三日夜の餅はハイティーと共に

Dry_Socket

文字の大きさ
105 / 307
第四章 上達部との交流

22.第一回幾望会・2

しおりを挟む
 夕方、先触れの声と共に、右大臣家に続々と牛車が到着する。
 貴公子たちが少し緊張の面持ちで、従者に案内されながら入ってくる。

 参加者たちは互いに顔見知りのようで、すぐに打ち解けた雰囲気になる。
 元信様も親しげに言葉を交わしている。

 こういうふうに、あたしの知らない元信様の一面を見られるのがとても嬉しい。
 宮中ではこんな感じなのかな。

 「すごいですよ、月子姫。
 何事かと右大臣家の前に、民が集まってきています」

 笑いながら、最後に東宮が入ってくる。
 今日は束帯で、その姿は、…やっぱり貫禄があって品があって、他の人にはないオーラがあった。

 今日、集まったのは、元信様を入れて総勢六人。
 あたしの身分の高さから考えてあまりにも地位の低い人は呼べないっていうのと、あまり人数を増やすと稀少価値がなくなるとの理由から。だそうだ。

 さっき、元信様が、東宮の文を見ながら呟いていた。
 「宮中の勢力図にも配慮なさって居られるようだ。参加者に偏りがない。
 …さすがに、東宮殿下であらせられるな」

 バカじゃないってことね。
 ポップでライトな日頃の言動は、カモフラージュなのかもね。

 さすがに今日は、あたしの周りに立てまわした几帳をどかしたりすることなく、ゆったりと畳の上に座る。

 目の前のお膳から取った酒杯に、式部さんがお酒を注ぐ。
 それを合図に他の人たちの盃にもお酒が注がれた。

 「今日は『幾望会』に集まってくれてありがとう。
 この会は、右大臣家の大君おおいぎみ、伊都子姫を中心とした社交会です。
 と言っても、中宮や女御の開かれる会のように堅苦しいものではありません」

 ああ、要するにこれは、あたし主催の所謂「サロン」なんだ。
 あたしは何となく納得した。

 別にあたしは主催したいとか思ってないけどね!
 東宮があたしんちで遊びたいだけなんだけどね!

 「皆で、伊都子姫の自由闊達な創意工夫あふれる、楽しいこと美味しいものを体験しましょう、というのが趣旨です。
 ですから皆さんも構えず、稀代の愉悦発明家、伊都子姫と楽しく同じ時間を過ごしましょう」
 
 なんだそりゃ。
 わけわからん。

 「では主催の伊都子姫から一言いただきます」

 えっ?
 あたし?

 やだーっ!無理無理無理!
 慌てるあたしに、几帳を少し移動して東宮が顔をのぞかせる。
 あたしが思いきり首を横に振っているのに「一言でいいですよ」と笑ってまた几帳を閉じた。

 仕方ない。
 あたしは口を開く。
 
 「今日はお集まりくださいましてありがとうございます。
 わたくしも、皆さまと共に楽しませていただきたいと存じております。
 行き届かない点は、どうぞお許しくださいね」

 伊都子姫と幾望会に乾杯、と東宮が杯を掲げる。
 乾杯、とあたしたちも唱和する。

 そこへ、料理長がお膳を持った女房さん達を従えて入ってきた。

 膝をついて平伏し口上を述べる。
 「本日は、第一回の幾望会の開催、おめでとう存じ奉ります。
 皆さまからお預かりいたしました、枝豆料理をお持ちいたしました」

 お、さっそく、皆さんのレシピが見られるのね!
 って、元信様も考えてきたの??

しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない

二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。 ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。 当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。 だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。 ――君の××××、触らせてもらえないだろうか?

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。 「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

処理中です...