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第四章 上達部との交流
14.脅しに屈する…
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「姫、お願いしますよ。
権中納言を連れてきたのにはね、理由があるのですよ」
東宮はたたみかける。
「この人はご存知の通り、前の太政大臣の四男であられて、一時大学寮で算道を学んで居られたが、御長男と御次男が相次いで夭折なさったので、戻ってこられたという異色の経歴をお持ちの方なのですが」
へえ…算道かあ。
理系のあたしとしてはちょっと興味あるかも。
「姫が、私には宇宙語にしか聞こえない言葉を話されるという話をしたら、もしかしたら数学に関することかもしれないと言い出してね。
明後日の社交会にも顔を出す予定だけど、きっとゆっくり話はできないだろうからと今日連れてきたのですよ」
もう!いちいち恩着せがましいんだよ!
あたしは歯ぎしりする。
「この人の女人嫌いは、宮中でも有名でね。
この端正な顔立ちで、女人に大人気なんだが…」
「それは違いますよ、殿下。
嫌いなのではなくて、苦手なのです。
女人の感情の移り変わりが、どうしても理解できなくて」
あー…理系の人にはありがちだね。
あたしは、ため息をついた。
結局、東宮に逆らうことはできないのね…
でも、仕返しの一矢は準備してある。
ふっふっふ。
「…判りました。
少々、お待ちくださいませ」
あたしは立ち上がって、女房さん達を呼んだ。
御帳台に入って既に準備してくれていた白拍子の衣装に着替える。
同時に化粧も念入りに直される。
義光君め…東宮に要らんこと言いやがって。
覚えてろよ。
一生、恨んでやる。
長い髪も白拍子ふうに後ろで結ばれる。
あの、遊んでません?
女房さん達…
東宮たちにはお酒までのおしのぎに、とおやつが供されたみたい。
今日は、あんみつなのっ!
蜜が糖蜜じゃなくて、蜂蜜なんだけど。
あたしも食べたい!!
式部さんが「失礼いたします」と男どもに声をかけて、御簾を巻き上げる。
あたしを見た、三人の動きが停まる。
この反応、義光君と同じだ。
あたしは咄嗟に身構える。
「左近衛中将、姫をここにお連れして…」
あたしを見つめたまま、東宮が譫言のように呟く。
元信様もあたしを凝視したまま立ち上がって、あたしの手をとり御帳台から降ろしてくれる。
「権中納言、烏帽子烏帽子」
と東宮は権中納言様を急かして、烏帽子を外させる。
その烏帽子を元信様に渡して、元信様はあたしに被せる。
おおーっ…と女房さん達を含む、部屋の皆がため息をつく。
大袈裟なんだよ…みんなして人で遊んで。
「これで舞を舞ってくだされば、天女のような白拍子ですね…」
東宮が呟いた。
舞えませんっ!
あたしは烏帽子を外して、元信様に渡す。
その時「失礼いたします、二の姫様のお越しでございます」と訪いがあり、二の姫が「失礼いたします…」と可愛い声で言って、入ってきた。
明るい山吹色に袖から紅色の袿をのぞかせた、若さ溢れる可愛らしい十二単で、二の姫が恥ずかしそうに入ってきた。
あ、ちゃんと歩けてる!
顔色もずいぶん良くなった!
権中納言を連れてきたのにはね、理由があるのですよ」
東宮はたたみかける。
「この人はご存知の通り、前の太政大臣の四男であられて、一時大学寮で算道を学んで居られたが、御長男と御次男が相次いで夭折なさったので、戻ってこられたという異色の経歴をお持ちの方なのですが」
へえ…算道かあ。
理系のあたしとしてはちょっと興味あるかも。
「姫が、私には宇宙語にしか聞こえない言葉を話されるという話をしたら、もしかしたら数学に関することかもしれないと言い出してね。
明後日の社交会にも顔を出す予定だけど、きっとゆっくり話はできないだろうからと今日連れてきたのですよ」
もう!いちいち恩着せがましいんだよ!
あたしは歯ぎしりする。
「この人の女人嫌いは、宮中でも有名でね。
この端正な顔立ちで、女人に大人気なんだが…」
「それは違いますよ、殿下。
嫌いなのではなくて、苦手なのです。
女人の感情の移り変わりが、どうしても理解できなくて」
あー…理系の人にはありがちだね。
あたしは、ため息をついた。
結局、東宮に逆らうことはできないのね…
でも、仕返しの一矢は準備してある。
ふっふっふ。
「…判りました。
少々、お待ちくださいませ」
あたしは立ち上がって、女房さん達を呼んだ。
御帳台に入って既に準備してくれていた白拍子の衣装に着替える。
同時に化粧も念入りに直される。
義光君め…東宮に要らんこと言いやがって。
覚えてろよ。
一生、恨んでやる。
長い髪も白拍子ふうに後ろで結ばれる。
あの、遊んでません?
女房さん達…
東宮たちにはお酒までのおしのぎに、とおやつが供されたみたい。
今日は、あんみつなのっ!
蜜が糖蜜じゃなくて、蜂蜜なんだけど。
あたしも食べたい!!
式部さんが「失礼いたします」と男どもに声をかけて、御簾を巻き上げる。
あたしを見た、三人の動きが停まる。
この反応、義光君と同じだ。
あたしは咄嗟に身構える。
「左近衛中将、姫をここにお連れして…」
あたしを見つめたまま、東宮が譫言のように呟く。
元信様もあたしを凝視したまま立ち上がって、あたしの手をとり御帳台から降ろしてくれる。
「権中納言、烏帽子烏帽子」
と東宮は権中納言様を急かして、烏帽子を外させる。
その烏帽子を元信様に渡して、元信様はあたしに被せる。
おおーっ…と女房さん達を含む、部屋の皆がため息をつく。
大袈裟なんだよ…みんなして人で遊んで。
「これで舞を舞ってくだされば、天女のような白拍子ですね…」
東宮が呟いた。
舞えませんっ!
あたしは烏帽子を外して、元信様に渡す。
その時「失礼いたします、二の姫様のお越しでございます」と訪いがあり、二の姫が「失礼いたします…」と可愛い声で言って、入ってきた。
明るい山吹色に袖から紅色の袿をのぞかせた、若さ溢れる可愛らしい十二単で、二の姫が恥ずかしそうに入ってきた。
あ、ちゃんと歩けてる!
顔色もずいぶん良くなった!
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