三日夜の餅はハイティーと共に

Dry_Socket

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第三章 賀茂祭・露頭の儀

26.後朝の文もどきと東宮からの文

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 翌朝、目を覚ますと元信様はもういなかった。
 明け方まだ暗いうちに帰っていったらしい。

 あたしが起きる前に文が届いていて、なんだかいっぱい書いてあった。
 寝不足でまだ頭がボーっとしているあたしに、女房さん達がやたらそわそわして「後朝きぬぎぬのお文ですわよ、姫様!」とか「姫様!お早くお返事を!」とか言ってくる。

 後朝の文…?
 なんじゃそりゃ。
 いちいち手紙に名前がついてるの?

 あたしがアテにならないと判断したのか、内侍さん(具合治ったんだって)がサラサラと返事を書いて綺麗な扇に結び付けて、右大臣家の従者に渡した。
 何を書いたんだ?
 っていうか、あたしまだまともに手紙全部読んでないぞ…

 そこへお殿様が「伊都子!姫!」と騒ぎながらバタバタとやってきた。
 もう落ち着きないなあ…いつもドタバタしてる人だ。

 「でかした!姫!
 父は嬉しいですぞ!母も喜んでおりますぞ!
 明日の夜には三日夜の餅を!
 それから露顕を!」

 はっ?
 あたしは訳が分からず、背後の内侍さんを振り返る。

 内侍さんはにこにこして「姫様、おめでとう存じます」と手をついて頭を下げた。
 「え…何が?」
 あたしの見えない話がどんどん進んでいくようで不安になる。

 「嫌ですわ、姫様。そんなに照れられなくて良いですわ。
 でも、最初から判っていれば、わたくしどもももっときちんとご準備いたしましたのに…」
 「いえ、別に照れてないわ。
 本当に、お父様やあなた方が何を言っているのか判らないの」

 「え?…ですから…
 昨夜、左近衛中将様がお泊り遊ばして…その、姫様と一夜を共に過ごされて、今朝早くに後朝の文が届いたということで…」

 え…ええーっ!!
 あたしは慌てて元信様からの文を広げる。
 
 昨夜はとても素晴らしかった嬉しかった、貴女のお気持ちを大切にしていきます、愛しい愛しい姫というようなことが連綿と書いてあった。
 お歌もそんな感じ。
 
 どーとでも取れるよこれ!!
 何でこんなビミョーな書き方すんのよ!

 「わたくし、昨日は御酒を頂きすぎて、酔って居りましたから!
 夜中に少しお話は致しましたけど、お父様の期待なさってるようなことは…」
 あたしは急いで御帳台の外のお殿様に話しかける。

 お殿様は、目に見えてガッカリする。
 「本当に貴女は…
 自分の立場を解って居られるのか」
 くどくどとまたお説教が始まりそうになった時、バタバタと衛門さんが来た。
 
 「し、失礼いたします…お殿様、姫様!
 伊都子姫様宛に、東宮様からお文が!」

 「二の姫宛じゃないの?」
 あたしとお殿様の声が被る。
 許嫁は二の姫でしょう、おかしいでしょそれ。

 「いえ。
 …確かに伊都子姫様宛で」

 ええー…
 またもう、面倒くさい。

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