三日夜の餅はハイティーと共に

Dry_Socket

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第三章 賀茂祭・露頭の儀

27.例のもの。

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 堂々と御帳台の中に入ってきて、後ろからあたしの手元を覗き込もうとするお殿様を躱しながら、東宮からの文を開く。

 おお、さすがに美しい手蹟だわぁ…
 あたしの周りから覗き込んでいる皆が、うっとり見つめているのが判る。

 『昨日は大変楽しい時間をありがとう。
 貴女のことが気になって、夜もよく眠れません。
 昨夜、荘園へ遣いをやって、例のものを大至急取り寄せています。
 明日にはお届けに上がれるかと。
 明日、またお会いしましょう』

 例のもの?…って?
 あっ!!
 蜂蜜と胡麻油か!

 「姫様、『例のもの』とは?」
 内侍さんが訊き、そこにいる皆があたしを凝視する。

 「いえ…大したものでは…」
 皆の視線にたじろいで、ごまかす。
 「でも、わざわざ荘園まで取りに行かせて居られると」
 お殿様が言う。

 「東宮殿下の荘園といったら、まあ広大だから…
 どこまで行かせて居られるのか…
 しかも、明日にはまた、伊都子に会いにいらっしゃると」

 ふうっとため息をついて、また説教モードに入る。
 「姫、宜しいか。
 貴女の許嫁は、左近衛中将様なのだよ」

 判ってるよそんなこと。
 昨夜、たくさんキスしたし…
 あたしは赤くなってうつむく。

 「東宮殿下は、貴女の妹姫の許嫁であって、貴女が軽々しく打ち解けて良い方ではないのだ。
 そこを良く理解しておくように」

 えっ!
 あたしのせいなのっ?!

 東宮が勝手に牛車に乗り込んできて、送るとか言ってきかなくて、上がり込んでご飯食べて口説いてったのよ?!
 あたしは、な・に・も・し・て・な・い!

 「判りました。
 それでは、お父様がお断り申し上げてくださいね。
 東宮様はわたくしが何を申し上げてもお聞き入れ下さらないので。
 明日のことも、例のものも、次回の右大臣家での催しのことも。
 すべてお断りなさってください」

 「お願いしましたわよ!」
 下からめあげて、低い声で言い渡す。
 お殿様は「うっ…」とたじろぎ、後ずさる。

 「わ、判った。
 …善処します」
 はあーっと大きくため息をついて、お殿様はトボトボとあたしの部屋を出て行った。
 
 あの、にこやかに押しの強い東宮に言えるもんなら言ってみろっ!
 あたしはお殿様の背中にイーっとする。

 「あの、姫様…
 お返事はどうなさいますか」
 内侍さんが心配そうに訊いてくる。

 「ああ…
 父からお話し申し上げますと。
 それだけでいいわ」
 あたしが言うと「そ、そういうわけには…」と場がざわつく。

 「お相手は東宮様です。
 それではあまりにも失礼でございます」
 
 うぁーめんどくせえ…この上下関係。
 あたしは頭を抱える。

 仕方ないので、女房さん達と相談して(ほぼ丸投げして)なんとか返事を書いて、従者に東宮御所まで持っていかせる。
 
 ワガママ皇子の為に、皆さまご苦労さんです。
 あたしもホント、いい迷惑だよ…

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