそうだったじゃん。
しっかし、こいつら…
どんな遊びしてるんだよ!
ナンパして勝率競い合ってんのか。
高校にもいたなぁ、そういうチャラい男子が…
まあ、それはそれとして。
あたしは本題に入る。
「どうして伊靖君が、義光君宛ての返事まで持っているの?」
伊靖君はあからさまにギクッとする。
「いや…それは…」
「もしかして、手紙を届けに来た家来から義光君の分まで取り上げたんじゃないでしょうね?」
「まさかそんな~…あ、はは…」
伊靖君の目が完全に泳ぐ。
手紙の見た目で、内容まで見当がつくからなあ。
この勝負ごと、なかったことにしようと思ったに違いない。
あたしは大袈裟にため息をつく。
「あなたったら、とんでもないわねえ…
これを義光君が知ったら、どう思うかしらね?
負けるのが嫌で、この勝負なかったことにしようとしたなんて…」
ねえ?
あたしは笑いながら、背の高い伊靖君を下から睨めつけた。
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