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第五章 四人きょうだい
1.東宮の心の内
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「東宮様も、今日はお疲れでございましょう。
次回のことはまた、ゆっくりお文でも」
あたしがじりじりと距離を取りながら言いかけると、東宮はあたしの手をぱっとつかんで引き寄せた。
「貴女の文は、いつも全然、熱がない。
とても冷めていて、私は自分との思いの温度差に、淋しさだけが残るのだ」
「私が今までに出会った女人は、貴女のように情の強い人はいなかった。
私の立場や家族の立場を慮る人も中にはいただろうが、大抵は私が何度か声をかければ、容易く手に入れることができた」
あー…あたしは、この時代、この世界の理からは外れてる存在だからね。
お殿様はもう既に失脚しちゃってるし。
あたしはにこっと笑って、東宮の手を外そうとする。
「東宮様は大変魅力的な方だと存じておりますわ。
右大臣家の伊都子という、変人で名が通った者を主催者にして今日のような突飛な会を見事に成功させられるのですから…
政治にこの手腕を生かされたら、剛腕の政治家におなり遊ばされるでしょうね」
東宮はぐっと力を入れて、あたしの手を離さない。
「私はね、政治になんか興味はないのですよ。
東宮という立場だって、迷惑なだけなんだ」
「兄上という、若くて立派な君主がいればこの国は安泰だ。
早いところ皇子を設けて、私を自由にしてほしいと願っているのです。
主上派、東宮派などと、大臣たちの政治の道具にされるのはまっぴらだ」
ああ、そうなんだ。
お兄様である主上を尊敬していて、老獪な大臣たちに利用されるのを嫌って、こんな破天荒な事ばかりしてるんだね。
あたしは手をつかまれたまま顔を上げて東宮を見た。
東宮は、いつもの悪戯っぽい表情とは全然違う、どこか泣きそうな真剣な表情であたしを見つめている。
「東宮様はきっと、わたくしをお手に入れられたら、その時点で飽きてしまわれますわ。
わたくしはそうなって、泣き暮らす毎日にはしたくないんですの」
あたしは強いて笑い、手を強く振りほどく。
「主上との婚姻が破談になったとき、私は何故、あなたを欲しなかったのか。
左近衛中将などに取られてしまうとは…
いや、違う」
東宮は考え込むように、うつむきがちに口を開く。
「私の知る限り、右大臣家の伊都子姫という女人は、それは面白みのない高飛車で居丈高な、鼻持ちならない不遜な人のはずだ。
私や、殿上人は内心密かに、主上にご同情申し上げていた」
「左近衛中将が主上に、自分がもらい受けたいと願い出たときは、皆が驚愕したのだ。
なんと物好きな奴がいたものだと…」
ひでぇな。
あたしは心の中で呟く。
そこまで言いますかね。
殿上人って口さがないのね。
「情の強いところは同じだが、以前は荒縄のように人を傷つける強さだったのが、今は弱竹のようにしなやかに撓ってたおやかに寄せ付けない。
そして姫君とは思えない行動力、発想力、専門家をも凌ぐ知識の深さ広さ、慎みの無さ。
これは…どういうことだ」
さらっと最後にひどいディスりかたをしたな。
っていうか、この展開、ヤバくない?
東宮は顔を上げ、あたしを見た。
「あなたは…誰だ?」
次回のことはまた、ゆっくりお文でも」
あたしがじりじりと距離を取りながら言いかけると、東宮はあたしの手をぱっとつかんで引き寄せた。
「貴女の文は、いつも全然、熱がない。
とても冷めていて、私は自分との思いの温度差に、淋しさだけが残るのだ」
「私が今までに出会った女人は、貴女のように情の強い人はいなかった。
私の立場や家族の立場を慮る人も中にはいただろうが、大抵は私が何度か声をかければ、容易く手に入れることができた」
あー…あたしは、この時代、この世界の理からは外れてる存在だからね。
お殿様はもう既に失脚しちゃってるし。
あたしはにこっと笑って、東宮の手を外そうとする。
「東宮様は大変魅力的な方だと存じておりますわ。
右大臣家の伊都子という、変人で名が通った者を主催者にして今日のような突飛な会を見事に成功させられるのですから…
政治にこの手腕を生かされたら、剛腕の政治家におなり遊ばされるでしょうね」
東宮はぐっと力を入れて、あたしの手を離さない。
「私はね、政治になんか興味はないのですよ。
東宮という立場だって、迷惑なだけなんだ」
「兄上という、若くて立派な君主がいればこの国は安泰だ。
早いところ皇子を設けて、私を自由にしてほしいと願っているのです。
主上派、東宮派などと、大臣たちの政治の道具にされるのはまっぴらだ」
ああ、そうなんだ。
お兄様である主上を尊敬していて、老獪な大臣たちに利用されるのを嫌って、こんな破天荒な事ばかりしてるんだね。
あたしは手をつかまれたまま顔を上げて東宮を見た。
東宮は、いつもの悪戯っぽい表情とは全然違う、どこか泣きそうな真剣な表情であたしを見つめている。
「東宮様はきっと、わたくしをお手に入れられたら、その時点で飽きてしまわれますわ。
わたくしはそうなって、泣き暮らす毎日にはしたくないんですの」
あたしは強いて笑い、手を強く振りほどく。
「主上との婚姻が破談になったとき、私は何故、あなたを欲しなかったのか。
左近衛中将などに取られてしまうとは…
いや、違う」
東宮は考え込むように、うつむきがちに口を開く。
「私の知る限り、右大臣家の伊都子姫という女人は、それは面白みのない高飛車で居丈高な、鼻持ちならない不遜な人のはずだ。
私や、殿上人は内心密かに、主上にご同情申し上げていた」
「左近衛中将が主上に、自分がもらい受けたいと願い出たときは、皆が驚愕したのだ。
なんと物好きな奴がいたものだと…」
ひでぇな。
あたしは心の中で呟く。
そこまで言いますかね。
殿上人って口さがないのね。
「情の強いところは同じだが、以前は荒縄のように人を傷つける強さだったのが、今は弱竹のようにしなやかに撓ってたおやかに寄せ付けない。
そして姫君とは思えない行動力、発想力、専門家をも凌ぐ知識の深さ広さ、慎みの無さ。
これは…どういうことだ」
さらっと最後にひどいディスりかたをしたな。
っていうか、この展開、ヤバくない?
東宮は顔を上げ、あたしを見た。
「あなたは…誰だ?」
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