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第三章 賀茂祭・露頭の儀
8.異母姉のこと。
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「…あ、あの、姫様…お忘れあそばしましたか?」
式部さんが、恐る恐ると言った感じで訊いてきた。
なんか久しぶり、この感じ。
あたしが伊都子姫の中に入っちゃった当初、毎日毎時こんな感じだった。
やたら怒りっぽかった伊都子姫の、逆鱗に触れるのではないかと恐れられていた。
最近はずいぶんフレンドリーになったと思ったんだけどなあ…
あたしはせいぜいにっこりして訊く。
「ああ…ごめんなさいね。忘れちゃったみたい。
教えてもらえる?」
何だろう、この雰囲気。
もっと空気が冷えてしまった。
…別に、嫌味とかで言ったわけじゃないんだけど。
式部さんは、本当に渋々といった様子で口を開く。
「この袿をお仕立てになられましたのは、縫姫様と呼ばれて居られる、伊都子姫様のお腹違いの姉君ですわ」
え…腹違いの姉?
「ええーっ!異母姉ってこと?
そんなのがいたの?!」
あたしは心底驚いて言った。
女房さん達も、あたしの本気の反応を見てざわつく。
「あの…姫様…」
いや、落ち着け、あたし。
ここは一夫多妻制の時代なのよ、そんなに焦ってはダメ。
「あ、…ああ、そうなのね。
お裁縫の上手な方でいらっしゃるのね。
姉姫ならば、わたくしが直接お会いしてお礼を申し上げても宜しいわよね?」
何とか心を落ち着けて、なるべく普通に訊いてみる。
女房さん達は、本格的に慌てだす。
「いえ…あの、それはちょっと…」
「なぜ?
こんなに綺麗に袿を作ってくださったんだもの。
ご一緒に路頭の儀を観に行けたら宜しいわね」
「ひ、姫様…
あの、本気でおっしゃって居られるとお見受けいたしますので、お話し申し上げます」
女房さん達が代わる代わる話してくれた姉姫のことの要点をまとめると。
・お殿様が若いころ、まだ北の方様との結婚前に、お殿様のお世話をしていた若い女房さんに手をつけて生まれた姫であること。
・北の方様をお迎えするにあたり、姫と母親の女房さんは、女房さんの実家へ帰されたこと。
・女房さんは若くして病気に罹り、姫を残して亡くなったこと。
・女房さんの実家が右大臣家に姫を、召使いとしてでも良いので引き取って欲しいと言ってきたこと。
・姫はお裁縫が上手だったので、局を与えて、家族の衣装の染物や縫物などをお願いしていること。
「縫姫様は、右大臣家の大君様とお呼び申し上げるには、あまりにも母上様の地位が低かったので、ご自身でも好きなお裁縫をして暮らしたいとお申し出になられたのです」
「大変内気なお方で…わたくし共でもなかなか、お顔を拝見することはなくて。
身の回りのお世話をする、侍女と二人でひっそりとこのお屋敷でお暮らしなのです」
えー…そうなんだ。
お姉さんがいたと思って、嬉しかったのになあ。
でもさっきの女房さん達の反応を思い出すと、伊都子姫はかつて縫姫とトラブルを起こしたことがあるんだな。
もう…伊都子姫ったら、ホントしょうがないなあ。
あたしはため息をついた。
式部さんが、恐る恐ると言った感じで訊いてきた。
なんか久しぶり、この感じ。
あたしが伊都子姫の中に入っちゃった当初、毎日毎時こんな感じだった。
やたら怒りっぽかった伊都子姫の、逆鱗に触れるのではないかと恐れられていた。
最近はずいぶんフレンドリーになったと思ったんだけどなあ…
あたしはせいぜいにっこりして訊く。
「ああ…ごめんなさいね。忘れちゃったみたい。
教えてもらえる?」
何だろう、この雰囲気。
もっと空気が冷えてしまった。
…別に、嫌味とかで言ったわけじゃないんだけど。
式部さんは、本当に渋々といった様子で口を開く。
「この袿をお仕立てになられましたのは、縫姫様と呼ばれて居られる、伊都子姫様のお腹違いの姉君ですわ」
え…腹違いの姉?
「ええーっ!異母姉ってこと?
そんなのがいたの?!」
あたしは心底驚いて言った。
女房さん達も、あたしの本気の反応を見てざわつく。
「あの…姫様…」
いや、落ち着け、あたし。
ここは一夫多妻制の時代なのよ、そんなに焦ってはダメ。
「あ、…ああ、そうなのね。
お裁縫の上手な方でいらっしゃるのね。
姉姫ならば、わたくしが直接お会いしてお礼を申し上げても宜しいわよね?」
何とか心を落ち着けて、なるべく普通に訊いてみる。
女房さん達は、本格的に慌てだす。
「いえ…あの、それはちょっと…」
「なぜ?
こんなに綺麗に袿を作ってくださったんだもの。
ご一緒に路頭の儀を観に行けたら宜しいわね」
「ひ、姫様…
あの、本気でおっしゃって居られるとお見受けいたしますので、お話し申し上げます」
女房さん達が代わる代わる話してくれた姉姫のことの要点をまとめると。
・お殿様が若いころ、まだ北の方様との結婚前に、お殿様のお世話をしていた若い女房さんに手をつけて生まれた姫であること。
・北の方様をお迎えするにあたり、姫と母親の女房さんは、女房さんの実家へ帰されたこと。
・女房さんは若くして病気に罹り、姫を残して亡くなったこと。
・女房さんの実家が右大臣家に姫を、召使いとしてでも良いので引き取って欲しいと言ってきたこと。
・姫はお裁縫が上手だったので、局を与えて、家族の衣装の染物や縫物などをお願いしていること。
「縫姫様は、右大臣家の大君様とお呼び申し上げるには、あまりにも母上様の地位が低かったので、ご自身でも好きなお裁縫をして暮らしたいとお申し出になられたのです」
「大変内気なお方で…わたくし共でもなかなか、お顔を拝見することはなくて。
身の回りのお世話をする、侍女と二人でひっそりとこのお屋敷でお暮らしなのです」
えー…そうなんだ。
お姉さんがいたと思って、嬉しかったのになあ。
でもさっきの女房さん達の反応を思い出すと、伊都子姫はかつて縫姫とトラブルを起こしたことがあるんだな。
もう…伊都子姫ったら、ホントしょうがないなあ。
あたしはため息をついた。
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