三日夜の餅はハイティーと共に

Dry_Socket

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第三章 賀茂祭・露頭の儀

9.縫姫との交流

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 あたしは、お礼を直接言うのは諦めた。
 縫姫が嫌がるだろうってのはもちろんのこと、式部さん達もきっとまたトラブルになりはしないかと気を揉むだろう。

 せめてもと、お礼の手紙を書くことにした。
 あと、プレゼントも用意することにした。

 『綺麗な袿を仕立ててくださって、本当にありがとうございました。
 この袿を着て、路頭の儀を観に行くのがとても楽しみです。
 ひと針ひと針、丁寧に美しく丹念に縫ってくださっているので、とても着易くて形がよく軽く仕上がっていて有り難く思います。
 いつの日か、お目にかかれる日がくることを願っております』

 伊都子姫の扇子コレクションの中からデザインの落ち着いた美しいものを選んで、「荷葉」というお香をベースにあたしなりにアレンジを加えた爽やかな薫りをたきしめた。

 内侍さんに頼んで綺麗にラッピングしてもらって、侍女さんに届けてもらった。
 喜んでくれないまでも、あたしの感謝の気持ちが伝わると良いなあ。
 と思っていたら、その日の夜に、なんと縫姫からお返事が来た。

 『伊都子姫様
 丁寧なお文を頂戴し、ありがとうございました。
 わたくしごときの拙い手仕事をお褒め頂き、恐縮に存じながらも大変嬉しく思います。
 路頭の儀に、この袿が伊都子姫様のお供をしていろいろなものを拝見してくれればわたくしも満足でございます』

 という、お姉さんとは思えない、へりくだった文章だった。
 その先にはまだ文章が続いている。

 『物のうちにも入らないわたくしには、勿体ない立派な扇子をありがとうございます。
 わたくしのような不調法者でも感激する大変良い香りがして…伊都子姫様の薫物に関する才能は、噂以上であると驚きました。
 何かわたくしにできることがあれば、ぜひご命令くださいませ』

 えーっホントっ?!
 あたしは飛び上がりたいほど嬉しかった。
 お世辞でもすっごい嬉しい!
 今まで、何を習ってもうまくいかなくて、不器用で使えないやつなのに…

 縫姫、良い人だ。
 あたしは好印象を持った。
 薫物合わせで相談できることがあれば、ぜひ相談してみよう。

 義光君は相変わらず、毎日文を送ってくる。
 伊靖君にもカミングアウトして開き直ったのか、なんだか直截的な表現が多くなってきて、女房さん達も赤くなっている。

 あたしは勿論、返事は書いていなかったんだけど…
 左近衛中将様からの毎日の素っ気ない『伺えません』メールに落ち込んでしまって、義光君に返事を書いてしまった。

 大したことは書いてないんだけど、浮かれたような返事が来て、あたしは後悔した。
 義光君の気持ちに応える気はさらさらないのに、思わせぶりと思われても仕方ないな。
 ごめん、義光君。
 

 結局、流鏑馬神事から10日以上、左近衛中将様には会えなかった。
 
 明日は路頭の儀、という日に
 『明日は路頭の儀に参列することになってしまいました。
 ご一緒できず、申し訳ありません』
 という手紙が来て、あたしはもう、零す涙もなかった。

 勝手にしろ。
 
 そんな気持ちでいた。
 その後だって、どうせ、ナントカの宴とやらで来ないんでしょ。
 いいよ別にもう。

 そのうち、嫌いになっちゃうからねーだ!
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