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第四章 上達部との交流
13.東宮の脅し
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牛車が部屋の外に着いたようで、先触れの声と共に庭先が慌ただしくなる。
「姫、また後で」
と言って、元信様は几帳から出て行った。
蔀が外されて御簾が巻き上げられた部屋の入り口から、東宮がゆったりと姿を現した。
「伊都子姫、ご機嫌はいかがですか」
にこやかに、あたしのいる几帳の方へ向かって声をかける。
最悪ですが何か?
東宮の後ろから、年のころは東宮と同じような感じの眉目秀麗な若い公達が入ってくる。
几帳の隙間から覗いている女房さん達が、ほーっとため息をつく。
「突然、罷り越しまして申し訳ありません。
伊都子姫様、お久しぶりでございます」
伊都子姫に会ったことのある人か。
じゃあ、相当身分の高い人だな。
「東宮様、権中納言様、足元の悪い荒天に突然のお越しを賜りまして、誠に光栄でございます。
東宮様、お馬と白拍子の衣装をご下賜くださいましてありがとうございました」
几帳の中であたしは手をついて頭を下げる。
「そう、それそれ。
本日はそれをぜひ拝見したいと思いましてね。
ま、ご迷惑は承知で参りましたわけです」
東宮はいけしゃあしゃあと言い放ち、権中納言様は苦笑する。
「それ…?とは?」
あたしは訝しく思って訊く。
淡香花を見たいなら、厩舎に行けよ。
「白拍子の衣装をお召しになった、姫の姿をですよ。
今日、参内した後に民部大輔から、昨日の姫の乗馬のお稽古についての報告を受けましてね。
その内容がまあ、支離滅裂で」
「白拍子の恰好をなさった姫が美し過ぎて、自制が切れそうだと言うんですよ。
だったら他の者に…と私が言いかけると、それは絶対にイヤだと。
自分が何としても、姫の乗馬をお教えしたいと」
「私は、民部大輔の乗馬の腕は買っていましてね。
左近衛中将ほどではないけれど、これからまだまだ上手くなる。
素人に手ほどきを授けるのには打ってつけの人物だと思っているのだが…
その民部大輔のあまりの周章狼狽ぶりに、私も興味をそそられましてね。
たまたま私のところへ来ていた、権中納言も一緒に観に行こうと」
見世物じゃねんだよ!
あたしは膝の上でぎゅっと拳を握る。
「困ります。
わたくしはただ、乗馬してみたいと厩舎の舎人頭に申しただけで、その後のことは東宮様のご厚意でなさっていただいたことではございますが…」
「ご迷惑でしたか」
東宮は、途端に心配そうな声音になる。
「いえ…そんなことは決してございません、非常に嬉しゅうございました。
でも、それとこれとは」
「それなら良かった」
東宮はほっとしたように言う。
「別に、無理にとは申しませんよ」
と言って手を伸ばすと、几帳をまた退かしてしまう。
元信様が東宮の後ろで、思わず腰を浮かすのが見えた。
「申しませんが…左近衛中将にもぜひ見せてあげたいのですよ、貴女の白拍子の姿を。
そのために左近衛中将の、主上から命じられた膨大な仕事を、今日はすべて免除にしていただき、わざわざ先に貴女の許へ向かわせたのです」
き、ったねー!
あたしは扇子で顔を隠す。
歯ぎしりしてるのを見られそうだったから。
「姫、また後で」
と言って、元信様は几帳から出て行った。
蔀が外されて御簾が巻き上げられた部屋の入り口から、東宮がゆったりと姿を現した。
「伊都子姫、ご機嫌はいかがですか」
にこやかに、あたしのいる几帳の方へ向かって声をかける。
最悪ですが何か?
東宮の後ろから、年のころは東宮と同じような感じの眉目秀麗な若い公達が入ってくる。
几帳の隙間から覗いている女房さん達が、ほーっとため息をつく。
「突然、罷り越しまして申し訳ありません。
伊都子姫様、お久しぶりでございます」
伊都子姫に会ったことのある人か。
じゃあ、相当身分の高い人だな。
「東宮様、権中納言様、足元の悪い荒天に突然のお越しを賜りまして、誠に光栄でございます。
東宮様、お馬と白拍子の衣装をご下賜くださいましてありがとうございました」
几帳の中であたしは手をついて頭を下げる。
「そう、それそれ。
本日はそれをぜひ拝見したいと思いましてね。
ま、ご迷惑は承知で参りましたわけです」
東宮はいけしゃあしゃあと言い放ち、権中納言様は苦笑する。
「それ…?とは?」
あたしは訝しく思って訊く。
淡香花を見たいなら、厩舎に行けよ。
「白拍子の衣装をお召しになった、姫の姿をですよ。
今日、参内した後に民部大輔から、昨日の姫の乗馬のお稽古についての報告を受けましてね。
その内容がまあ、支離滅裂で」
「白拍子の恰好をなさった姫が美し過ぎて、自制が切れそうだと言うんですよ。
だったら他の者に…と私が言いかけると、それは絶対にイヤだと。
自分が何としても、姫の乗馬をお教えしたいと」
「私は、民部大輔の乗馬の腕は買っていましてね。
左近衛中将ほどではないけれど、これからまだまだ上手くなる。
素人に手ほどきを授けるのには打ってつけの人物だと思っているのだが…
その民部大輔のあまりの周章狼狽ぶりに、私も興味をそそられましてね。
たまたま私のところへ来ていた、権中納言も一緒に観に行こうと」
見世物じゃねんだよ!
あたしは膝の上でぎゅっと拳を握る。
「困ります。
わたくしはただ、乗馬してみたいと厩舎の舎人頭に申しただけで、その後のことは東宮様のご厚意でなさっていただいたことではございますが…」
「ご迷惑でしたか」
東宮は、途端に心配そうな声音になる。
「いえ…そんなことは決してございません、非常に嬉しゅうございました。
でも、それとこれとは」
「それなら良かった」
東宮はほっとしたように言う。
「別に、無理にとは申しませんよ」
と言って手を伸ばすと、几帳をまた退かしてしまう。
元信様が東宮の後ろで、思わず腰を浮かすのが見えた。
「申しませんが…左近衛中将にもぜひ見せてあげたいのですよ、貴女の白拍子の姿を。
そのために左近衛中将の、主上から命じられた膨大な仕事を、今日はすべて免除にしていただき、わざわざ先に貴女の許へ向かわせたのです」
き、ったねー!
あたしは扇子で顔を隠す。
歯ぎしりしてるのを見られそうだったから。
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